【戦術コラム】2017シーズン序盤戦の浦和レッズを分析
2017シーズン序盤戦の浦和レッズを考察
2017シーズンの浦和レッズが目指すチームコンセプトを今一度整理しておこう。
1.前線のトライアングルへのクサビパス
2.サイドチェンジ
3.ワイド&センターの使い分け
4.1タッチ、もしくは2タッチでのパス展開
5.コンビネーション
6.複数人による連動
7.攻守転換スピード
8.ダイアゴナル(斜めに走る動き)
9.ハイラインコントロール
10.ハイプレッシング
上記項目は今季の強化キャンプ中で指揮官が選手へ教示していた項目だ。そこで今回は各種項目が2017シーズンの序盤戦で着実に実行されているのかを検証してみたい。
現在の浦和はJリーグ第4節を終えて2勝1分1敗、得点10、失点6の勝ち点7で6位。そしてAFCアジア・チャンピオンズリーグではグループステージ第3節を終えて2勝1敗、得点11、失点5の2位に付けている。
今季の浦和はバックラインを押し上げてチーム全体が敵陣に入り込むハイラインフットボールを貫いている。また相手にボール奪取された瞬間に守備へ移行して局面を狭めてアプローチし、できるだけ敵陣でボールを奪い返す積極的守備も標榜している。その際、ボール奪取後の攻撃移行もスピーディで、相手が守備陣形を整える前にゴールへ向かう姿勢が強い。例えばJリーグ第2節・セレッソ大阪戦の3点目はMF青木拓矢が敵陣でボール奪取して前方を走るFWラファエル・シルバへスルーパスを通して決まったし、第3節・ヴァンフォーレ甲府戦の4点目もMF駒井善成が敵陣でボールカットしてラファエルへラストパスを通している。またACL第1節・ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ戦の2点目は、相手クリアをMF青木が拾ってFW興梠を経由したループパスをFW李忠成が技巧的な左足ボレーで叩いたもの。このように敵陣でボール奪取してゴールへ繋げるパターンは今季の試合で幾つも表出し、結果にも繋がっている。
浦和の攻撃の道筋は中央エリアに固執するダイレクトプレーばかりでなく、ピッチの横幅を活用したサイドアタックも多用する。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は攻撃時に2−3−5のような変則陣形を組み、サイドアタッカーとストッパーのふたりでサイドを攻略するシステムを奨励する。この際に選手が選択するのがダイアゴナルパスと称されるサイドからゴール中央への対角パスだ。
サイドからゴール中央への対角パスパターン
右サイドからの攻防を例にしよう。右サイドアタッカーの関根貴大(㉔)がボールを保持して相手マーカーと対峙。彼の最優先は縦への突破だが、次の選択肢としてゴール中央へのパスがある。この際、相手陣内を斜め前方に横切るダイアゴナルパスを出すのが基本コンセプトで、この際、最初にボールを受けようとする選手(ここでは1トップの興梠慎三㉚)は相手マーカーを引き付けてスルーし、ファーサイドの武藤雄樹(⑨)がボールをレシーブする。この瞬間、スルーした興梠はゴール前へのフリーランニングを始めていて、ボール保持した武藤が興梠へラストパスを通すのが定形のアタックパターンである。また最初のボール保持者である関根がストッパーの森脇良太(㊻)へバックパスし、森脇がダイアゴナルパスを発動するパターンもある。ただ今季これまでの公式戦7試合(Jリーグ4試合、ACL3試合)の中で、このパターンから生まれたゴールはまだない。
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