『We are Diamonds』を歌っていいのはどんな時? 相良純真(URAWA BOYS創設者)✕ロック総統<3/4>
先週に引き続き、今週もURAWA BOYS創設者の相良純真さんとロック総統による特別対談をお送りする。ちょうどこの原稿を仕上げたタイミングで、浦和レッズのミハイロ・ペトロヴィッチ監督解任のニュースが飛び込んできた。5年半に及ぶ在任期間は歴代最長であり、タイトルは昨年のルヴァンカップのみであったが、過去5シーズンは常に上位争いを続けていた(最も低い順位は13年の6位)。間違いなく、ひとつの時代が終わったと言えよう。
今季の浦和は5月末で3位につけていたものの、夏場に入ってから失点が目立つようになり、サポーターの間からは批判の声が絶えることがなかった。川崎フロンターレ戦後のバス囲み事件も、アルビレックス新潟戦後の『We are Diamonds』を歌う・歌わない事件も、そうした指揮官への批判のさなかに起こった。では、今回のクラブが下した断について、多くのファンが歓迎しているのかというと、SNSでの反応はむしろミシャ(ペトロヴィッチ前監督の愛称)への惜別と感謝のメッセージが多いことに気付かされた。
先日、元浦和監督のゲルト・エンゲルスさんにインタビューする機会があったのだが、「レッズの監督は誰がやっても難しい」と実感を込めて語っていたのが印象的であった。「とにかく結果が求められるし、ただ勝てばいいというわけでもない」とも。日本で最も監督への要求が高く、常にプレッシャーを与え続ける浦和のサポーターは、同じサッカーファンでもなかなか理解しづらい部分があるのは事実だ。
「サポーターは誰のために、何のために応援するのか」──今週もこのシンプルなようで深遠な命題について、相良さんと総統によるサポーター談義の中から、そのヒントを探っていくことにしたい。とりわけ浦和のファンの皆さんには、ミシャの時代が終焉した今だからこそ、最後まで読んでいただければ幸いである。(収録日:2017年7月19日@浦和)
<目次>
*浦和が嫌われることはなんとも思ってない
*サッカーは「白か黒か」だけで語れるものじゃない
*『We are Diamonds』は完勝の歌である
*今季は久々にアジアを獲れるチャンス
*上西議員のツイートは「昔だったらスルーできた」?
*SNSをもっとうまく使えるサポーターが増えてほしい
■浦和が嫌われることはなんとも思ってない
――先ほど相良さんは「選手のためにスタジアムにいい雰囲気を作る」とおっしゃっていました。その発想って、当たり前のことのようで実は非常に難しいことのように感じます。そもそもサポーターが、選手の心理状態を汲み取りながら応援に変化をもたせることって、可能なんでしょうか?
相良 選手が気持ちよくプレーしているかどうかというのは、たとえば小野伸二がいたころは彼の表情を見ていればわかりましたね。楽しそうにプレーしているのか、辛そうにボールを追いかけているのか、すぐにわかる。永井(雄一郎)なんかも、失敗すると天を見上げて次のプレーに切り替えるまでの立ち直りが遅いけど、ノッている時はボールを取られてもすぐに取り戻そうと追いかける。今だったら柏木陽介ですかね。そういったところを見ながら、僕はコールを考えるようにしていました。
――総統も選手を見ながら応援を考えます?
総統 僕らはJFLなので、スタンドの声が全部に届いちゃうんですよね。みんなの声で選手を後押しするようなJリーグっぽいことはできないです。良くも悪くも、僕らの声がすぐに選手に届いてしまうので、できれば選手たちに元気になってもらうような雰囲気作りは心掛けていますね。とにかくウチの場合、いわゆる「ゆとり世代」が増えてきたので、あまり厳しいことをいうと折れちゃうんですよ(苦笑)。だから「ああ、またこんなミスをして!」と思いながらも「ナイスガッツ!」って言ってやらないと(苦笑)。
相良 それはウチの選手もそうです。ヨイショしてあげないとダメな子たちも増えてきているんですが、ウチのサポーターはけっこう選手を叩いてきていて、「それで立ち上がれないならお前はいらない」って感じになってしまっている。
総統 その関係はよくないよね。僕も最近、そのへんは意識して、ゆとり世代は褒めたほうがいいプレーをするんですよ。チャンスで空振りしても「ナイスガッツ!」だし、試合に負けてあいさつに来たら「お前、もうちょっとボール追いかけないと」って、ニコニコしながら言うようにしています。あとはリザーブの選手も腐らないように気を配っていますね。「どうせ今日も使われないんだろ」という顔をしながらアップしている選手がいると、監督に聞こえるように「●●は調子いいぞ、いい感じでアップしているぞ!」って言って煽っています。監督にはよく聞こえているらしく、笑いをかみ殺して交代カードを出しに行っていますが(笑)。
――選手を褒めて伸ばすという発想は新鮮ですね。
総統 雰囲気をよくすることがいいと思っているし、ブーイングでチームの雰囲気がよくなる試合って、僕自身のサポーターキャリアではほとんど経験がないんですよね。それにブーイングなんて、鹿島をサポートしていた時に百年分やっていますから、もう本当にお腹いっぱい(笑)。
――本当ですか(笑)?
総統 話を思い切り戻すと、浦和サポが今回バスを囲んだのが誤解だったとして、それでも「やっぱり浦和か!」みたいに言われてしまう風潮ってあるじゃないですか。それは母集団が大きいということもあるかもしれないけど、土地柄みたいなものってあるんじゃないですかね? 浦和の駅前って、車高を落とした中古のクラウンとか普通に走っているじゃないですか。さっきも見つけて「ああ、そういう土地柄なのかな」って、僕なんかは思ってしまうんですが。
相良 うーん、どうなんですかね。いちおう文教都市なんですが(苦笑)。
総統 じゃあ、あれは大宮の車だったかもしれないな(笑)。
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