松沢呉一のビバノン・ライフ

同じ自然物を撮っても著作権侵害にはならない – 風景写真の著作権 1 [ビバノン循環湯 5](松沢呉一) -2,696文字-

昨年11月にスタートして以来、「ビバノンライフ」で出した原稿のうち、ダントツでトップのアクセスは「ついにJASRACを追い込むか? ファンキー末吉と江川ほーじんの闘いに決定的な新兵器が登場」です。当たり前のことを書いただけなのになぜ? 「カスラック」だのなんだのと難癖みたいな批判ばかりが溢れているため、当たり前のことを書くだけで斬新に見えたりするんですかね。全然わからん。もしかすっと、著作権に関心のある人が多いのかと思って書いた「テレビ局はtwitterの投稿画像を無断で使えるか」「テレビ局が無断で他者の著作物を利用する方法」は驚くほどアクセスがなく、これも納得できん。面白いテーマだったと思うんだがな。

たぶん興味のある人は少ないと思いますが、このあとの展開のため、メルマガに書いた著作権関係の原稿をこちらで再録しておきます。あくまでこれは著作権法に基づいた是非論です。モラルはまた別。次回、これを踏まえて法とモラルとを分けて考えた方がいい理由を説明していきます。

「ビバノンライフ」用に一部書き直しています。

 

 

 

自然物を撮った写真の著作権は限定的にしか認められない

 

vivanon_sentenceそんなに話題にはなっていないようですけど、ちょっと面白い判決です。

 

 

マイケル・ケンナ氏の写真「松島」の著作権、控訴審で大韓航空勝訴

2014年12月04日15時22分

英国の写真作家マイケル・ケンナ(Michael Kenna)氏の写真「松島」の著作権の控訴審裁判は、大韓航空の勝利に終わった。ソウル高裁民事5部(イ・テジョン部長)は4日、ケンナ氏を代理してコングンヘギャラリー(GALLERY K・O・N・G)が大韓航空を相手取った控訴審で「ケンナ氏の松島の写真著作権を侵害していない」と判決した。裁判所は「写真の被写体が自然物の場合、誰が撮影しても類似の結果が出る可能性が大きく、制限された範囲内で著作権を認めなければならない」と明らかにした。

ケンナ氏は2007年に江原道三陟市遠徳邑(カンウォンド・サムチョクシ・ウォンドクウプ)のある島を撮影して「松島」という題名で発表した。紛争は2011年に大韓航空が、同じ場所でアマチュア作家が撮った写真を広告に使ったことから始まった。韓国でケンナ氏の代理人をつとめるコングンヘギャラリーは、広告の中の写真が「松島」を盗作したとして昨年7月に3億ウォンの損害賠償を請求したが敗訴した。当時、1審では「すでに存在する自然物や風景などは被写体を撮影する時にいつ、どこで、どんな構図で撮影するかを選択するのはアイデアに該当し、著作権保護対象にはなれない」と判断した。控訴審では、大韓航空がケンナ氏の経済的利益を侵害したのかも争点になったが「財産上の損害が発生したとみることはできない」とした。

中央日報日本語版

 

 

2点の写真はここに出ています。

 

 

スクリーンショット(2014-12-30 6.35.57)

 

 

まさに、これが報道のための著作物の利用です。報道は、報道機関だけが認められるものではないので、「ビバノンライフ」でこれを転載することもできますが、「報道」の側面よりも、この場合は批評のための引用でしょう。

たしかに角度や構図はクリソツ。しかし、これは著作権法で保護されない。合理的な判決だと思います。

 

 

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