松沢呉一のビバノン・ライフ

富田安紀子を例に写真著作権を確認する 2-ゆるゆる著作権講座 11-(松沢呉一) -3,104文字-

 

サルが巻き起こした議論

 

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「サルが巻き起こした議論」と言っても、富田安紀子のことではないですよ。

富田安紀子を例に写真著作権を確認する 1」に書いたように、とくになんの工夫もなく撮ったスナップ写真であっても著作権は発生するわけですが、著作物として認められる写真と、認められない写真の境界線にあるのが、防犯カメラの映像、車載カメラの映像などでしょう。

「人がその写真を撮る行為に介在しておらず、偶然撮れたものでしかないため、創作性はない」、あるいは「そのカメラを設置した人、占有した人に創作性がある」という考え方のどちらもあり得て、おそらく国によってもこの辺の解釈には揺れがあるはず。後者の場合は、「もし人がシャッターを押していたら創作物と認められる写真であること」という条件がつくかもしれないですが、こういう判断も十分あり得ます。

判断がもっと難しい例が「サルの自撮り」です。

 

スクリーンショット 2015-07-13 6.49.14

「Wikipedia」より

 

よく密林の中にカメラを仕掛けておいて、動物が現れた時に自動的に撮影された写真や動画があります。偶然が左右しているとは言えども、そうなるように計算されて撮影されたものであり、これは著作物として認められる方が自然かと思います。

しかし、写真家がそれを狙ったわけではなく、すべて偶然によってサルがシッターを押した写真に著作権があるのかどうか。

これが話題になった当初、私は「どっちもあり得て、どっちでもいい」とメルマガに書いていました。どうでもいいのではなくて、どっちでも論理としては成立するって意味です。

 

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