松沢呉一のビバノン・ライフ

著作権保護期間は死後70年へ- ゆるゆる著作権講座 7-(松沢呉一) -2,063文字-

いよいよ保護期間延長か?

 

vivanon_sentence以前から言われていた著作権保護期間を70年に統一する話は着々と進んでいるようです。

 

著作権保護は原則70年で調整へ TPP

TPP=環太平洋パートナーシップ協定を巡って、交渉参加12か国は、これまで難航していた映画や音楽などの著作権を保護する期間について、公開や作者の死後から原則70年とする方向で調整を進めることになりました。

TPP=環太平洋パートナーシップ協定を巡って、交渉参加12か国は日本時間の2日までの日程で、首席交渉官会合をアメリカで開きました。
今回の会合では、▽映画や音楽、小説などの著作権をはじめ、医薬品の開発データといった知的財産を保護する期間や、▽公平な競争条件の確保に向けた国有企業に対する優遇措置の是正など、交渉が難航している分野を中心に意見が交わされました。
その結果、著作権を保護する期間について、日本を含む各国がアメリカの主張に理解を示し、公開や作者の死後から原則70年とする方向で調整を進めることになりました。

NHK

 

 

「著作権保護期間は死後20年もあれば十分」に書いたように、私は50年だって長すぎると思ってますから、言うまでもなく延長には反対です。

50年に延長された際も、あるいは今回の延長も、延長を主張する著作権保護期間―延長は文化を振興するか?人たちの根拠のひとつは「孫の代まで」ということなのですが、どんだけ強欲。

仕事で亡くなった場合、会社がある程度家族の生活保障をしてくれるところもあるでしょうし、保険もあるわけですけど、大黒柱が亡くなったら、いきなり家族は路頭に迷うこともあります。なんで著作者の遺族はそうも手厚く扱わなければならんのでありましょう。子どもが成人するまでで十分。なんだ、孫って。創作に孫が寄与したんか。

とは言え、これはもう止められそうにない。米国、オーストラリア、シンガポールなど、TPP加盟国の半数は70年に延長しており、日本も追従せざるを得ないのでしょう、おそらく。著作物の輸入過多である日本にとってはいいことはないんですけどね。

あとは非親告罪化がどうなるのか。つまりは、侵害された側の告訴なくして著作権侵害が犯罪となるわけです。「STAP細胞騒動に学ぶべきこと」に書いたように、著作権侵害は、話し合いで解決する方法も現在はありですが、非親告罪化が実現すると、侵害された側がどう思っていようと、いきなり国家権力が介入してくることになります。

これには反対した方がいいと思うなあ。そのためには著作権についての理解が必須です。JASRACの批判もそうですけど、なにかにつけ最低限の理解が必須。

 

著作権は財産権であり、人格権はまた別

 

vivanon_sentence

「著作権保護期間は死後20年もあれば十分」について、Facebookでのコメントを見ていて気づいたことですが、著作権について論じる際に、財産権と人格権の違いが理解されていないことによる誤解や混乱が生じていそうなので、改めて著作者人格権について説明する必要を感じました。

いまさら著作権の保護期間は20年あればいい」との主張したところで延長の動きに対抗できるはずもないのですが、これに対して、「死後20年すると、手紙や日記が公開されてしまうのはどうなんか」「死後20年すると、他の人の名前で発売されるのはどうなんか」「死後20年すると、作品が切り刻まれてしまうのはどうなんか」という危惧が生ずるようですが、今だって死後50年でこういうことが起きていないように、これらは著作権とは別の権利で守られています。人格権です。

これは親告罪、非親告罪とも関係していきます。著作権侵害は親告罪だと言われますが、人格権については一部例外があります。つまり、現在も非親告罪です。

next_vivanon

(残り 542文字/全文: 2086文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ