「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

【無料記事】【レビュー】栃木SC J3第11節ブラウブリッツ秋田戦 FWよ、守備はほどほどに。ゴールを決めろ。

2017明治安田生命J3リーグ第11節

2017年6月4日13時キックオフ 栃木県グリーンスタジアム
入場者数 3,632人
天候 晴れ、無
気温 23.6℃
湿度 34%
ピッチ 全面良芝、乾燥

栃木SC 0-1 ブラウブリッツ秋田
(前半0-0、後半0-1)
得点者:82分 山田樹(秋田)

<スターティングメンバー>

◆栃木SC
GK 15 ジョニー レオーニ
DF 4 広瀬 健太
DF 5 尾本 敬
DF 17 福岡 将太
MF 2 西澤 代志也
MF 11 岡﨑 建哉
MF 16 仙石 廉
MF 26 夛田 凌輔
FW 38 宮崎 泰右
FW 13 上形 洋介
FW 14 西谷 和希
控えメンバー
GK 1 竹重 安希彦
DF 7 菅 和範
MF 10 杉本 真
MF 24 和田 達也
FW 19 服部 康平
FW 21 牛之濵 拓
FW 8 廣瀬 浩二
監督 横山 雄次

60分 上形→服部
74分 夛田→廣瀬
87分 仙石→和田

アウトドアスタイルを提供するお馴染み『WILD-1』から、休憩所スペースに格好いいアウトドアなテントや椅子、机などが登場した。すばらしい。

 

決定機の数では上回ったが

  

決定機を決め切れず、最後に隙を見せて失点し、敗れた。

大枠でいえば、前節相模原戦と同じ負け方だ。

 

映像を見返して集計したが、栃木の決定機は少なくみて3回。

30分、福岡将太の左クロスがファーサイドに抜け、右ウィングバック西澤代志也がペナルティエリア内でフリーでシュートを振り抜いたシーン。相手DFに当たってコースが変わったボールを宮崎泰右が押し込めず。

46分、ゴールキックから上形洋介が頭で反らし、DFラインの背後へ抜けた宮崎泰右が相手GKと1対1になるもシュートは大きく上へ。

87分、左サイドを宮崎泰右と福岡将太で崩し、福岡将太から放たれた左アーリークロスに廣瀬浩二、服部康平が飛び込むもわずかに届かず。

 

24分のFK、広瀬健太のヘディングシュートがポストを弾いたシーンも含めれば4回か。

 

対する秋田の決定機は、前半は0本。後半は1本。1本というのはあのゴールシーンだ。

秋田が栃木を自陣に押し込みつつ、右サイドからのクロスをFW田中智大が競ったセカンドボールを左ウィングバック山田樹が拾い、冷静に右隅に流し込んだ。

 

後半序盤に秋田が栃木を自陣に押し込んだ時間帯があり、左サイドの崩しからFWがスルー、最後は深井脩平が右足を強振したがわずかに右へ。しかしこれは決定機というよりもチャンスシーンである。

 

栃木は決定機の数で秋田を上回っていたが決め切れず、秋田にワンチャンスを決められて負けた。

試合後に尾本敬が「秋田が首位にいる理由がわかる」と話した。西谷和希が「昨季の栃木のよう」と表現したのは言い得て妙だった。

去年の栃木に敗れたチームの気持ちがよくわかる。西谷が「秋田のほうが勝負強かった」とも言っていたが、まさにそうだった。前節の鹿児島も決定機で秋田を上回ったが、最後に決め切れられて敗れている。

 

最後に隙を見せてやられていることについて広瀬健太が「一つ思うのは、去年よりも前がかりなところもあるので、オープンな展開になって、今年はやられているのかな」と話している。

納得できるところもある。前節相模原戦の失点はまさにそうだった。が、この試合の失点シーンはオープンな展開でやられたわけではなく、自陣でブロックを作っているときのセカンドボールへの反応が遅れてやられたものだ。

3-4-3同士のミラーゲームにしたのでマークははっきりしていた。秋田のシュートを決めた左ウィングバック山田樹のマークは右ウィングバック西澤代志也だ。西澤はこのシーン、相手のクロスが上がるまではマークを見ているが、クロスがあがったとたんにボールウォッチャーになってしまった。

 

人の違いだと思う。

去年の両サイドバックは山形辰徳、菅和範という守備職人系の選手たちだった。コーチング力も含めた守備力、守備意識などは今季のメンバーより明らかに上で、チームは強固な守備を保てていた。より全体がコンパクトだった。

だが、一長一短がある。栃木は昨季、守備重視でチャンスが数多く作れないという課題に最後まで苛まされた。堅い守備はそのままによりチャンスを増やそうと始まったのが今シーズンだ。そして実際にチャンスの数は多く作れている。決め切れていないだけで。

 

J3天王山。試合展開からして1点勝負。最悪でもスコアレスで終わっておけよ、という見方はできる。秋田との勝点差は実質7差。負ければ10差。絶対に負けてはいけない戦いだった。

ただ、それを頭に入れて試合を終わらせられるほど、このチームはまだ成熟していない。

堅く守りながらもゴールを奪いに行く。全員攻撃、全員守備。その姿勢で90分間一貫していた。実際、後半は相手に押し込まれてブロックを築く時間が長くなったが、カウンターへ移行しようとする意志は見せていた。71分には自陣で服部康平がキープから粘って右サイドを抜け出し、左サイドの宮崎泰右へ。最後は宮崎の左クロスをゴール前まで走り込んだ服部康平が上から叩きつけようとしたが、秋田の守備陣二人がかりで対応された。

 

秋田の守備は終始硬かった。タイトだった。セットプレー、ロングスロー、カウンター対応も含めて集中したタイトな守備を見せていた。

が、それでも栃木には試合を通して決定機があったのだから、勝てるチャンスはあった。

 

開幕から11試合を消化して、栃木はシュート数もチャンス数もリーグトップクラスの数字を残している。あとは決め切るだけという試合が続くなかで、決め切れない試合が続いている。攻撃陣は様々な人選、組み合わせも試してきたが、結論は出ているだろう。

 

ゴールが奪えるプロフェッショナルなストライカーの獲得が必須な状況にある。ここから先は強化部の仕事だ。今頃ビッグディールを引き当てようと血眼になって奔走しているだろうか。

 

「すごいストライカーを連れてきたって、この守備重視のチームに入れたら守備守備になって点が取れなくなるよ」という見方がある。そんなことはない。プロフェッショナルなストライカーはほどほどにしか守備をしないから大丈夫だ。ゴールを奪うパワーを守備で削り取って疲弊する真似はしない。

 

監督から「守備をしろよ」と言われて、「はい、わかりました」といい返事だけして、実際はほどほどにしか守備をしない。で、ゴールを奪えば勝ち。それでチームが笑顔になって、自分もハッピーになり、監督もハッピーになる。もっとも大事なのは、守備ではなく、ゴールを奪ってチームが勝つことだ。

 

栃木は歴代守備を重視する流れで来ているが、在籍したストライカーたちはみんな守備をほどほどにしかやってこなかった。あの守備マイスター、松田浩時代のストライカーのサビアやロボらもブラジル人ストライカーらしく例に漏れずだった。

 

松田浩氏がブラジル人ストライカーに授けた守備は、

・相手DFに第一線(FWのライン)をドリブルで突破されないこと

・ボランチへのパスコースを切ること

この2点だけだ。「これだけはやってくれ、と言ってやらなかったブラジル人はいない」と松田浩氏が後に振り返っている。

 

その後栃木のストライカーとして活躍した大久保哲哉(現横浜FC)も守備はほどほどだったし、昨季の大石治寿(現レノファ山口)に至っては、守備意識はあったのだろうが、相手DFにドリブルで第一線を散々突破されていた(大石君ごめんね)。が、彼はゴールを決めた。あくまでそのためのパワーを隠し持っていた。大石はわかっていた。

監督からすれば、結果を残されたら何も言えないものだ。プロフェッショナルな世界とはそういうもの。ゴールが、勝利が、みんなに富をもたらす。プロフェッショナルな世界に身を置いてきた横山監督の腹のなかにも、その考えはしっかりあると僕は思う。

 

「守備をやらないといけないんで――」

と言っているうちはアマチュア気質そのもの。プロフェッショナルに進化を遂げるならば、監督のいう額面どおりに真面目にフルパワーで守備をやり続けることがベストじゃない。守備の無駄をなくして精度を上げる、という言い方もできるだろう。

とにかくうまく、賢く、ベターに、やってほしい。

 

結論――。FWよ、守備はほどほどに。ゴールを決めろ。

 

 

■採点・寸評

平均は6点 最高は10点(採点基準の一つは、得点・失点に絡めば採点が大きく変動する要素となる)

 

GK15ジョニー・レオーニ 5.5 失点シーンはノーチャンスか。

DF4広瀬健太 5.5 失点シーンのクリアの場所を本人は悔やんでいたが、それ以外は終始タイトだった。

DF5尾本敬 6.0 攻守においてゴール前で存在感を発揮した。広瀬、尾本、ともに自分から仕掛けるビルドアップを意識して実行、練習で準備したとおりうまく相手プレスを剥がしていた。

DF17福岡将太 6.5 守備をしつつ左サイドから決定的なクロスを二度供給した。

MF2西澤代志也 5.0 ウィングバック起用はよかった。元々の本職は右サイドだがタッチラインが側にあったほうがやりやすそう。ただ、失点シーンは西澤のマークだった。

MF11岡﨑建哉 6.0 ボランチがこなれてきた。ボールが回る。セカンドボール争いに飛び込んでいた。

MF16仙石廉 6.0 良質のFKを引き続き。球際でファイトしていた。

MF26夛田凌輔 5.5 いつもの試合よりもややおとなしい上下動という印象。

FW38宮崎泰右 5.5 初のシャドー起用だったがよかった。上形洋介の背後で受けて西谷和希とともにゴールへ、という形が数回。後半立ち上がりの決定機逸が試合の明暗を分けた。

FW13上形洋介 6.0 ジョニーのGKキックに競り勝ってチャンスに繋げるシーンが4回はあった。1トップとして徐々に良くなっている。

FW14西谷和希 5.5 シュートチャンスでもうひと迫力、鋭い判断がほしい。

控えメンバー

MF24和田達也 ― 短時間の出場のため採点はなし。もう後5分早く、82分の失点直後から見たかった。

FW19服部康平 5.5 この日は最後の絶好機を決め切ることが仕事だったが叶わず。相手のタイトマークにボールも収められなかった。

FW8廣瀬浩二 5.5 背後にボールを引っ張ろうとしていたがなかなか出てこず、ボールに絡めなかった。最後の福岡将太のクロスを決め切ればヒーローだったが。

監督・横山雄次 5.5 343同士のミラーにしてJ3天王山らしい堅いゲームに持ち込んだ。決定機も数回作るなど監督の狙い通りの展開だったと思う。

 

主審 6.0 両者に公平だった。

クラブにコメントを寄せてくれた坂田良太のためにも勝ちたいJ3天王山だったが…。

野木町の『のぎのやさしい水』を案内するクラブスタッフの赤井秀行氏。

SPRIDE、用意したサイン入り最新号は完売。御礼申し上げます。

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