松沢呉一のビバノン・ライフ

わたなべりんたろうは著作権侵害を知っていた-厄介な「レイシストカウンター」批判 21(松沢呉一) -3,441文字-

「秋山理央の動画を無断使用」の続きです。

 

 

 無比の存在・秋山理央

 

vivanon_sentence昨日、秋山理央は京都に行ってSEALDs-KANSAIのデモを撮影。

 

 

その日のうちに東京に戻ってきて、深夜まで編集。寝る前に終わらせたかったのですが、終わらず、朝また続きをやり、YouTubeにアップしてから仕事。

この通りかどうかわからんですけど、だいたいこんな感じだったと思います(追記)。なんで知っているかというと、このところ、この件で、頻繁に彼とは連絡を取り合っているためです。

彼は怒っています。去年から怒っています。そりゃ、怒りますよ。このために思い切り無駄な時間を使ってますしね。それでもデモを撮るために全国を走り回っています。毎月何万も自腹を切りながら。今は連載もありますが、それでも赤字でしょう。

表で苦労話をしたり、怒りを露わにしたりしないので、彼が心底怒っていること、失望していることを知っている人たちは決して多くはないかと思います。

また、見た目が目立つわりに自分の宣伝が下手なので、その存在が軽視されがちですけど、彼は全国の運動体にとってはなくてはならない情報源になっていて、今まで知られていなかったデモが全国的に話題になったり(例・四万十の反原発デモ)、どこかのデモのやり方が、遠く離れたところのデモに取り入れられたりしますし、今までデモのなかった地域で、映像に触発された人がデモをやり始めたりもします。

彼の動画は歴史的な資料になると私は信じています。当たり前の存在になってしまってますが、もうちょっと彼を大事にしましょう。

追記:本人によると、だいたいこの通りで、睡眠2時間半で朝から仕事。夜はまたデモの撮影に向かいました。

 

 

わたなべりんたろうは著作権侵害を認識していた

 

vivanon_sentenceでは、前回の続きです。弁護士との話し合いで、あちらは使用料と賠償金の提示をしてきていて、著作権侵害があったことについてはすでに議論の余地はありません。完全にアウトです。

弁護士に聞かなくても、常識的にアウトです。クレジットもなく、転用したものであることさえわからないんですから、本の中の数ページをよその本から持ってきたのと同じ。

なおかつ、前回書いた経緯から、本来は許諾が必要なケースであることを当初からわたなべりんたろうは認識していたことも間違いない。ついうっかりではないのです。

完成版で使用していた秋山理央の動画は東京大行進を撮影したものです。

以下です。

 

 

汚いおっさんはサムネイルで目立つなよって感じですね。私は歩道で応援していたのであって、十代と一緒に隊列のトップにいたわけではありませんので、誤解なきよう。

わたなべりんたろうはこの動画が秋山理央のものであると気づいていなかったと主張。「観ればわかるだろ」と思うのですが、たぶんわたなべりんたろうはこういう動画もたいしてチェックしていないのだと思います。

気づいていなかったのが本当だとしても、許可が必要であることを認識した上で、YouTubeから、あるいは別のところから拾って、誰のものかを確認することなく使用したわけです。いい加減すぎ、悪質すぎ、マヌケすぎ。

 

 

不当なクラウドファンディング

 

vivanon_sentence秋山理央の動画以外にも、仮編集の段階で動画を無断使用し、それから交渉を始めて断られたケースは他にも確認できています。この件を見ても、映像の使用には許諾が必要であることを認識していたことは間違いがない。

これらの事実から、わたなべりんたろうは「レイシストカウンター」は著作権をクリアしていない映画であることをわかっていたはずです。それによって上映ができなくなるかもしれないことを十分に予測できたにもかかわらず、カネ集めをしました。最初から欠陥のあるカネ集めだったわけです。

そして、そうなるべくして上映はストップしました。

それ以降のリターンの履行があったかなかったかを論じるまでもなく、私が返金すべきだと考えるのはこれが根拠です。

これさえ、どこも責任をとらなくていいということになったら、クラウドファンディングはなんだってありになってしまいます。映画の製作費を集めて、映画を作らずに豪遊してもいい。そういうものであるのなら、そういうものでしかないことを広く知らしめる必要がありましょう。

 

 

なぜ出演を辞退しなかったのか

 

vivanon_sentence「レイシストカウンター」のクラウドファンディングに関し、私がここまで「出演者にも責任があるのではないか」と言ってきたことには十分な理由があります。

あの映画に協力した人たちがいたのは、いくつかの要因があります。わたなべりんたろうは出演者ほかに協力を求める際に、複数の人に「ボランティアである」「営利目的ではない」という説明をしていることを確kamibaku201507認しています。だから、無償で協力して欲しいと。

そういうものだと信じてしまったのはやむを得ない。しかし、今となっては話が違ってましょう。ボランティアであり、営利目的ではないことと、上映費をかけることとは必ずしも矛盾はしないにしても、まさかこんなカネ集めをするとは思っていなかった人は多いはずです。だから協力をした。

営利ではないのであれば、金をかけない方法を選択してしかるべきです。多額な金を払って編集を依頼するのでなく、パソコンを買って自分で編集すればいい。ロフトプラスワンで金をかけない上映をすればいい。実際、そういう規模のものだと思っていた出演者が多いはずで、カネ集めが始まった段階で「話が違う」と協力を辞退することもできたはずなのです。

しかし、誰もそれをしませんでした。

 ※写真は秋山理央が連載をしている「紙の爆弾」

 

 

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