宇都宮徹壱ウェブマガジン

なぜハリルホジッチ監督はポゼッションの話をしたのか? 異例の会見で感じた指揮官の「ある思い」 

「メンバー発表会見を始める前に、ハリルホジッチ監督から皆さまにお話がありますので、よろしくお願いします」

 10月のキリンチャレンジカップ(6日ニュージーランド戦@豊田、10日ハイチ戦@横国)の日本代表メンバー発表会見。司会を務めるJFA広報スタッフの多田寛さんから、冒頭にこんなアナウンスがあった。代表のメンバー発表会見には、これまで何度も出席しているが、その前に監督から「お話があります」というのは初めてのことだ。会見場には、何やらプレゼン用の模造紙がスタンバイしてある。いったい、何が始まるのだろう?

 ハリルホジッチ監督が語り始めたのは、日本のサッカー界がいかに「ポゼッションを重視しているか」という話であった。いわく「日本のサッカーの教育は『ポゼッション』ベースに作られていると感じた。もちろん、点を取るためにはボールが必要で、ボールを持つことが『ポゼッション』。とはいえ、相手よりボールを持ったからといって勝てるわけではない」──。そこから、前夜に行われた欧州CLのPSG(パリ・サンジェルマン)対バイエルン・ミュンヘンの話題に移る。プレゼン用の模造紙に書かれた数値を指し示しながら、指揮官はこのように解説する。

「ポゼッションでは、バイエルンが支配していたといえる(PSGが37.6%、バイエルンが62.4%)。パスは368本と568本、シュートは12本と16本でどちらもバイエルンが多い。コーナーキックはPSGが1本に対し、バイエルンが18本だ。クロスは36対4。だがデュエルの成功率では、PSGが上回った(PSGが57.4%、バイエルンが42.6%。そしてスコアは3−0だった」(参照)

 ちなみにUEFAの公式を見ると、スタティスティックの数値はハリルホジッチ監督が示したものと微妙に異なっている。誤差が生じた理由は不明だが、言わんとしていることは明らかだ。要は「ポゼッションばかりにこだわって勝てなければ意味がない」。話そのものは、これまでもたびたび指揮官が主張してきたことであるし、内容も特に目新しいものはない。

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