松沢呉一のビバノン・ライフ

SMAP裁判に見るインタビューの著作権- ゆるゆる著作権講座 2-(松沢呉一) -3,029文字-

本日1月22日、20時から、ロフトラジオに出ます。ロフトラジオはいきなり先週から始まったもので、今日が2回目。打ち合わせも何もなくて、何を話すのか知らんですけど、ロフトの平野さんも風呂が好きなので、銭湯の話かな。

 

 

ビバノンライフ♪湯気の向こうに何が見える?&BURSTが復活するって噂だぜ…

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【ゲスト】
松沢呉一(コラムニスト / ビバノンライフ
ピスケン(BURST編集長)
笹原雄一(キャッシュボックス代表)

【出演】
平野悠(ロフト席亭/旅人ライター)
椎名宗之(ROOFTOP編集長/LOFT BOOKS)
加藤梅造(ロフト文化部/デモ担当)
石崎典夫(ロフトプラスワン店長)
成宮アイコ(ロフト新人/こわれ者の祭典)

これにからめて、本日の「ビバノンライフ」は話し言葉の著作権についてです。

 

 

話し言葉にも著作権は存在し得る

 

vivanon_sentenceインタビュー原稿の著作権について、「大橋仁の釈明とモラルについて」で軽く触れましたが、もう少し丁寧に説明しておきます。

ちょっと前に津田大介が、ラジオ番組をそのまま文字起こししているサイトに立腹した文章をFacebookに出していました。

ゴミ情報の海から宝石を見つけ出す これからのソーシャルメディア航海術 (PHPビジネス新書)ありますね、そういうサイト。無断で転載するのは法的にもモラル的にもアウトです。ある発言について紹介したいのであれば、引用の範囲でやればいい。他者の著作物を無断、無料で使える引用という方法があるのに、そのまま転載するのは怠慢です。まして、それでPV稼ぎをやっているのは卑しすぎようかと思います。

津田大介が書いていたのは、それ自体ではなく、それ以降の作業についての腹立たしさについてです。こういう手法が批判されて、許諾を求めるようになってきているのはいいとして、その際に文章の手直しをすることになって、それが腹立たしいと。

話し言葉は、文脈を踏まえ、また語調などもとらえて、聴く側が頭の中で補完したり、省略したりしてスマートに意味を受け取っていますが、これをそのまま書き起こすと、言葉が足りなかったり多かったり、主語と述語がチグハグだったり、語尾の癖がくどかったりします。

私も、自分が出た対談や座談会のゲラを見て、自分の話し言葉をそのまま起こしたものだと頭が悪そうで死にたくなることがあります。話し言葉と書き言葉は別のものであり、手を加えないと読むに耐えないものになりやすいのです。

なにが悲しゅうて、タダで使われる側が手直しまでしなければならないのかと腹立たしく思うのは当然でしょう。

この場合は、出された側が「ふざけるな、すぐに消せ」と文句をつけても、「100万円くれ」と請求してもいいわけですが、自分の言葉を無断で出されたものに文句をつけたり、事前の申し込みを拒否をしていいのだと知らなかったと書いている人たちもいて、そちらに私は驚きました。

話し言葉にも当然著作権はあります。さもないと、講演会やテレビ、ラジオの発言を無断で本にして売っていいことになってしまいます。一所懸命書いた本と同じような内容の本が無断で出されてしまったら、物書きはおまんまの食い上げです。タレントだって困りましょう。

 

 

インタビューされる側も著作権を所有している

 

vivanon_sentenceインタビューも同じです。言葉を語った側に権利があります。創作性がない言葉は別として。

同時に原稿としてまとめた側にも権利があります。

読みにくいですから、インタビュー原稿は話した言葉をそのまま出すのでなく、ライターがまとめ直しています。言葉を加えたり、削ったり、文意がわかりやすいように、あるいは展開が面白くなるように順番を入れ替えたりします。

「これこれこうじゃないですか」と質問をして、相手が「はい」としか言ってない場合、「これこれこう」を本人が発言したように処理をすることもよくあります。言葉にすることが苦手な人のインタビューでは、こういうテクを使わないと、インタビュー原稿としては成立しにくいのです。

その作業を経た表現にも創作性が生じ得ますから、原則として、インタビュー原稿は共同著作物となり、インタビューをされる側と、それを原稿にした人の両者が権利を持ちます。

 

 

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