松沢呉一のビバノン・ライフ

女子高生が男湯に入ってくる銭湯[銭湯百景 2](松沢呉一) -2,349文字-

泉鏡花の随筆「銭湯」と男女混浴禁止令」の続きです。

 

 

 

共同浴場でも個人化が進行している時代

 

vivanon_sentence泉鏡花の「銭湯」から一世紀経った今では、男湯に女が入ってくるのもまずかろうと思います。

私が大学生の頃は風呂なしのアパートに住んでいたため、銭湯に通っていたのですが、お母さんが子どもをお父さんに引き渡すために男湯に入ってくるようなこともあったと記憶します。もちろん着衣であり、一瞬ですけど、今はこれも無理じゃなかろうか。

IMG_4437これができるのは古い銭湯です。男湯と女湯の間の壁に戸があって、そこから行き来ができます。しかし、今は男湯と女湯の間を行き来できない構造の銭湯が多いものです。壁の上も空いていないので、男湯と女湯の間で「そろそろ出るよ」と声を掛け合うこともできない。

番台のある銭湯も減っています。番台を嫌うのはもっぱら女性でしょうけど、新装の銭湯では、カランに仕切りがあって、隣が見えないようになっていたりもします。個室化とまでは言わないですが、個人スペースが確保される方向になっているわけです。その方が気兼ねなくチンコを洗える人たちのための配慮です。

チンコをただ洗うだけだったら恥ずかしくないとして、全身の毛を剃っている人もいますので、見られるのは照れくさいのでしょう。

こういう方向に進んでしまった今の銭湯においては、お母さんが子どもを連れて男湯に入ってくることも奇異な印象にならざるを得ません。ばあちゃんだったらいいと思いますけど、それさえも嫌う人たちがいそうです。

しかし、今の時代にもいろんな銭湯があります。

 

 

女子高生が入ってくる銭湯が東京に存在していた

 

vivanon_sentence初めて行った銭湯でのこと(上の写真とは無関係)。古い木造ではありませんが、ここは番台があります。

「そろそろ出るか」と思って、洗い場からふと入口を見たら、若い女が入ってくるのが見えました。どういうこと? 女みたいに見える男もいますけど、どう見ても若い女です。私は老眼ですけど、老眼でも遠くは見え、見間違いではありません。

 

 

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