【コラム】日々雑感ー青木拓矢『ボックストゥボックスの挟持』

縦に駆ける男

 Jリーグ第28節・ベガルタ仙台戦の後半、青木拓矢は敵陣ゴールラインまでボールを持ち込むも相手に阻まれ、それでも懸命にマイボールを死守してCKを得たと確信した。しかし副審、主審の判定は相手ボール。いつもはそれほど感情を露わにしない青木だが、このときばかりは両手を広げて抗議の意を示し、承服できないと声を上げた。

 このシーンで際立つのは彼が晒した熱い感情ではない。アンカーにして、相手陣内最深部まで侵入した判断、その運動量に舌を巻いた。直前には味方陣内でパスをさばき、相手カウンターに備えて味方バックラインと守備ブロックを築き上げていたのだ。かつて、浦和の選手でこれほど広範囲に影響を及ぼすMFがいただろうか。

 浦和時代の長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)はボランチというよりトップ下で才能を発揮する攻撃的MFだった。また鈴木啓太は究極の守備的MFで、自らではなく人を活かすボランチとして希少な能力を備えて日本代表まで上り詰めた。最近では柏木陽介がダブルボランチの一角として多大な力を放散させてきたが、彼も攻撃面に秀でた選手。唯一、青木と”近似種”と言えるのは現キャプテンの阿部勇樹だが、36歳になった彼は今、センターバックの要として自軍の守備組織を引き締める役目を担っている。

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