ベストメンバーを組むも、低調な内容に終始【島崎英純】2016Jリーグ1stステージ14節・鳥栖戦レビュー

ベストメンバーを選択した指揮官の功罪

浦和レッズの選手たちがAFCチャンピオンズリーグのFCソウルとの2連戦で疲労を蓄積させていたのは事実だろう。しかし、それ以上にホーム・サガン鳥栖が消極的過ぎた。敵将のマッシモ・フィッカデンティ監督は通常4─2─3─1をノーマルシステムにしているが、この日ばかりは浦和対策として右サイドMFの崔誠根をバックラインに下げる5バックを形成し、堅牢なマーキングを敷いた。

浦和が攻撃時に5トップを築くことは、昨季までFC東京を指揮していたフィッカデンティ監督ならば十分理解しているはずだ。しかもフィッカデンティ監督は過去の浦和との対戦で0─1,4─4,1─4、3─4と、4戦中3試合で4失点しており、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が志向するサッカースタイルが苦手だったはずだ。また鳥栖はここまで2勝3分7敗でリーグ戦16位に沈み、ナビスコカップを含めて6戦未勝利だった。ホームで是が非でも勝ち点を得たい鳥栖は、かなりの妥協策で分厚い防御網を敷いたと思われる。

一方、浦和のペトロヴィッチ監督はFCソウルとの2連戦とまったく同じ陣容で臨んだ。これが指揮官の考えるベストメンバーであり、この采配から、志半ばでACLタイトルを逸した屈辱をピッチに立った選手たちで晴らすという、指揮官からの明確なメッセージが込められていたと思う。しかし個人的には、この采配はあまりにもエモーショナル過ぎると感じた。

もちろん主力選手への厚い信頼は強固な絆となるだろうし、FCソウルとの一戦で精魂を尽くした選手は早くも挽回の機会を与えられたとモチベーションを高められるだろう。しかし、実際は韓国・ソウルでの延長、PKを含めた120分間の激闘で多大なダメージを負った主力選手たちの動きは重かった。試合後の選手たちは総じて「疲れはなかった」と語ったが、そう言わなくては対外的に示しが付かない。「疲れていました」などと言おうものなら、他の選手にスタメンの座を譲る動機付けにもなるわけで、疲労を言い訳にしたくなかった選手たちの気持ちは十分に汲み取れる。

ならば本来は、チームをコーディネイトすべき監督が決断すべきだった。

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