【第1部のみ無料掲載】【浦研プラス・チャンピオンシップ特集】【CS番記者特別鼎談】浦和、川崎、鹿島の今のチーム状態(島崎英純×江藤高志×田中滋)第1部

Jリーグ復活の起爆剤として始まった2ステージ制は、導入2年目の2016年シーズンをもって一旦終わる事となった。つまり今後しばらくは行われなくなるチャンピオンシップを前に、出場を決めた3クラブの担当記者に集まってもらい、鼎談の形で展望を語り合った。
(全5部)

出席者

島崎英純(浦和・浦研プラス

江藤高志(川崎・川崎フットボールアディクト

田中滋(鹿島・GELマガ


【第1部】浦和、川崎、鹿島の今のチーム状態

■チーム状態について

江藤高志(以下/江藤):お疲れさまです。まずは、この23日開幕のチャンピオンシップということでお集まりいただきました。チャンピオンシップに向けて今チームがどんな状態なのか、良いのか悪いのか。もっと違う言葉が出てくるのかわからないですけど、語っていただけないかなと思います。
では、鹿島(アントラーズ)さんから。終盤戦、苦戦されていましたけど、どういう状態だったんですか?

田中滋:まあどん底ですよね。どうやって勝てばいいかわからない状態でした。

島崎英純(以下/島崎):鹿島の記者じゃない僕らからすると、そもそも監督さん(石井正忠監督)は大丈夫なのかなというところは気になります。

江藤:そこが一番気になるところですね。

島崎:チームの体制は整っているのか。監督さんは信任が得られているのか。そういう根本的なところから知りたいですね。

田中滋 :簡単に言うと、一回まわったという感じですね。一巡して元に戻ったみたいな。

島崎:もうそれで行くしかないわけですからね。

田中滋:そうですね。そういう状態にはなったかなと思います。まずは監督は人間的に誠実で非常に良い方なんです。でも、人が良すぎるあまり、選手も意見を言いやすくなった反面、どんどん主張が出てきて、その収容がつかなくなってしまった面はありました。選手の意見を取り入れようとするあまり、方向性がはっきりしなくなってしまった感じです。
島崎:じゃあ、巷で溢れていた選手主導になってしまったというのはある程度正解の面もあるんですか?

田中滋:さすがに選手主導とまではいかないですけど、じゃあどこが中心になるのって言ったらぼやけてしまった。。前のトニーニョ・セレーゾは、完全に監督がポジショニングはこう、こういうときにはこういうプレーをするんだ、と試合中もピッチサイドから選手に指示を出して縛るタイプだったんで、そこから石井さんになって圧倒的な自由を与えられて解放されたんですけど、しばらく経ったらそれが散漫になって一つの方向にまとまらなくなってしまった感じです。

島崎:逆に監督が選手の話を聞くようになって、今まで抑圧されていたところからある程度自由を得たことで、特に石井監督の人格も作用して指揮系統みたいなのが揺らいでしまった。?
田中滋: 監督が中心なのは当然なのですが、外国人監督よりも圧倒的に意見は言いやすかったでしょうね。

江藤:人がいい監督をサポートしたい、というような積極的理由だったのかな。このままだと監督が大変そうだから俺らががんばらなきゃみたいな。

田中滋:そういうのももちろんありましたね。積極的にアプローチしていた西(大伍)選手なんかも、たぶんそういうことを考えていた節があります。

江藤:非常に前向きなんだけど、それによってチームが揺らいでしまったところがあると。

田中滋:逆に今まで小笠原満男という絶対的な存在がいたので、「満男さんが言うなら」という形でうまくまとまっていたんですけど、どうしても今年で37歳で力も衰えてくる面がある。小笠原選手自身も、次の誰かに出てきて欲しかったでしょうし、ある程度見守る姿勢を取っていたんです。じゃあ、次は誰がという時に30歳前後の選手、西選手はその筆頭になる選手ですけど、今年は選手会長をやってますし、前面に立ってやっていこうとしたんですけど、なかなか上手くいかなかった印象ですね。

島崎:あまたのクラブが辿った道ですけど、やっぱり監督がまとめられないと。いくら選手の動機が不純じゃなくても、上手くいかない時に修正できなくなっちゃうと難しくなる。例えば選手が監督をサポートしたいから頑張ったとしても、勝てないときにその選手が責任を負うわけにはいかない。監督しか負えないわけで、周りから見るとモチベーションが下がるという悪循環になるのかもしれませんね。

田中滋:その辺の役割分担がかなり曖昧になりました。調子が悪い時期、西選手が自分から「キャプテンをやる」と言いだした試合があったんですけど、そういう試合に限って彼のパスミスで負けてしまうなど、悪循環を断ち切ることが難しかったですね。
江藤:非常にもったいない空回りだね。

島崎:鹿島らしくないですね。今までの歴代の鹿島は、監督さんが厳格でその下で強く結束した組織で戦ってきたのに、それがあんまり見られなかったような気がします。

江藤:堅い試合運びをするイメージがあるだけにね。そうやって崩れてしまったんですね。

田中滋:いろんな問題が今季の後半戦ぐしゃっと集まったって感じですね。

江藤:終盤戦に。

田中滋:例えば、日本人監督って本当に久々じゃないですか(正式な監督としては初代の宮本征勝監督以来22年ぶり。監督代行を勤めていた関塚隆氏から数えても17年ぶり)。そうするとクラブとしての対応も今までと違ってしまった印象があります。?
島崎:よりクラブが言いやすくなってしまった可能性もありますね。

田中滋:そうですね、はっきり言うとそうですね。ブラジル人だと一拍あるわけじゃないですか。通訳っていうのもあるしブラジル人気質もあるし。でも、石井さんはずっと鹿島にいた人なんです。、だから、石井さん自身も「ずっと鹿島にお世話になってきた」という意識をつねに持ってる訳なんですよ。

島崎:そうすると、どうしても主従関係はクラブ側の方が上になっちゃうんですね。

江藤:なるほど、難しいな、それは。

田中滋:そこが傍から見ていると、崩れた感じがしました。

島崎:ただ、そこからちょっと建て直した感はありますよね。

田中滋:そうですね、やっとどうしなきゃいけないかはっきりしてきた感じはしますけどね。

江藤:この前のフロンターレ戦なんて、川崎がやられ放題やられて、よくあんな何度もクロスバーがあそこにいてくれたなみたいな試合で、クロスバーさんありがとうっていう感じだった。こんな試合でフロンターレも勝てるんだなという驚きがありました。鹿島はあの試合ができる程度には上向いていて来たのかなと思ったんですが。

田中滋:そう言えばそうなんですけど、そうでも勝ち切るのが鹿島だったじゃないですか。

江藤:フロンターレ的なサッカーをしても勝つみたいなのが鹿島の印象だったからびっくりしました。

田中滋:そこがひっくり返っちゃったっていうのが、けっこう大きな変化ですよね。

■鹿島はCS出場はラッキー
島崎:なんとかチーム状態を元に戻しましたけど、根底の部分で最高の状態に持っていくのが難しいんですよね。あと、さっきもちらっと言いましたが、チャンピオンシップに出てきますけども、鹿島は浦和や川崎とかなり勝ち点が開いている。そのあたりはどうなのでしょう? どうでもないと思いますけども(笑)。

田中滋:選手からしたらラッキー、このチャンスは逃せないだろって逆に思っています。

江藤:鼻息荒そうですね。

島崎:また川崎は一回もリーグタイトルを獲ったことがない…。

江藤:今季もそう(年間勝点1位を逃す)なりました。

島崎:浦和も一回しかないです。でも鹿島は何回もありますよね。こういうシチュエーションは鹿島が一番得意だというのが今までの評価だから、鹿島自身は感じなくても僕らが感じちゃうのもありますよね。

田中滋:この間、内田篤人選手が鹿島に来たんですけども、アウェーの戦いは鹿島はわかっているから大丈夫っていう言い方をしてました。

江藤:意味深だし怖いな、それ(笑)。

田中滋:プレッシャーがかかるのはホームの川崎の方だって。でも、引き分けだったら川崎なんですよね。

江藤:そうそう。今回はレギュレーション変わったからね。

島崎:PKがないですよね。延長もないのかな。

江藤:ないです。年間順位上のチームが勝ち上がりということで決まっているので。ただ、フロンターレが引き分け狙いでいくことはたぶんない。そうやると絶対勝てないということはみんな知っているから、勝ちにはいくと思います。ただ、今年は2試合とも鹿島さんには非常に苦戦しているので、簡単ではないなと。

島崎:結局、鹿島と川崎の今季成績は何勝何敗なんですか。

田中滋:勝っていないです。川崎の1勝1分です。

■浦和の状態
島崎:あと、浦和(レッズ)の方を言うと、緩やかにチーム状態は下降しています。

江藤:そうなんですか?

島崎:怪我をしている選手がいました。ただそれでも例年に比べると、非常に落ち幅が狭いですね。しかもシーズンを通して安定してて、崩れたのは1stステージの終盤だけです。それこそ鹿島に負けた時期が一番底だったんだけど(1st第15節)。例年に比べれば非常にコンディションもチーム力も戦えるだけの状態にはなっていると思いますね。

江藤:終盤なんだかんだ連勝して、最後引き分けていますけども6連勝している。

島崎:試合内容的には良い時に比べれば問題あるんですが、時間経過による戦い方は非常に大人になってきた。もっと言えば、この前の天皇杯の川崎戦(延長で3-3。PK戦で1-4)は今までのレッズっぽくなっちゃったんで、ああいう形にしちゃいけないと思うんですよね。

江藤:先手を打つけど追いつかれてしまうという試合展開。

島崎:それもそうですが、相手のペースに乗っちゃったというか。前半からあんなオープンな展開は今季の浦和はしていなかったんですよね。

江藤:そう、意外と攻めれるなっていう印象がありましたね、あの試合は。

島崎:ああいうことは絶対しなかった。むしろ、攻めてくるチームに対しては一回ブロックを固めたりします。確か鹿島がレッズに勝った試合は、鹿島が前から追ってきたのかな2トップかな? そこで浦和は潔く良くロングフィードに変えました。ただ、天皇杯の川崎戦はいろんな要因があって、後で話しますけども、あのような戦い方はしてはいけないと思います。川崎に対しては。

田中滋:ちょっとびっくりしましたね。ルヴァンカップは、まさに堅い戦いで獲ったわけじゃないですか。

島崎:今季の浦和はリーグで失点が少ないんです。

江藤:そうなんですよね、1試合1失点以下ですからね(28失点)。

島崎:今季は断然守備のチームなんです。天皇杯の川崎戦のような試合は見せたことがないから、前半終わったところでペトロビッチ監督が激怒したくらいです。そのぐらい悪い試合だったと思います。ただそれでも、後半は持ち直しましたからね、点は取られてしまったけど。

江藤:天皇杯の話ですが、川崎にしてみれば先手を取られてしまった瞬間には負けるなという覚悟を持ちました。でも、意外と追いつけた。それも3回とも。これはちょっと不思議だったんですよね。

島崎:ああいう土俵には乗っちゃいけなかった。ただ川崎とやるとどうしてもああいう流れに、川崎がしますからね。

江藤:あれBSで中継を見てた人はそうとう楽しかったんじゃないのかなと思って。魂こもってたなと。

島崎:川崎はあのようなゲームが一番勝つ可能性が高くなるのかなと勝手に思いましたから。

江藤:打ち合いの方がいいかもしれないですね。打ち合ってくれた方がいいです。

島崎:今季の浦和はほとんど打ち合ったことがないので。強いて言うと、負けたACLのベスト16のソウル戦なんですけども、あのゲームは延長戦を含めて3-3でPKになったんです。あれもやっちゃいけないゲームですよね。だから負けたカップ戦の2試合は、2つともオープンな展開になっでしまいました。

■守備が不安定になった川崎
江藤:殴り合いしちゃったと。ところで川崎は2ndステージに入って崩れた印象があります。

島崎:かなり失速した印象が。

江藤:負け勝ち負け勝ちがずっと続くような状態で。これの一因は、DF陣がちょっと欠けてきたところがありましたね。一つは勝った浦和戦なんですが、井川祐輔選手が怪我をしてしまって、この後チョン・ソンリョン選手も怪我をするんですけど、後ろの要が2枚いなくなったことでちょっとガタついてしまったところがありました。
そこから考えれば、先日の天皇杯は主軸の中村憲剛選手、小林悠選手、大島僚太選手の3選手が居ない中で、チョン・ソンリョン選手も足が万全じゃない中で3回リードされて3回とも追いついて、PK戦で勝ったというのはなかなかすごいなと思いました。

田中滋:その勢いは嫌ですけどね、チャンピオンシップに向けて。

江藤:でしょうね。あの勝ち方で、なおかつ3人帰ってくることを考えると。小林(悠)選手は微妙かもしれないですけど。

島崎:小林選手は微妙なんですか? 準決勝は。

江藤:微妙ですね。10月29日の鹿島戦で受傷して、そこから4週間なので、CS鹿島戦の後にしか戻れないような診断なんです。ただ彼は加圧式酸素室かなんかに入っていて、2時間ぐらい閉じ込められるらしいんですけど、そういうことを続けているので、戻ってこられればとは思ってます。

島崎:もし戻ってきても、休み明けだからコンディション的に微妙だということですね。

江藤:そうなんですよね。そこに大島選手、中村憲剛選手も休んでいる状態があるので、彼らがどれぐらいのコンディション、試合勘で戻ってこれるかっていうのが心配ですね。

島崎:川崎にとってはその3人が、それプラス大久保選手が活躍しないとなかなか難しいですね。

江藤:大久保はなんだかんだでやってくれると思うんですよね。2ndステージ最終節のガンバ戦の前半、中盤にガンガン下りてきて組み立ててまた前に出ていくみたいなことをやっていたんですよ。それがすごく良くて、どうも置き土産的なね。前の若い長谷川(竜也)という選手と19歳の三好(康児)という選手をなんとか使ってやりたいっていうことで。大久保がやってほしいことは自分がやるから、お前らは点を取れみたいな感じで本当に二人とも点を取るんですが、そういう置き土産的なところを大久保はやってますね。

(第2部「各チームのキープレーヤー」へ続く)

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