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松沢呉一のビバノン・ライフ

大橋仁の釈明と「モラル」について ・・・[娼婦の無許可撮影を考える 4 ] 松沢呉一 -2,526文字-

2015年01月09日18時25分 カテゴリ:セックスワークを考える連載娼婦の無許可撮影問題連載肖像権


娼婦の無許可撮影を許したのは、この社会の「良識」だった [娼婦の無許可撮影を考える 3 ]」の続きです。

大橋仁の問題は手続のミス

 

vivanon_sentence大橋仁の釈明が出ました。

人のことは言えませんけど、文章なげえよ。読むのが面倒でしょうから、必要なところだけ抜き出します。

 

東京都写真美術館での「スティルアライブ 新進作家展」に於いて2007年11月~2008年2月迄展示された、タイの金魚鉢で撮影した3点の写真については、被写体の方の事情や諸般の事情を思い合わせ、今後、新たな展示や掲載を差し控えたいと考えます。

メッセージ

 

これ以外の弁明をいくらやっても、「はいはい、あなたの考えていることは素晴らしい。でも、撮影された側には関係ないよね」でおしまい。相手のある話なので、自分の思いをいくら語っても意味ないっす。この上、冒険談はいらんよ。

その思いが実現できたんだから、撮影直後に「私はこんなに素晴らしいことをいっぱい考えている写真家なので、ついては皆さん、公開することを承諾してちょ」と事後承諾を求めればよかったわけです。批判をかわすためなのか、この機会を利用してなお自己顕示欲を満たしたいのかなんなのかわからんですけど、今になって、そうも言葉を費やすのであれば、「その場でやれ」ってことかと思います。

撮った瞬間は承諾がないですが、こういうのは事後でもOKでしょう。金を払えと言われれば払うまで。この人、いっぱい金をもっているわけでしょ。AV嬢やAV男優には惜しみなく金を出したことを自慢しているのに、どうしてタイの娼婦には出し惜しみをするのでしょう。もちろん、事後の承諾は得られないこともあるわけですけど、その場合は公開しない。次の機会に賭ける。

結論を言えば手続をミスったってことであり、あとのことはどうでもいい。そのことを彼はなおよくわかっていないのではないか。

展示、掲載をしないのは当然として、これが最善の策とは思えないでいます。そうも思い入れがあるのであればいよいよ拙劣な方法なのではないか。

以下は、この釈明が出る前に書いてあったものです。

 

 

小沢昭一に見るモラル

 

vivanon_sentence『ドキュメント綾さん』という本があります。小沢昭一が敬愛するトルコ嬢の話を聞いたもので、小沢昭一は相槌を打っているだけ。徹底して聞き手に回っています。

雑誌「芸能東西」に連載され、単行本は「芸能東西」を出していた新しい芸能研究室から発行されています。そのあと新潮文庫になるのですが、絶版。

この本を絶版にしておくのは惜しく、「もう一度文庫を出せばいいのに」と某社の編集者に言ったら、「小沢さんに聞いたんですけど、綾さんはとっくに引退して連絡がとれない。あの本は綾さんの本なので、無断では出せないと言っていた」とのことでした。

法律上は正しいですけど、それを読んでも綾さんはどこの誰か特定もできず、連絡がとれたら印税を払う方法でいいんだと思います。モラルとしてはそういうもんでしょう。

すでに書いたように、アバウトでいい部分はアバウトにしておいてよくて、とくにこの場合は、公開することには合意しているのですし、文庫にも一度なっているんですから、本人を含めて、これを責める人はいないと思います。

その後、ちまく文庫から出ているので、連絡がとれたのか、「もういいだろう」ということになったものと思われます。時間が経過し、なおかつ出す意義があるものについては、これでよし。

しかし、時間が解決するものと、しないものがあるんだと思います。

 

 

大橋仁は手続を最初からやり直すべし

 

「娼婦の無許可撮影をするゲス写真家は今に始まったことではない」で取り上げた『危険な毒花』『月蝕』も、今現在、それを見た時に「記録として意味がある」という評価は当然あると思いますし、私もそれには同意できます。今となっては赤線の女たちを撮影することはできないわけですから。

記録としての意味を認めることができるのは、時間経過により、手続の瑕疵がさして問題にはならなくなったということが前提にあります。法的に肖像権はいつ消 滅するのかについ ては国内外とも学説は分かれていて、「亡くなるまで」という説から「消滅しない」という説まであるのですけど、どこの誰かわからなくなったらそれまでとも 言えます。

 

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