松沢呉一のビバノン・ライフ

ネットメディアを出版界は笑えない-モラル違反・法律違反の出版物(松沢呉一) -2,595文字-

BuzzNewsに見る著作権に無知なメディアの行く末

 

vivanon_sentenceイヤなニュースが多い中、珍しくいい知らせ。

 

 

サービス終了のお知らせ

 平素より、BuzzNewsをご利用いただき、誠にありがとうございます。 皆様にお楽しみいただきました当サイトですが、2015年2月6日をもってサービスの提供を終了させていただきました。

当サイトは、2014年2月より運営を開始し、すきま時間に楽しんで頂くことができる記事を掲載して参りました。以来多くの方にご愛顧いただきまし たが、現在では同様のサービスが多くなり、一通りの役割を終えたと判断いたしました。我々としましても、今は、当サイトで得た経験を元に、新たな価値ある サービスを生み出すことに集中すべきであると考え、サービスの提供終了という結論に至りました。なお、運営の中で著作権侵害に関するご指摘があった件に関しましては、無事に和解に至り、その過程で多くの事を学ばさせて頂きました。ご指摘をくださった方々ありがとうございました。また、ご迷惑・ご心配をお掛けした皆さまに深くお詫び申し上げます。

運営開始から約1年間という短い期間ではありましたが、本当に多くの方にご愛顧いただくことができました。当サイトを支えてくださったファンの方には、関係者一同、深く感謝するとともに、心より御礼申し上げます。

BuzzNews編集部

BuzzNews

 

 

この告知文の中にある著作権侵害ですが、これを追及した経緯を書いた「悪質バイラルメディアにはどう対処すべき? BUZZNEWSをフルボッコにしてみた」は素晴らしい内容でした。

クリエイターのための著作権入門講座[改訂第2版]これを読むと、BuzzNewsはホントに著作権に無知だったよう。交通ルールを知らずに車の運転をするようなもんですよ。本一冊買ってきて読めばいいだけなのにさ。本を買わなくても、検索すればだいたいのことはわかるのにさ。

それに対してヨッピー氏が腹を立てつつ教えてやっているところに感動しましたよ。パクられた側がなんでそんな手間をかけなきゃならんのかって話。今どき義務教育でも、著作権について最低限ことは教えているはず。それすらさぼってきたような人間がパクリで金儲けしていいわけがない。

しかし、それをまた原稿にして楽しませる。他の記事もよく読んでますけど、彼はホントにいいね。

それに引き換え、BuzzNewsはライターもライターだわ。

文章でも漫画でも写真でも音楽でも絵でもそうですが、表現で金を得ている人たちは著作権をまずは知った方がいいし、知らないと恥をかき、払わなくていい金を払うことにもなります。ルールを守ればタダで使える方法もあるんだから、知っておいて損はない。

つうことで、「ゆるゆる著作権講座」も読んでおくといいと思います。

 

 

『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった』に見られるモラル違反

 

vivanon_sentenceネットメディアはロクなもんじゃない。パクリはやるわ、ウソ話を平気で書くわ。対して、出版界はしっかりしている。と言いたいのですが、言えないのが悲しい。

出版界でも山のように著作権侵害は起き続けています。どうやってもうっかりは起きるわけですが、うっかりでは済まないケースも多数あります。

そんな例を見てみましょう。

 

 

工藤美代子/加藤康男『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった』はどんなトリックの上に成り立つ本か

1923年9月1日に発生した関東大震災は、10万人を超える死者を出す大惨事だった。その上、この悲惨な天災に人災を加えたのが、朝鮮人虐殺事件だ。震 災後の混乱の中で、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」「朝鮮人が放火している」といった流言がひろがり、それを真に受けた人々、あるいは軍などによって、多くの朝鮮人が虐殺された。正確な数は不明だが、歴史学の世界では、数千人規模と見るのが一般的だ。フジサンケイ系の育鵬社も含め、たいていの中学の歴史教科 書にも記述がある(くわしくはこちらを参照→20分でわかる「虐殺否定論」のウソ ◉「保守派の歴史学者も虐殺について記述」)。

ところが、この史実を真っ向から否定する人たちがいる。ノンフィクション作家の工藤美代子氏と、その夫の加藤康男氏である。2009年に工藤名義で『関東 大震災「朝鮮人虐殺」の真実』(産経新聞出版)が刊行され、2014年にはそれに加筆した『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった』(WAC)が、今度は加 藤康男名義で刊行された。後者は前者の「新版」と銘打っている。実際、内容も若干の加筆を除けばほぼ同一だ。
 (略)
ではこの本は、どんな手品によって成立しているのか。少し長くなるが、そのトリックの「タネ明かし」をお見せしよう。

 

リンク先をぜひ見ていただきたい。この本についてのトリックがわかりやすく説明されています。こういうトリック、ズルを重ねて初めて成立する本です。つまり論は成立していないってことです。

常識が欠けていたり、知力が欠けていたりで、こういう本を書いてしまう人はどうしても出てきてしまいます。だからこそ、内容を精査して、おかしなところを直させるのが出版社の役割のはずです。それでメシ食っているんだから当然。

しかし、そのまんま、平気で出せる出版社が現に存在しています。この場合は産経新聞出版とWACです。WACは雑誌「WiLL」を出しているワック・マガジンズの親会社です。担当編集者が気づかないはずのないレベルのルール違反です。おそらくはわかった上で出しているのでしょう。気づいていないなら、それもまた問題ですし。ネットメディアと同等の編集者であると推測できます。

 

 

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