処女で娼妓になる率-「吉原炎上」間違い探し 21[ビバノン循環湯 95] (松沢呉一) -4,085文字-
「娼妓になる前の性病感染率-「吉原炎上」間違い探し 20」の続きです。
娼妓になる女たちの四人に一人は出産経験あり
前掲の上村行彰著『売られ行く女』には、娼妓になる前に結婚していた数字、出産経験のある数字も出ている。
ふたつ数字が出ており、ひとつは、2,053人の娼妓のうち、302人が結婚を経験し、177人が出産を経験しているという数字。結婚経験者は15%、出産経験者が8.6%になる。
もうひとつは5,647人中1,321人が出産経験があるとする数字。こちらは24%にもなる。娼妓になる女の4人に1人は子どもがいたのである。
ふたつの調査で大きな数字の差が生じたのは、前者は結婚経験者を主にした項目のため、結婚経験者の中で出産経験がある者の数字であり、後者は未婚で出産した者を含めた数字のためだと思われる。著者は「既婚者の率に比して遥かに大なる数であることは一面に淫奔野合の盛んなることを想はしめるのである」と嘆いていることからもそのことがわかる。
娼妓になる者の15%は結婚経験者、24%は出産経験者だった点はあまり注目されることがないが、少なくとも9%は未婚の母ということになる。未婚で子どもを産み、のちに結婚したのもいるのだから、実際にはもっと多くの女たちが未婚出産を経験している。
※上のリストで「不明」が163人もいるのが気になるが、里子に出す場合、母親が取り返しに来るといったことが起きないために、どこにいるのかを教えないのはよくあること。さすがに大正時代になると間引きはなかったろうが、この頃は労働力確保のための赤ん坊の売買はなおあったため、売られた子どももいたかもしれない。
女が子どもを育てられない社会の問題
この中には「よばいご」がいたかもしれない。「夜這い子」である。相手が一人であれば結婚して丸く収まるわけだが、複数の男が夜這いしていた場合にどうするかはその地域のルールによる。相手を女が指定できるルールもあればくじ引きというルールもあった。
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