「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

【無料記事】【インタビュー】ヴェルフェたかはら那須 栃木トヨタ杯準決勝栃木SC戦直前、堀田利明監督インタビュー。元栃木SC戦士として様々な思いを背負って立つ戦い。「ヴェルフェはアマとしての意地を見せ、栃木SCに勝つことにこだわる」

第50回関東サッカーリーグ(KSL)1部のヴェルフェたかはら那須は、11日に県グリーンスタジアムで行われる栃木トヨタカップ第21回栃木県サッカー選手権大会準決勝でJ3の栃木SCと対戦する。チームを率いるのは、JFL時代の栃木SCで活躍した堀田利明監督。Jリーグ昇格後の栃木SCと初の公式戦となる一戦、アマチュアチームのヴェルフェは「サッカーへの情熱では負けぬ」との思いで下剋上を果たそうとチーム一丸で臨む。指揮官として古巣に挑む堀田監督が、栃木SC戦に向けての意気込み、そして、栃木県のサッカー界に対する思いを熱く語ってくれた。「待ってろ、J」。(文・写真 永島一顕)

かつて02年から07年まで栃木SCでプレーしたヴェルフェたかはら那須の堀田利明監督。真岡市出身。現役時代は水戸穂^リーホックなどでプレー。

かつて02年から07年まで栃木SCでプレーしたヴェルフェたかはら那須の堀田利明監督。真岡市出身。現役時代は水戸ホーリーホックなどでプレー。

ヴェルフェを発信する良い機会

 

栃木SC戦は、Jリーグのチームと真剣勝負ができる機会がなかなかない中で、個人的にも楽しみです。栃木のサッカーを見に来てくれる方が、「ヴェルフェたかはら那須」というチームがあるということを発信できるすごく良い機会であり、自分たちができることを最大限に発揮し、「来てよかった」と思ってもらえるような試合をして、「ヴェルフェはこういうサッカーをやっているんだ」と感じてもらえればなと思います。

 

戦い方としては、基本的に自分たちの特長を出しながら、相手の特長を消すようなプレー、狙いどころを意識するような試合をしたい。何度か栃木SCの公式戦を観戦しましたが、J3での戦いはノーリスクで長いボールを蹴ったり、DFラインから背後へ、というプレーが見られます。うちとしてはしっかりつないでビルドアップし、その中で攻略してフィニッシュまで持っていく形を作りたい。

守備に関しては、全体的にしっかりブロックを作り、ボールサイドをどんどんチャレンジする点は変えず、自分たちの仕組みへと引き込むように持っていきたい。だけど、すべてが思い通りに行くわけではないので、流れの中で色々と考えながら試合を進めていくつもりです。

 

西谷和希選手、山本大稀選手は、「嫌な選手だなぁ」との印象を受けました。上手さの中にスピードがあり、個で打開されてしまう可能性もあり、彼らのプレーは少し気に掛けないといけない。セットプレーでの広瀬健太選手もかなり強いので、要注意です。

こちらの狙いとしては、ディフェンスラインとクロスさせるような動きをすることでギャップをつくるようなプレーができれば、その中から攻略していくこともできるのではと考えています。

 

うちの選手たちも、Jのチームとどれぐらいできるのか、何れヴェルフェがJ3を目指すとなった時の指標にもなり、多くの観客の前で試合をするというモチベーションはかなり高いようです。

結局、今季はリーグ優勝も全国社会人出場も果たせなかったので、11日の栃木SC戦は最後の目標でもあり、ベテラン選手も「栃木SCを何とかしてやろう」との思いが強く、どんどんチャレンジして行こうという若手とベテランのバランスを考えたサッカーができればいいかなと考えています。練習のサイクルも変えて、きちんと照準を合わせて栃木SC戦に臨むつもりです。

 

離れた人を引き込むチャンス

 

今回の栃木SC戦は、私自身、アマチュア時代の元栃SCの選手だったことを踏まえて、色々な思いを背負ってやらなくてはいけないゲームだと感じています。栃木SCの歴史を振り返ったときに、アマチュアだったJFL時代に応援してくれていた方からは、プロ化されたことで「もう見に行かない」という声が未だに耳に入ってきます。だから今回は、そういう人たちを引き込むチャンスなのではないでしょうか。

自分のスタンスは、栃木SCがベースであって、栃木SCで培ったものを今の選手たちに残したいとの思いもあるので、「栃木のサッカーは良いな」とか感じてもらえる試合がしたい。そして、OBも含め「もう一回サッカーにかかわってみようかな」とか、いろんな方に昔の思いを再び抱いてもらいたいですね。

 

あえて、栃木SCに関して言えば、一度離れてしまったものに対してどう動いていくべきなのかということを感じてほしい思いはあります。「結果だけ出していれば良い」のではなく、栃木SCが栃木のサッカーの頂点にいることは変わらないし、皆の注目であることは間違いないのだから、いろんな発信をしてほしい。

栃木のサッカーが盛り上がらない限りは、いろんなニーズも生まれてこないし、サッカーをする人たちが喜ばしい環境でプレーできません。現状では、栃木SCを見てもハードが十分でないことは明らかなので、現場が結果を出すことも大切ですが、サッカーの力を示していけるようになってほしい。サッカーは、人の心をつかみ、いろいろなところにお金を発生させることもできる。そうなるためには、現場の人間が一生懸命やっていることがどう伝わるかが醍醐味だし、それができるのがスポーツではないでしょうか。

 

栃木SCには、無理にでも自チームのグラウンドを持って、ジュニアもユースもそこで練習を行い、「あんな素敵な環境で練習できるんだ」などと子どもたちが憧れるようなチームに必ずやなってほしいし、そういうチームにならなくてはいけません。結果を出すことだけでなく、ハード面でクリアすべきことにしっかりと目を向けていくことが、今後の発展につながるのではないかと感じています。

栃木のサッカーが発展するためにはトップが盛り上がって引っ張っていかないといけない。栃木SCには、あらゆる意味で県内のチームの目標となるチームになってほしいのです。そして、離れていったOBの人たちが「また一緒にやろうか」と関われるような環境を整えて行ってほしいです。自分自身も何らかで関わりたいという思いも持っています。

頂が高くないと下に広がりができません。栃木SCには栃木県のトップに位置するチームとして、僕たちとの試合を栃木のサッカーをけん引し、発展させて行くための一つのきっかけにしてほしいと強く思っています。

 

「矢板市」が本拠のヴェルフェにも意義ある一戦

 

もちろん、11日の栃木SC戦は、ヴェルフェにとっても非常に意味のある試合です。この試合のためだけに、ヴェルフェが本拠を置く矢板市の方などから協力を得て、ポスターも作成しました。これは「発信することで少しでも多くの方に見に来てもらおう」との思いがあるからです。

また、矢板市は、県サッカー協会がサッカー振興と地域活性化を目的に整備する「とちぎフットボールセンター」の予定地に、小山市とともに選定されています。「サッカーの町」として、矢板市にも各方面からこれまで以上に目を向けてもらいたいとの願いもこめられており、それによって、「とちぎフットボールセンター」が、その周辺も含めてより良い環境を整えた施設になっていけばといいのではないかと、自分も含め今回関わっていただいている方々は考えています。

そして、何よりも大切なのは、ヴェルフェはアマチュアではあるが、「サッカーへの情熱はプロに負けない」という姿勢を見せること。栃木SC戦では、自分たちが持っているものを全て出し、アマとしての意地も見せ、選手たちとともに最大の目標である「栃木SCに勝つこと」にこだわって挑みます。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ