松沢呉一のビバノン・ライフ

東京レインボープライドと「パレードへようこそ」(松沢呉一)-3,224文字-

4月26日は東京レインボープライド・パレード!

 

vivanon_sentence本日4月25日(土)から、レインボーウィークがスタートです。そして、明日はパレード。

以下は去年の様子。

 

IMG_0171IMG_0209

IMG_0248IMG_0288

 

 

写真左下はHIV陽性者ネットワーク「ジャンププラス」の長谷川博史代表と安倍昭恵さん。いろんなことを言われてましたけど、昭恵さんは以前からHIVに取り組んできていますから、ここにいるのは少しもおかしくはない。

写真右上は、手前から石坂わたる中野区議、上川あや世田谷区議、石川大我豊島区議(いずれも今回候補です)です。区議選や区長選に、あんまり興味のない方々もいらっしゃるでしょうけど、昨年はレインボウィークに参加していた区議や区長も多く、私も昨年は、中野区で開かれたイベントを観に行きました。

区政レベルでもできることがいっぱいあります。投票に行くのもお忘れなく。

 

 

映画「パレードへようこそ」とLGSMについて

 

vivanon_sentenceこれに先立ち、先日、映画「パレードへようこそ」を観てきました。

 

 

 

 

1980年代前半にイギリスのポピュラー音楽を聴いていた人たち、とりわけパンク、ニューウェーブ系のものを聴いていた人たちは、遠い国の炭鉱のストライキを身近なものとしてとらえていたはず。支援のレコードが多数出ていて、テストデパートメントのように、炭鉱の合唱隊をフィーチャーしたレコードを出ていたバンドもいました。

しかし、同性愛者のグループLGSM(Lesbians and Gays Support the Miners)が炭鉱夫やその家族をサポートし、そこで生まれた連帯によって、今度は炭鉱夫とその家族が同性愛者をサポートした事実について、私はまったく知らずにいました。それもそのはず、本国イギリスでも、この話は半ば伝説化された物語として活動家の間で語り継がれてはいても、広く知られたものではなかったようです。

おそらくゲイ・コミュニティにとってはHIVとの闘いが熾烈なものとなりつつあり、この話を振り返る機会がなかったのでしょうし、炭鉱のストライキが収束していったことも忘却に拍車をかけたのだと想像できます。

しかし、この話に魅せられた人物がいました。脚本を担当したステファン・ベレスフォードです。

彼が脚本を完成させることができたのは、LGSMが自ら制作したドキュメンタリー・フィルムが残されていたからでした。

 

 

 

 

ここにクレジットされた名前をFacebookで探してインタビューを重ね、あの映画ができあがったのです。この辺の経緯は英ガーディアンの記事を参照のこと。

 

 

LGSMとレッド・ウェッジをつなぐ人物

 

vivanon_sentenceLGSMの中心人物であったマーク・アシュトンは、この行動のあと、ビリー・ブラッグ、ポール・ウェラー、ジミー・サマーヴィルらによって組織された「レッド・ウェッジ」の活動に参加します。

 

 

 

しかし、マーク・アシュトンは、1987年、エイズの日和見感染であるニューモシスチス肺炎で死去。

その死は映画のラストでクレジットされていて、映画の中でもその伏線はあるのですが、この映画で流される涙は、悲しみによるものではなくて、困難をひとつひとつクリアしていくことに向けられています。この時代に困難を超えていった人々がその後HIVに倒れていったことを想起しないではいられないのも事実ではあれ。

では、これと同じことが今の日本で起きるかと言えば起きないでしょう。たとえば沖縄の反基地闘争とLGBTの団体が連帯することが可能かどうか。どこかの労働組合と連帯して、パレードにその組合旗がはためくことが歓迎されるのかどうか。

当時は多くのミュージシャンが炭鉱のストライキを支持していました。また、レッド・ウェッジは労働党に投票することを目的にしたものであったように、労働者階級出身のミュージシャンたちが政治的姿勢を打ち出すことに躊躇がなく、リスナーもそれを受け入れる環境がありました。

LGSMが主催したコンサートで、一夜にして日本円で100万円を超える金を集められたのは、ブロンスキービートが出演したからです。彼らはゲイであることを早くから公言していました。

日本でチャートを賑わすミュージシャンで、いったい誰が同性愛者であることを公言し、同性愛の団体が主催するストライキ支援のコンサートに協力するのかって話。

この映画に描かれているように、決して社会は同性愛者に寛大ではなくて、露骨なバッシングを受け、HIVがそれに拍車をかけている時代でもあって、外からの支援を求めていたのは炭鉱夫も同性愛者も同じでした。すでにそのような時代ではなくなったイギリスにおいても、同じことは起きにくいだろうと想像します。

 

 

「パレードへようこそ」で見るべきところ

 

vivanon_sentenceそういった社会背景の違いがありますから、あのまんまの方法がこの日本で有効にはならないとは言え、困難を前にしてもめげない彼らの楽観的とも言える姿勢には大いに学ぶべき点があります。

困難を乗り越えていく局面に出てくるのが歌であり、ダンスです。これが人々の壁を溶融させていきます。

ダンスと歌と、もうひとつ私が注目したシーンがあります。

日本版の予告編ではちょっとしか出てこないですが、英語版ではもう少し出てきます。

 

 

 

 

next_vivanon

(残り 950文字/全文: 3408文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ