宇都宮徹壱ウェブマガジン

ワールドカップ・ロシア大会の成功は見えたか? 中田徹✕宇都宮徹壱コンフェデ杯対談<1/2>

 FIFAコンフェデレーションズカップ・ロシア2017が閉幕して、早いもので2週間が過ぎた。帰国後はすっかり日々忙殺されているが、あらためてこの大会を総括しておきたい。ということで、現地で取材していた数少ない日本のフリーランスのひとりである、中田徹さんとの対談をお送りする。

 オランダ在住の中田さんは、スポーツナビを中心に現地から感度の高い情報を発信し続けている、尊敬する同業者のひとりだ。そんな彼との数少ない共通点のひとつに、03年のフランス大会以降「コンフェデ杯取材皆勤賞」というものがある。日本が出場しないと、なかなか注目されにくいこの大会。だが、5大会連続で取材してみれば、いろいろと見えてくるものもある。

 ワールドカップを1年後に控えた開催国・ロシア。果たして、今回のコンフェデ杯取材から、何が見えたのだろうか。決勝戦を翌日に控えたサンクトペテルブルクで、中田さんと語り会った内容をここに公開することにしたい。(収録:2017年7月1日@サンクトペテルブルク)

<目次>

*ドイツとポルトガルの差はワールドカップ予選で出る
*オーストラリアの大健闘をどう見るか?
*ドイツ大会の流れを組む(?)ロシアのスタジアム
*英語が通じないロシアで困ったこと
*キリル文字は覚えておいて損はない
*ロシアのコンフェデは快適だったけれど

■ドイツとポルトガルの差はワールドカップ予選で出る

――コンフェデの決勝がドイツとチリに決まりました。いわゆる「Bチーム」で今大会に臨んだドイツと、最初から優勝する気満々だったチリという、非常に対照的な顔合わせとなりましたが、この2チームについての中田さんの見立てからお聞きしたいと思います。

中田 まずドイツ。「Bチーム」と言っても、たぶんレーヴ監督は相当(選手を)信頼していると思うんですよね。なぜかと言うと、このチームはコンフェデだけに照準を合わせたわけじゃなくて、まったく同じメンバーでワールドカップ予選を戦っていますから。直前にデメという選手が負傷でコンフェデを辞退していますが、6月の予選から基本的にずっとこのメンバーだったんですよ(参照)

――もうひとつの驚きは3バックの導入でした。6月6日のデンマークとの親善試合から、このシステムが採用されたとか(参照)

中田 そうですね。しかもこのデンマーク戦で、6人の選手が代表デビューしているんです。試合は最初デンマークに先制されて、88分にシュティンドルのアシストからキミッヒが決めるという展開。ただテストをするだけでなく、ちゃんと引き分けに持ち込めたということが大事なんですよ。

――日本もシリアとの親善試合と、ワールドカップ予選のイラク戦でセンターラインを入れ替える策をとって、結果は微妙なものとなってしまいました(イラクに1−1)。レーヴ監督も、かなりリスクを感じながらメンバーを入れ替えたと思うのですが。

中田 ぜんぜんリスクをとってないですよ。そうでなく、マネジメントが上手いんです。ドイツとポルトガルの差は、8月末に再開されるワールドカップ予選で出てくると思いますね。

――つまり、ヨーロッパからコンフェデに出場していた2チームが、このあとコンディションの差が出てくると。

中田 そもそもポルトガルって、去年の8月の予選初戦でスイスに負けているんですよね。ユーロやワールドカップで優勝して、その直後の予選って、どの国も非常に難しいんですよ。前回のワールドカップで3位だったオランダが、フランスでのユーロに出られなかったのも初戦でつまずいたのが大きかった。その点ドイツは、主力をしっかり休ませるというチームマネジメントをやっていたから、今回の結果は完ぺきじゃないですかね。

――こうしたチームマネジメントが可能なのも、選手層の厚さのなせるわざですよね。では、対するチリについてはどうでしょう?

(残り 3319文字/全文: 4896文字)

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