日本脇毛史-毛から世界を見る 4-(松沢呉一) -2,577文字-
「ソフィア・ローレンの脇とマリリン・モンローの脇-毛から世界を見る 3」の続きです。
日本女性と脇毛
前回見たように、脇毛にはいくつかの種類があって、ある脇毛と別の脇毛は時に対立する関係にあります。
日本では、エロの脇毛として黒木香が知られるわけですが、この伝統はけっこう古い。脇毛を処理することもまたけっこう古い。
私もかつてそう思っていたように、日本で女子が脇毛を剃るようになったのは高度成長期の頃と思っている人も多いかと思いますが、戦前から剃っている人たちがいました。それを確定する資料は見出していないですが、明治時代からいたはずです。
ジレットが女性用カミソリを出したのが1915年と「ガーディアン」が書いていましたが、おそらくその前から日本では剃っている人たちがいたと思われます。
日本髪を結って和服を女性が着る場合、首筋が他人からよく見えてしまうため、無駄毛を処理することが昔から行われ、毛の濃い人は顔や手の処理もしていたでしょうが、近代に入ると、ここに大きな変化が起きます。洋装の登場です。
和服であれば、袖が大きく、襦袢も着るため、よっぽど袖をたくしあげたりしない限り、脇は見えない。しかし、洋装の半袖を着ると、脇が見えてしまいます。
とくに大正後期のモガともなると、ノースリーブも着るようになってましたから、当然、脇が見えます。和装の時代から毛剃は慣れてますから、脇にもカミソリを当てるようになります。
※写真はウィキペディアの「モボ・モガ」の項から拾ったもの。脇が見える格好ってことで。
脇も臍もエロい部位
この時代、脇自体がエロでした。
「隠している場所がエロになる」とわかっていても、脇がエロだったことの実感を今の時代に取り戻すことは難しいかもしれないですけど、実際、そうだったのです。
こちらも理解しにくいでしょうが、臍も同じくエロでした。戦前、女子が臍を出して公道を歩いたら逮捕されるのは必至。今で言えば陰毛を出して公道を歩くのに等しいハレンチな行為です。
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