宇都宮徹壱ウェブマガジン

【無料記事】韓国での旅を終えるにあたって 旅するカメラ(2017年5月28日@天安〜仁川〜東京)

 大会9日目。8日間におよぶU-20ワールドカップ取材を終え、今日は晴れて帰国する日である。韓国滞在中、毎日更新してきたコンテンツも、今回をもって一区切り。「家に帰るまでが海外取材」ということで、旅の終わりの模様を書き記すことにしたい。

 9時30分にホテルをチェックアウトして、タクシーで牙山(アサン)駅へ。そこから10時13分発のKTX(韓国高速鉄道)に乗車する。今回、初めてKTXに乗るのでちょっと楽しみにしていたのだが、新幹線に比べて車内はかなり狭く、しかも激混みということで道中は非常に落ち着かなかった。向かい合う座席の向こう側には、若いカップルが座っていて、朝っぱらからベタベタしていたので目のやり場に困る。客の多くはソウルで下車して、ようやく落ち着きを取り戻すことができた。

 昼前に仁川国際空港に到着。これから帰国する同業者やサッカー仲間数名と軽く挨拶する。私の乗車するアシアナ空港は、定刻よりも出発が1時間遅れるようだ。3時間ほど時間を潰すことになるが、電源とWi-Fiさえ確保できれば溜まった仕事を粛々とこなすだけである。幸い、こちらの空港は仕事をするには申し分ない環境。とりわけWi-Fiに関しては、韓国は日本よりもかなり普及しているというのが、今回の取材で常に実感していたことだ。13時30分に昼食を摂り、その後はお土産を物色。土産屋のスタッフは、皆さん日本語が実に堪能であった。

 

 仁川発成田行きの便は、さらに遅れて16時50分に出発して19時に到着。 機内の中ではずっと眠っていたので、まったく余韻のないままでの帰国であった。留守中、日本では「テロ等準備罪」だの「加計学園」だの、いろいろ重大なニュースが続いたようだが、ネット情報だけではどうにも実感がつかめずにいた。時差ボケはないが、情報ボケを調整するには、少しばかり時間がかかりそうだ。成田エクスプレスと在来線を乗り継いで、22時に懐かしのわが家に帰着。ようやく今回の旅が終わった。

 最後に、今回の旅について簡単に総括しておきたい。ビジネス的に考えるなら、今回の取材は完全な「赤」である。経費は全部持ち出し。スポナビに日本戦の写真を送った以外、特にこれといった仕事もなく、大会期間中にWMの会員が増えたわけでもない。では、行かないほうがよかったのかというと、決してそんなことはなかったと自信をもって言える。育成年代の国際大会を取材するのも、FIFAの主催大会にフォトグラファーとして参戦するのも、いずれも自分にとっては初めての挑戦であり、それらは得難い経験となったからだ。

 加えてもうひとつ。このところ国内取材に軸足を置いていた私にとり、今回のU-20ワールドカップは、取材現場の「国際感覚」を取り戻すという意味でも意義のあるものとなった。海外に行くと、コミュニケーションが容易でないし、カネがかかるわりには仕事にならないし、準備と移動とリスク管理も何かと面倒だ。国内取材にどっぷり浸かっていると、いつの間にか海外取材に対して敬遠気味になってしまう傾向が私にはある。その意味で今回の韓国取材は格好のリハビリとなった。来月からのイランでのワールドカップ予選、そしてロシアでのコンフェデレーションズカップにも、いい状態で臨むことができそうだ。

 なおWMでは今週、今回のU-20ワールドカップの総括企画をお届けする予定。こちらのほうも、どうか楽しみにお待ちいただきたい。私のほうも、明日からさっそく通常業務に戻る予定だ。

<この稿、了>

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