「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

【PLAYERS Column】栃木SC チーム在籍8年目、杉本真の流儀。「自分はここに居続けているのだから、裏切ってしまった期待を取り戻せるチャンスがあるということ」

 

前節のカターレ富山戦、上位対決の大一番でネイツ・ペチュニクと2トップを組んだのは、今季初めてスタメンを飾った杉本真だった。そして25分に同点ゴールを決めてみせた。

ゴールを決めるのは20151010日、J236節大分トリニータとの残留デスマッチでの先制ゴール以来、およそ2年ぶり。

 

あの大分戦のゴールはニアサイドへ飛び込んだダイビングヘッドだったが、前節富山戦の同点ゴールもクロスに合わせたヘディングのゴールだった。

 

前半25分、杉本真は、クロッサーとなった牛之濱拓がボールを持った瞬間に反応、ファーサイドへ走り出す姿が映像として残っている。相手のマーカーよりも一歩先んじてポジションを取っている。

 

「自分がヘディングでゴールを獲るときはアシストしてくれるクロッサーが9割くらいだと思っているんです。日頃のトレーニングの感覚を活かして、うまく連携が取れれば、ああいう形でゴールが生まれるというのは昔から感じていることなんで」

 

杉本はさらりと言った。ゴールの取り方をわかっている人間の口ぶりであった。練習しているとおり。あれは自分のゴールの形だ。そんなニュアンスもあった。

 

小さなゴールハンター――。僕はあらゆる媒体で杉本真をそう表現してきた。富山との大一番で杉本真は、確かにゴールハンターとしての仕事をした。

 

たとえ試合出場がなくとも、腐ることなく、自らの武器を研ぎ澄ませてきた結果である。

 

今季の第25節にして今季初出場という状況は選手として厳しい状況に変わりはない。昨季の出場数は9試合、193分。うちスタメンはわずか1試合。J2時代の6シーズンで140試合、23ゴールを挙げた杉本真は、この2シーズン、文字通り苦しいシーズンを過ごしている。

 

前節富山戦でチームの勝利に貢献する先制ゴールを決めたあと、杉本に自身が置かれる苦しい状況について聞くと、あっさりと「まあ、苦しいですよ」と笑みを交えながら言った。どこか達観しているような印象だった。

 

数か月前、なかなか出場のチャンスが巡って来ないときに、杉本に同じ話を聞いたことがあった。そのときの杉本は、

「色々と考えることはあるんですけど、でも、自分の努力以外でどうしようもないことを考えてもしょうがないんで」

このとき、すでに自身がやるべきことが明確に整理できていた。目の前の練習に100%の力を注ぐことを誓っていた。

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