またも消えた老街娼-「闇の女たち」解説編 21(松沢呉一)-2,231文字-
「桜とともに闇に散る-「闇の女たち」解説編 20」の続きです。
『闇の女たち』の見本刷完成
白川俊介著『闇の女たち』についての批評が終わったところで、『闇の女たち』の見本が刷り上がりました。ついさっき初めて現物を見ました。
思ったほどはツカがない。紙が薄いのです。これなら、「箸より重いものを持ったことがないので、手に持てる自信がない」「ヴィトンのバッグが壊れたら大損害」「木造モルタルの二階なので床が抜けそう」という方々も安心して購入できます。
二度と聞けなくなった言葉
さすがにここまで来ると「売れそうにないから、今回の話はなかったことに」って新潮社から言われることはなさそうです。
それどころか、新潮社は、書店向けにこんなもんまで作ったんですよ。売る気か。
こういうのに慣れてないので、こんなんが書店に出されるのは気恥ずかしくて、しばらく書店に行けませんけど、街娼や客引きの人たちの言葉が人目に触れることはムチャクチャ嬉しい。新潮社の編集者がこれを文庫にしようと言い出さなければ、私のパソコンに死蔵された言葉ですから。
「二度と聞けない貴重な肉声」という惹句はおおむねホントのことです。
第一部のインタビューに出ている人たちのうち、今もやっているとしたら、上の四人の中では、男に億は使ったと言っている広島の街娼です。その金はソープランド時代に稼いだものです。彼女は現在五十代のはず。街娼としてはまだまだこれからです。ヒヨッコの部類。
インタビューの翌日、彼女にまた会ったのですが、昔話をしたため、以前働いていた吉原のことを夢に見たと言ってました。彼女にとっては思い出深い「いい時代」です。
神戸の街娼も年齢的にはまだやっているかもしれないですが、彼女はそう長くはやらないと言っていたので、その言葉通りだとすれば、もういない可能性の方が高そうです。
今も街に立ち続けているのは、全部合わせて、せいぜい三人か四人だと思います。つくづくあの頃、インタビューをしておいてよかったと思いますし、私のパソコンの中に死蔵されるだけでなく、こうやって文庫になってよかったと思います。
そうしないと、平気でデマを流す糞野郎どもが、彼女らの生き様を好き勝手に改竄したでしょう。
モンローさんのその後
このうちの横須賀の客引きは、その後横須賀に行った際に探したのですが、見つからず。今生きているとしたら、九十歳くらいじゃなかろうか。さすがにもう客引きはできないかと思います。
そして、左端に出ている博多のモンローさんについての情報がちょっと前に編集者からもたらされました。
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