武藤貴也議員の報道とACT UP-アウティング再考 1(松沢呉一) -2,352文字-
日曜日のこと
日曜日、朝起きたら雨が降っていたため、「あー、参加者は半減か」とガックリしたのですが、国会前はすごいことになっていたらしいですね。他人事のようですが、あの場にいたくせに、人が多すぎて、何がどうなっているのかわかりませんでした。
風船で巨大ダンマクが浮き上がったのを見届けたところで後ろに下がったら二度と前に行けなくなりました。そのくらい人の数が多かった。数字を小さく小さく見せたい「産經新聞」でさえも瞬間風速で10万人を超えたであろうことを推測させる数字を出しているくらいです。
このあと、周辺を見て回ったのですが、どこも人でいっぱいのため、休憩する場所がない。そこで、日比谷公園まで移動したのですが、私の好きな休憩場所である喫煙所の脇にも車が停まっていて、その上でスピーチが行われていて、休憩もできやしない。
しゃあないので、三軒茶屋の銭湯に行きました。世田谷区の銭湯ではスタンプラリー実施中ですから、時間があったら世田谷区の銭湯に行く日々です。
そのまま帰ったので、休憩じゃなかったんですけどね。
ACT UPのバルーン、国会前のバルーン
若干の不備はあったにしても、あのダンマクは成功です。あんなダンマクを出したら、「プロに違いない。代理店がかかわっている」とまた言い出すのがいるかもな。バカすぎ。
以下はエディトリアル・デザイナーのほうとうひろしさん撮影の動画。
https://www.youtube.com/watch?v=woPsbFnJxfM
ジワジワと国会に迫って行く様子がよくわかります。
「怒りを力に」(UNITED IN ANGER)をご覧になった方はおわかりのように、あれの元ネタはACT UPです。1991年1月23日に行われたNYCのグランド・セントラル・ステーション占拠の際に上がったピンクの風船へのオマージュ。
私も「ビバノン」で書いていたように、今回、「ACT UP!」と呼びかけていた人が複数いたのは、これを踏まえてのこと。派手にやろうぜ。
あのシーンに触発されたバルーン・プロテスターのヤマタクって人がいまして、皆で飯を食っている時に「やろうぜ」と言い出したのが始まりです。ほんの数日前のことです。
これは「怒りを力に」(UNITED IN ANGER)制作途中に発表された動画で、完成版を観た方がよいかと思います。
9月に入ってすぐまた東京で上映会をしようと動いていたのですが、うまくいかず。そのうちまたやります。関西でもそのうちやるはず。
アウティングを再検討する
このACT UPの中から出てきたアウティングという手法について以前簡単に書いています。政治家や著名人などに限定して、そのセクシュアリティを暴露する運動です。
「否定的暴露」に対する「肯定的暴露」とでも言うべき手法で、現在この方法を肯定する人はほとんどいないでしょうし、現在、米国でも行われていないでしょう。
そんなことをしなくても次々とカミングアウトするようになっているわけですけど、そうなる過程では、アウティングは一定の意義と効果があって、「人権侵害である」と葬り去ることができない内容を今なお含んでいると私は思っています。アウティングをただ肯定するのではなく、そのことが示唆するものをもう一度見ておく必要があります。
そこで、「アウティング再考」を8月8日の「ACT UP&TALK OUT」のトークでテーマにしようかとも思ったのですが、あまりに煩雑なので却下しました。50分のトークがこれだけで埋まってしまいます。
武藤議員の報道をどうとらえるか
テーマ出しの時に仮想したことに限りなく近いことが現在進行しています。武藤貴也衆院議員の疑惑です。
「週刊文春」9月3日号に掲載された「武藤貴也議員は議員宿舎で僕を奴隷にした」と題された記事はさまざまな議論を呼んでいるわけですが、こういった報道についても「ACT UP&TALK OUT」に先立つテーマ出しの中で取り上げられていて、そのすぐあとでこうなったので、その記事の内容だけではなく、このタイミングに驚いた次第。
ヘテロの公人であれば「愛人がいること」「乱交パーティに参加していたこと」「路上でキスをしていたこと」などなどが報じられます。
政治家本人だけではなく、首相の家族の行動も報じられます。まったく表に出てこない家族のプライバシーまで報じるのは許されないとしても、首相の妻ともなれば表に出ないわけにはいかず、選挙の際に頭を下げて投票をお願いするってもんですし、公務にも付き添うことがあります。
とくに昭恵夫人の場合は積極的に公的な活動していますから、他の人から見える店での行動が報じられるのはやむを得ないかと思います。あくまで事実である限りは。
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