「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

【無料記事】【レポート】『栃木南北決戦』の勝者は栃木ウーヴァ。それぞれに実りある一戦に。

開幕を一週間後に控えたウーヴァが勝利

 

『栃木南北決戦』と銘打たれて2年連続開催となった2016プレシーズンマッチ、栃木ウーヴァFC対ヴェルフェたかはら那須の一戦が2月28日、栃木市総合運動公園陸上競技場で行われた。結果は、日本サッカーリーグ(JFL)の栃木ウーヴァが関東サッカーリーグ(KSL)1部のヴェルフェに3-2で勝利、「格上」の面目を保った。

 

キックオフから間もなく、決定的チャンスを演出したのはヴェルフェだったが、ボールはバーに弾かれ得点ならず。その後は、ウーヴァが流れを引き寄せ、オウンゴールとMF内山俊彦のオーバーヘッドシュートが決まり、2-0として前半を折り返した。

後半も、栃木ウーヴァが立ち上がりから攻勢を見せ、新加入のMF松田悠佑が早々にシュートを決めて3-0と大きくリード。このまま、栃木ウーヴァが格上らしい試合運びを見せるかに思われた。

 

しかし、好機をものにできず苦しい試合展開を強いられていたヴェルフェがその後反攻、大きなリードを許しながらも果敢なプレーを続けたことが実を結ぶ。新戦力のFW神村秀斗が倒されて得たPKを自身で決めて1点返すと、さらにFW森本恭介が、栃木ウーヴァ守備陣の裏に抜け出してパスを受け、そのままシュートを突き刺して1点差に。その後のPKを決められず同点にすることはできなかったが、「疲れがピークに来ている状態」(堀田利明監督)ながらも、最後までゴールを狙う戦いぶりを見せた。

それぞれが手応えと課題を手にした実りある『栃木南北決戦』

 

開幕を1週後に控えた栃木ウーヴァ、開幕まで約1カ月のヴェルフェ。両チームにフィジカルコンディションの違いなどはうかがえたものの、ともに実戦の中で課題を確認できたことは、双方にとって大きな意義のある一戦となった。

 

栃木ウーヴァとしては、3点リードしながら格下の相手に1点差まで追い上げられた点は、大きな反省点。ピッチわきで試合を見ていた岩原克彦代表は「無失点で終わらなければいけない試合展開なのにスキを見せてしまったことで追い上げを許した。リーグ戦では、試合の中での気持ちのコントロールがより重要になるので、しっかり修正してほしい」と指摘。当然、現場もそれを感じており、堺陽二監督は「心のスキが出てしまうと難しいゲームになるという教訓を味わえた。開幕戦を一つの通過点としてとらえ、リーグ戦を消化しながら強固なチームとし、戦う集団にしていきたい」と話し、チーム作りの糧を得たような表情だった。

 

また、試合後、JFL開幕に臨む栃木ウーヴァの壮行セレモニーでは、DF阿部琢久哉が新主将として紹介された。ヴェルフェ戦は、阿部にとって25日に任命された後、主将として初めて迎えた実戦となったが「点は取れたけど圧倒できた内容でもなかった。(開幕の)1週間前にいいゲームができた。監督からは切り替え、球際、セカンドボール、運動量、そういったものを圧倒しろと言われて臨んだが、自分も含めてフワフワしてしまった」と反省の弁。開幕戦のアウェーでのFC大阪戦に向けて、気を引き締め直したようだった。

 

一方、ヴェルフェにとっては、3-5-2の新しいシステムを試す一戦でもあり、試合前、堀田監督は「格上相手に(3-5-2が)通用すれば(KSLの)本番に向けて心強いものとなる」と話していた。追い上げたものの一歩及ばずの敗戦に「疲れを感じながらも走れる状態にあったことは良かったが、(ボールに)行けてない場面があるなどして3失点したので守備の改善を図りたい。最終的にどのシステムが一番しっくりくるのかは熟考を要する。ただ、この時期にJFLのチームを相手に試合ができ、選手も感じるものがあったと思う」と堀田監督は話し、KSL開幕までの残り1カ月にチーム力向上を期す構えを見せていた。

 

この日の顔合わせは、今季も天皇杯の県予選で顔を合わせる可能性もあり、プレシーズンマッチとはいえ、公式戦に近い緊張感も伝わってきた。ともに本番となる各リーグ戦を前に、課題を把握するには絶好の一戦となったようだ。

(文・写真 編集部スタッフ)

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