【特別無料掲載】我々はリーグに促されてクラブを、リーグをサポートしているのではない【島崎英純】日々雑感-Jリーグのレギュレーション変更について(2013/9/18)

先般行われたJリーグ実行委員会での2ステージ制及びチャンピオンシップ、スーパーステージのプレーオフ制度導入合意を受け、9月17日に実施されたJリーグ理事会において上記の開催方式変更が承認され、2015年シーズンからの導入が正式に決定した。

Jリーグ側は現状のリーグ運営が危機的であることを深刻に捉えている。Jリーグが1993年に開幕した当初から20年が経過し、その取り巻く環境が激変したことで、リーグをビジネスとして成立させ永続的な発展を目指す手法に変化が生じていることを実感しているという。特に2010年シーズン以降はリーグ全体の総観客動員数の微減が続き、それは昨今の日本経済の低迷や2011年3月11日に発生した東日本大震災による影響も相まって歯止めを掛けられない状況が続いている。

このままではリーグの存続すら危ういと認識したJリーグ側は昨年10月にJリーグ戦略会議を立ち上げて改革を模索し、喧々諤々の議論を重ねてきたという。しかし、そこで140あまりにも及ぶ改革アイディアが提出されたものの、即効的な実現性や改善策に乏しいことから、当初はタッチするつもりのなかったリーグレギュレーションの変更が議論されることとなる。2ステージ制導入による優勝争い増加、(ステージ毎にチャンピオンが生まれるため)、プレーオフ制導入による世間一般への露出、認知度アップ、そしてなによりチャンピオンシップ、スーパーステージなどの注目試合を放映する地上波放送のスポンサー獲得が見込めることによる放映権料獲得などのメリットを勘案し、これにより『約10億円の増収が見込める』(中西大介・Jリーグ競技・事業統括本部長・談)との判断から、この度のレギュレーション変更が提案され、先般のJリーグ理事会において承認が成されたわけだ。

ここでまず、私の見解をはっきりさせておきたい。私は1シーズン制を強く支持し、2ステージ制及びプレーオフ制導入に反対である。そして、これまで状況を分析するためにあまり声高に意見を述べてこなかったことをお詫びする。事実として、私もこれほどまでに早くリーグのレギュレーション変更という重要な物事が決まるとは思っていなかった。その見通しの甘さを痛感し、反省する次第である。

今年3月にJリーグのレギュレーション変更案が主に新聞メディア側からのリークによって発覚して以降、私のような零細メディアにも少なからず様々な情報がもたらされてきた。それはJリーグ全体が相当な危機を迎えている事実である。それは数字からも表れている。J1の年度単位の平均観客動員数は昨年の2012年シーズン(総計306試合)で17,566人。東日本大震災が発生した2011年シーズンの15,797人からは増加したものの、最も動員数が多かった1994年シーズン(総計264試合)の19,598人と比べると2,032人減少している。また直近の年で最も観客動員数が多かったのは2008年シーズン(総計306試合)の19,202人で、5年前と比べても1試合平均で1,636人減少している。

観客数が減少し、露出が減り、世間の関心を得られなければ、宣伝目的やメセナ(企業が主として資金を提供して文化、芸術活動を支援すること)などでその対象へ投資しようとするスポンサーのアクションも鈍る。それは負の連鎖となり、リーグ全体を侵食し、いずれ死に絶える。その危機感をJリーグ側が認識していたということだ。

前述したように私は1シーズン制に賛同している。それはこの方式が最もフェアで分かりやすく、純粋なチャンピオンを生み出せるからに他ならない。J1リーグで当てはめれば18チーム参加のホームアンドアウェー戦を1チームあたり年間で34試合行い、総勝ち点の順位で王者を決める、至って簡単なレギュレーションだ。しかもサッカーという競技において勝敗を左右するファクターとなるホーム、アウェーを1試合ずつ均等に行うことでチームを支えるサポーターたちとの一体感を生み出せる。なんて理路整然として淀みのないシステムなのだと思う。

だが、このままJリーグが1シーズン制を採用したまま時を過ごしても新規客の関心を得られず、露出も減ることで既存客も次第に離れ、ジリ貧になることは目に見えているとリーグ側は捉えている。それはJリーグが広告代理店会社に依頼してリサーチしたインターネット調査アンケートによって導き出した結論だった。そのインターネット調査は60,110人に対して行われ、Jリーグの年間観戦回数毎に区切って『ポストシーズン制に対する評価』という名目で以下の回答が得られたという。

2013-09-18_1916

上記のインターネット調査は広告代理店会社が独自に立ち上げたフォーマットに対して一般の方が登録制で加入し、様々なアンケートに答えるという形で実施されている。したがってJリーグ側が発した『ポストシーズン制に対する評価』という項目に対して、Jリーグに関心のある方、ない方に関らず無作為で投票された結果になる。その数値については試合観戦回数の多い方ほどポストシーズン制に反対の方が多く、少なくなると数値が変化するが、それでも賛成と反対のパーセンテージに大きな開きはない。それよりも問題なのは、Jリーグを観戦したことのある方自体がこのアンケート調査では少なく、1回でもJリーグを観戦した方が総計6,595人に対し、1回もJリーグを観たことのない方が53,515人いたという事実である。

Jリーグ側はこの無関心層の取り込みが必須であるという結論に達したのだろう。そこで現行方式を改め、まずはテレビ地上波などの露出を増やし、宣伝を強化して日本国民、今はサッカーに関心のない一般層へ訴求していく。この論旨があったのだと推測する。

と、ここまではツラツラと状況説明をしてきた。まずはJリーグ全体を取り巻く現状認識が必要だし、Jリーグ側の考えも理解した上で自らの考えを述べるべきだと思ったからだ。

ここからは私見だ。

私はフリーでの執筆活動以外に『月刊浦和レッズマガジン』という媒体物の編集長業務にも携わっている。その編集長としての観点では、現在の弊誌発行部数減少に大いに頭を悩ませている。もちろんこれは雑誌の対象である浦和レッズの現状、成績などが反映されており、2006年シーズンのJリーグ優勝や翌年のアジア・チャンピオンズリーグ制覇時と比べれば当然タイトルから長く離れている今はチームへの関心度が薄れ、それが部数減に直結していると認識している。ただ現在の売り上げ部数では商売的にそれこそジリ貧で、赤字が嵩めばいつ廃刊という結末が訪れてもおかしくない危機に瀕しているのも事実だ。

そんな中、もしステージ制、もしくはプレーオフ制が採用されれば、その都度世間一般の関心、またはJリーグを愛するコアなサポーターの関心度が年間の中の多岐に渡って高まるのではという期待がある。ちなみに我々の雑誌が最も部数減に陥るのがシーズン半ば、まだ優勝するのか、それとも降格に瀕するのか分からない夏場から秋口にかけてで、逆に最も部数が伸びるのはシーズン開幕直前の2月、スタート直後の3月、そしてシーズンの全てが決する年末の時期になる。

だが、そんな私の個人的なビジネス上の都合による甘い見通し、短絡的な考えはすぐに改めた。それは私の取材活動を支えて下さる方々、浦和レッズのサポーターの方々から次々に発せられた悲痛な『声』を聞いてしまったからである。

私は常々、浦和レッズサポーターの熱意と行動力に感服してきた。浦和サポーターはチームを支えるためにホームスタジアムへ足繁く通い、年齢の差異なくお年寄りから子どもまで、共にひとつのチームを応援するという共通認識の下、心を一つにする場所を希求し、それを得た方々の共同体である。また浦和サポーターはホームスタジアムだけでなく、たとえ遠方の地であっても献身的に赴いてアウェースタジアムのスタンドを埋める。もちろん様々な土地を訪ねて観光する理由も抱き合わせている方もおられるだろうが、それでも動機はあくまでも『浦和レッズをサポートする』ことに集約されている。今年も5年ぶりに出場したACLのアウェー、中国・広州、韓国・全州、タイ・バンコクで様々な浦和サポーターの方々からお声掛けを頂いた。また2007年シーズン、2008年シーズンのACLではインドネシアのソロ、中国・上海、韓国・ソウル、全州、オーストラリア・シドニー、イラン・イスファハン、クウェート・クウェートシティと、それこそ世界中の大都市や辺境の町にまで、あの赤いユニホームを着た方々が大挙押し寄せて熱いサポートを展開したことをよく覚えている。

そんな方々の想いはひとつだ。浦和レッズを真のチャンピオンにすること。それは最もフェアな方法で、純然たる実力で、レギュレーションによる不備なく成されなくてはならない。浦和は2004年シーズンに年間勝ち点でトップに立ちながらステージ制、チャンピオンシップというレギュレーションの中で最終的に第1ステージ覇者の横浜F・マリノスにCSで屈してチャンピオンの座を逃している。それは浦和だけに限らず、1999年の清水エスパルス、2000年の柏レイソル、2001年のジュビロ磐田も年間勝ち点でトップに立ちながら年間王者に就けないという同様の憂き目に遭っている。

正当に試合で勝利して勝ち点を積み上げてもチャンピオンに直結しない。そんなリーグの中で、サポーターは何を拠り所にするのか。ステージ覇者、スーパーステージ覇者、様々なチャンピオンが生まれる中で、年間を通して実力を発揮したチームが栄冠を得られない歪なシステムを受け入れた時、これまでJリーグを支え、チームを支えてきたサポーターたちのアイデンティティは無に帰すのではないか。

ホームアンドアウェーの大原則を貫けないのも2ステージ制の大きな欠陥だ。現在のJ1は18チームあり、年間で34試合を戦う。それを前期、後期に分けると1ステージあたり17試合で各チーム総当たり、ステージの中でそれぞれのクラブと1試合だけ戦い、ステージ覇者を決めることになる。そうなれば必然的にそれぞれの対戦相手と戦う場はステージ毎にどちらかがホーム、どちらかがアウェーになる。つまりどちらかのステージではホーム&アウェーで有利不利が発生するのだ。これは今まで浦和駒場スタジアムで、埼玉スタジアム2002で声を枯らし、何らかの形でチームの力になると信じてホームチームアドバンテージを体現してきたサポーターの心情を逆撫ですることにはならないか。

そもそもJリーグ側の言い分は論点がズレている。何より、2ステージ制、プレーオフ制導入がリーグを活性化させ、永続的な発展に寄与するとは思えない。もちろんレギュレーション変更によって一部スポンサーやテレビ放映局から内諾を受け、短期的な収入増、露出アップが得られる算段は付いているのだろう。しかし安易で欠陥だらけのレギュレーションは複雑性を生み、そのタイトルの権威が失墜し、いつしか興味が薄れるだけだ。

そもそもJリーグ側も『1ステージ制がベスト』という認識を有しているのに、あえてステージ制、プレーオフ制に傾く論旨が分からない。もちろん資金は必要だ。Jリーグ側がアナウンスしているように資金が無ければ宣伝が出来ず、露出が成されず、リーグ全体の整備も滞る。Jリーグが育成年代の強化に力を入れて各クラブのアカデミー組織への人材派遣や大会の実施などにおいて様々な資金提供を行っている事実はそれなりに認知されている。特に財政面で窮している地方クラブの中にはクラブ単位での環境整備に限界があり、それをリーグ全体でサポートする体制によって支えてもらっている。そこにはリーグとしての永続的な理念もうかがえる。しかし、そのために屋台骨であるトップリーグの運営、特にレギュレーション変更で本質的な魅力を削いでしまっては本末転倒だろう。なにより一過性のレギュレーション変更で世間一般の関心を得られたとして、その後にJリーグ本来の魅力、真のチャンピオンを希求する尊い精神、その意義を新規サポーターが感じて下さるのだろうか。

プレーオフ導入に伴う試合数増加で生じる過密日程によってゲーム内容が低下する懸念もある。Jリーグは今回のレギュレーション変更によってこれまでのリーグ3月開幕を2月に前倒しする予定であることを併せてアナウンスしているが、そうなると実際にプレーするプロ選手たちの負担は避けられない。例えばレギュレーションが変更される予定の2015年シーズンは1月9日から31日までオーストラリアでアジアカップが開催される予定となっており、もしこれに日本代表としてJリーガーが参加すれば貴重なオフシーズンのほとんどを削られて新シーズンに臨まなければならない。疲労を抱えてプレーパフォーマンスを落とした選手を観て、事情を理解し切れない新規客がJリーグへの関心を失う危険性は多々ある。

日本サッカー協会の態度も気になる。今回の国内リーグの危機に際して、日本サッカー界の大本である日本サッカー協会は傍観の姿勢なのだろうか。リーグ運営はその管轄であるJリーグが責任をもって行うのが筋なのは百も承知として、一蓮托生である協会とリーグが補完関係を築かない姿勢に疑問を抱く。

細かい話で恐縮だが、Jリーグクラブは所属選手たちへ年俸を支払い、自らの保有選手としてその権利を有している。また選手は報酬の対価として所属クラブに忠誠を誓い、チームを支えるサポーターと共にひとつの目標に向かって邁進している。その一方で、サッカーという競技は世界的に発展を遂げたメジャースポーツであり、国単位での対抗戦によって優劣を決めて真の王者を目指す大会がある。その筆頭が4年に一回開催されるワールドカップであり、地域ごとに開催される地域カップ(日本の場合はAFCアジアカップ)になる。またワールドカップ・プレ大会のコンフェデレーションズカップや代表チーム強化のために開催される各種国際試合などもサッカーファンの興味を引く重要なコンテンツとなっている。そして、その国別代表の各種試合に参加するチームは世界各国のサッカークラブに所属する選手たちの集合体である。

現在の日本代表選手は国内リーグのJリーグだけでなく、特にヨーロッパのリーグ(イングランド、スペイン、ドイツ、イタリアなど)に所属するクラブに在籍する者も含まれている(それでも大半の選手は元々Jリーグクラブに所属し、そこから海外へ旅立った者だ)が、全ての選手は等しく様々なクラブから収入を得ながら、名誉のために代表チームへと参加している。ならば代表チームを統括し、運営する各国サッカー協会と、それぞれの国で運営されるサッカーリーグは常に密接な関係性を保たねばならないだろう。

先日、日本代表は国内でグァテマラ代表とガーナ代表と親善試合を行った。これは来年開催されるブラジルワールドカップで好成績を残すための貴重な実践機会であるとともに、選手個々の国際経験によるレベルアップという有意義な場でもあった。

一方で、浦和レッズ側の事情を紐解くと、代表日程の間に国内カップ戦のヤマザキナビスコカップ準決勝第1戦が開催され、浦和は川崎フロンターレに3-2で敗戦してアウェー戦を落としている。ただこの試合では槙野智章が代表に招集されていることで(酒井宏樹の負傷による追加招集だった)今試合への欠場を余儀なくされている。ちなみに槙野は結局ガーナ戦の後半アディショナルタイムに出場し、ほとんどプレー関与のないまま試合終了し、グァテマラ代表戦と併せてわずか2分程度の出場で代表活動を終えている。

昨今の日本代表は2010年の南アフリカワールドカップでベスト16に入り、実力を評価された日本人選手が次々に海外のビッグクラブへ引き抜かれて活躍を果たした結果、露出とブランド価値が高まり、国内で開催される試合は親善試合であっても必ず地上波で放送され、スタジアムも連日満員の盛況だ。またスタジアムに赴かなくても、各都市のスポーツバーなどの飲食店では代表の試合を独自にパブリックビューイングし、そこに集った客がゲームに一喜一憂することでこれまでサッカーに無関心だった方々へ訴求される相乗効果も生んでいる。

ならば今こそ、日本代表の活動によって成果を得、資金も保有する日本サッカー協会は、選手育成、試合経験、競技発展の屋台骨となるJリーグをサポートすべきではないのか。Jリーグ側の言う通り、機構側の運営、サポート無く、クラブだけで全ての改善を施すのは限界がある。財政的に、環境的に厳しいクラブをリーグがサポートし、育成年代の強化に努め、永続的な選手育成、サッカー技術向上に努めるのはリーグとして意義のある素晴らしい活動だ。しかし宣伝、露出が不足して資金が途絶え、無関心層の取り込みが出来ない現状があるならば、それをレギュレーション変更という稚拙な手段で補うのではなく、相互関係、補完関係にある、そして現在活況を呈する日本サッカー協会のサポートを得て改善すべきなのではないのか。正当で理論立った1シーズン制を解体し、難解で複雑、真のチャンピオンが生まれない可能性のある2ステージ制、プレーオフ制を導入する前に、出来ることはまだあるのではないか。

それこそ日本代表の各種活動によって生じたリーグの過密日程を整理する策はないのか。観客動員の減少は平日開催の増加、週末土曜日開催固定などが要因ではないのか。イングランド・プレミアシップやドイツ・ブンデスリーガはあらゆる職種、年齢層に及ぶサポーターに配慮して各節毎に土曜日、日曜日だけでなく金曜日のナイターなども組み込んで分散開催を行っている。単純にミッドウィークの水曜に試合を組み込めばスケジュール調整はしやすいが、それによって様々な家庭内事情によって試合観戦できないサポーター、新規客が続出し、それが観客動員数に結びついているリサーチはされているのか。

また、プレーオフなどの注目度の上がる試合を開催することによって地上波テレビ局、もしくはスポンサーの関心を得て露出度を高め、一般層へのJリーグ認知度を高めたいのならば、それこそ1シーズン制で決した年間チャンピオンチームとその時の日本代表とで雌雄を決するワンマッチを行えばいい。あくまでも真剣勝負で、リーグチャンピオンと日本代表が優劣を競う。現在の代表選手は海外クラブの選手が多くJリーガーの世間一般の認知度が上がらないのならば尚更、このような舞台装置が必要だ。しかも今試合の各選手のプレーパフォーマンスが時の代表監督の選手選考に影響を及ぼすとならば選手たちのモチベーションも格段に上がるだろう。そして放映権料、チケット収入は協会ではなくリーグへと還元される。これならば直截的な資金提供ではなく、協会とリーグの補完関係による健全な利益供与になる。

そもそも、今回のレギュレーション変更の経緯には根本的な問題がある。Jリーグがこれだけ危機的で、何らかの改善、刷新無くしては立ち行かないことを、なぜこれまでリーグを支えてきた既存サポーターへすぐにアナウンスしなかったのだ。私のようなメディアの端くれでさえそんな事情を伝えられず、いざ案件が露見され、こちらが「2ステージ制は反対だ」と述べると、「だったら対案を出せ」と迫る。しかも、こちらがあくまでも1ステージ制の正当性、意義を唱えた時には、ある方からこんなお言葉を返された。
「そんなこと言っても、リーグ自体が消滅してしまったらアナタのようなJリーグのクラブを媒体にして仕事をしている方も困るでしょう。飯の種が無くなるんですよ。もっとそこを深刻に考えてくださいよ」

選手やクラブに従事する監督、コーチ、スタッフもサポーターの方々と同様に何のアナウンスもされないまま、なし崩しに新レギュレーションを受け入れなければならない。選手会へ事前協議もされず、決定事項が淡々と伝達され、選手たちの意思が尊重されないまま頭ごなしに全てが決まる。

事態を深刻に考えたい。そのためにはリーグの抱える窮状、事情を理解しなければならない。しかしリーグはその説明責任を果たさず、内密に事を進め、全てが決定された状況になって初めて既存サポーター、選手、クラブスタッフらへアナウンスした。これで「こちらの考えに従え」とは、馬鹿にするのもほどがある。

もしリーグが危機的であることが以前から周知されていれば、既存のサポーターも選手もリーグ存続のために様々な対案を模索し、草の根から観客動員アップのために宣伝活動、勧誘をしただろう。それがリーグのため、ひいては自らが愛して止まないクラブのためになるならば、Jリーグに関わる方々は個人単位で様々なアクションを起こすはずだ。例えばリーグ存続のために1試合のチケットに付き1000円増額と言われても、それが明確な活動経費、リーグ発展資金として寄与するならば、Jリーグのサポーターは身銭を切って資金を提供する方々が沢山いると確信している。

厳しいなら『助けてほしい』と言ってほしい。リーグ存続のために我々メディアや選手、既存サポーターの犠牲が必要と言うなれば、全ての窮状を明かした上で共に打開策を模索し、共に明確な道を歩みたい。それが純粋な論旨だと私は思っている。特に既存サポーターの方々は決して2ステージ制、プレーオフ制を頭ごなしに否定しているのではない。リーグを支え、これまで熱く魂を焦がしてクラブをサポートしてきた方々を蔑ろにする。新規客をターゲットにしたインターネットというハリボテで体温のない調査で断を下す独善的な態度。これほどまでに重要な決定事項にも関わらず、アジア戦略と称するタイリーグ・チェアマンとの会合を優先し、レギュレーション変更決定の説明を回避したJリーグチェアマンの不誠実さに既存サポーターが憤慨していることを、リーグの方々は深く認識するべきだ。

リーグはこれからアナウンスを強化し、周知理解を深めるという。すでにレギュレーション変更決定が成された現状ではそのアクションが遅すぎるとはいえ、これから様々な論議を尽くしてサポーターや各種メディアが問題点を指摘し、良い方向へ向かうことを望む。おそらくJリーグクラブを愛するサポーターの方々の大半は無理強いされ、妥協させられたレギュレーション変更を経ても変わらずスタジアムに集い、そのクラブを、チームをサポートして下さるはずである。だからこそ、その献身的な方々を、リーグは蔑ろにしないでほしい。

我々はリーグに促されてクラブを、リーグをサポートしているのではない。人生の拠り所を得て、自らの意思でクラブを、チームを愛している。その筋道は誰が何と言おうと変わらない、普遍的なものだ。

« 次の記事
前の記事 »