メンバー総入れ替えのターンオーバー。出番を得た控え組で光るプレーを見せたのは【島崎英純】2017天皇杯2回戦・グルージャ盛岡戦レビュー

待望の出番で最も個性を発揮したのは

浦和レッズの今季天皇杯初戦の相手はJ3に所属するグルージャ盛岡。天皇杯は異なるカテゴリーのチーム同士が対戦し、選手もプロとアマチュアが混在するオープントーナメント。各カテゴリーのスケジュールが異なるうえ、下部カテゴリーのクラブはジャイアントキリングを目指してモチベーションを高めることから番狂わせが多く、浦和もかつては様々なチームに苦杯を舐めてタイトルを逸した経験がある。

浦和は3日前の6月18日にJリーグ第15・ジュビロ磐田戦を戦い2−4で敗戦していた。また今試合から中3日でJリーグ第16節、アウェーのサガン鳥栖戦が控えていることで、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は計画的にターンオーバーを用いた。これまでのシーズンでもリーグ戦の間に設定された天皇杯のゲームで選手を総入れ替えすることがあり、カップ戦でバックアッパーにアピール機会を与える手法はこれまでと同様である。

GKはAFCアジア・チャンピオンズリーグ・グループステージ第6節のFCソウル戦で先発した榎本哲也が浦和移籍後2試合目の出場を果たした。そしてバックラインはリベロに那須大亮、左ストッパーには榎本と同じくFCソウル戦に続き2試合目の出場となる田村友、そして右ストッパーは本来MFの長沢和輝が務めた。ボランチは青木拓矢と矢島慎也のコンビ。右MFは今季初出場の平川忠亮がキャプテンマークを巻き、左MFに菊池大介。前線トライアングルは1トップ・ズラタンに右シャドー・高木俊幸、左シャドーにはFCソウル戦で途中出場し、左膝前十字靭帯損傷完治から復帰後初の先発出場となった梅崎司が入った。

公式戦出場を果たせず、普段の練習や数少ないトレーニングマッチでコンディションを維持する必要のあるバックアッパーにとって、公式戦は自らの力を誇示する重要な場である反面、本来の力を十分に発揮するのが難しい場でもある。一括りに試合勘という言葉で括るのは阻まれるが、相手選手との間合い、90分間の力の入れどころ、試合展開を読む思考、ボディコンタクトの慣れ、味方選手との連係など、実践で初めて感覚を掴める事象はたくさんある。しかもチームで組むメンバーはほぼ練習では試していない布陣で、いわゆる『ぶっつけ本番』だ。

例えば、今回長澤は右ストッパーのポジションを任された。彼は練習時の紅白戦や大学生とのトレーニングマッチで同ポジションを務めたことがあるものの、公式戦でのプレーとなる当然勝手が異なる。ひとしきり彼のプレーを観察したが、戦況によって引き込まれるように中央エリアへ寄っていく所作が興味深かった。ストッパーの責務を失念する動きを指摘するのは簡単だが、事はそれほど単純ではない。

そもそもペトロヴィッチ監督の課す各ポジションの役割はアブノーマルなものだ。慣れないポジションに加えて変則的な役割を課せられた長澤が戸惑いを見せるのはある意味当然なのだ。一方、後半から右ストッパーへシフトした平川は何の違和感もなく変則的なプレーを実行していた。現チームの戦術、戦略、メソッドを熟知しているか否か。各選手のプレー傾向を観察するだけでそれが如実に表れる。これはペトロヴィッチ監督のチーム特有の現象だろうと思う。

そんな中、今試合で最も個性を発揮してチーム戦術に順応した選手に

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