松沢呉一のビバノン・ライフ

風営法改正に異議を唱える署名スタート-今度こそ広範な議論を(松沢呉一)-2,400文字-

 なぜこうも法律を理解しない人たちが多いのか

 

vivanon_sentence単行本の作業が始まりつつありまして、昨日、編集者と本のテーマ出しをしていたのですが、「なぜこうも法律を理解しない人たちが多いのか」という話になりました。厳密な解釈になってくると専門家の領域になってきますけど、条文に目を通すことさえしない人たちが多いのです。

それでいて賛成だとか反対だとか言っているのはおかしいでしょ。正確に理解できていないかもしれないのだから。

「ビバノンライフ」では、このままだと可決されてしまう風営法改正案のどこがどう問題なのかを事細かに論じてきて、要旨は無料部分で極力わかるようにしてきたのですが、あんまり読んでくれる人はいませんでした。ゲイバーの摘発についても同様です。渋谷区のパートナー条例もそうで、可決されてもなお正確に内容を把握できている人は多くはないのではないでしょうか。法律を敬遠する人が多すぎかと思います。

クラブ業界の中には、問題点の抽出をするだけでも反発してくるアホがいまして、改正案を理解せずに、「朝まで営業ができる」という点だけで歓迎している人がおそらく多いのでしょう。クラブにとってはそうだったとしても、他業種はたまったものではない。

しかし、当の深夜酒類提供営業飲食店からの動きもなくて、「もうどうしようもないな」というのが私の結論。クラブにも行かず、酒も飲まず、最近はライブハウスにも行かない私としては、そんなに困ることもないので、まあいいかと。

ということで、この話は終わりにしていました。

 

やっと風営法改正案見直しの動きが!!

vivanon_sentenceところが、ここに至って、やっと改正案を見直すべきという動きが出てきました。まだまだ世の中、捨てたもんじゃないなと感激している次第。

スクリーンショット(2015-04-04 17.08.38)

今回もLet’sDANCE署名推進委員会が呼びかけに加わってます。ここまでの経緯があるので、踏み切るには逡巡があったと思うのですが、この判断は全面支持です。

私が書いてきたことは細かすぎて理解しにくいかと思うので、ざっくり以下のまとめを読んでください。

 

「遊興」の定義が不明確です。現行法の解釈によると、「客に歌、ダンス、ショウ、演芸、映画その他の興行等」「生バンドの演奏等」を 見せたり、させる行為などとされており、この解釈通りになれば、ダンスが規制対象として残るだけでなく、生バンド演奏などを行うライブハウスまで規制の対象とされかねません。風営法から「ダンス」が削除されても、「遊興」という形でさらに規制対象が拡大されることが予想されます。

さらに、「特定遊興飲食店営業」は、「許可」を取ることが必要です。同じような業態である「深夜酒類提供飲食店営業」が、「届出」でよいことに対 して不公平です。その条件は現行法に準じるとされるようで、いまでも広すぎる面積要件(66平方㍍)などが障壁となって「許可を取りたくても取れない」小 規模事業所は引き続きグレイな営業を余儀なくされます。現行法の「深夜遊興の禁止」規定には刑事罰がないのに、改正案では刑事罰を設けるとされています。 新たに設ける照度規制や立地規制なども、その要件が不明確で、現在「3号営業」の許可を取得している事業所でも許可が取れなくなる場合すら想定されます。

NOON訴訟判決を活かした風営法改正を求めます!

 

つまり、クラブは風俗営業ではなくなる代わりに、新設される「特定遊興飲食店営業」としての許可が相変わらず必要なのです。ダンス営業は今までと同じく風営法の規制対象であることに注意。その上で、朝まで営業できる可能性が出てきたに過ぎません。

「特定遊興飲食店営業」を新設することによって、今度は深夜まで営業しているライブハウス、スポーツバー、トーク居酒屋といった業態も許可が必要とされます。深夜酒類提供営業でも、深夜の遊興営業は禁止されていますが、これは罰則がないのに対して、今後は無許可営業として摘発されることになります。

無許可営業としてガールズバー、ゲイバーが摘発されているのと同じように、それらの業種が摘発され、ロフトの平野さんや加藤梅造君が連行されるところがテレビで流されるわけです。ホントにそういうことになり得る改正案なのですよ。深夜営業をやめればいいことですけど。

 

どういう改正だったらいいのか

 

vivanon_sentence深夜酒類提供営業の飲み屋が引き続き黙っているんだったら、改正による不利益は受け入れればいいでしょう。しかし、クラブのために他業種に影響が出るのはまずい。私は、それを踏まえて、「全業種がハッピーな法改正の方向」で、「どう改正するのがいいのか」についての考え方を示しました。

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