松沢呉一のビバノン・ライフ

犯罪続出のアンダーグラウンドセックス-yes means yesの意義と実現性 11- (松沢呉一) -2,508文字-

セックスをするためのアプリ登場-yes means yesの意義と実現性 10」の続きです。

 

 

 

セックスの二重構造

 

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罰則規定を入れるようなことをしなくても、「積極的合意」の記録のないセックスは、強姦だと訴えられた時に対抗ができないということになると、間接的な強制力が働きます。間接的なものでしかないので、記録を残さない人たちは残さない。

そうなると、セックスは二重構造化します。いわば「合法セックスと非合法セックス」「公然セックス非公然セックス」「公認セックスと非公認セックス」です。

限定された場所にのみ適用されるのであれば、著名人や公人、既婚者が秘めたるセックスをする場合は、その外でやればいいだけですけど、強制力をもったルールが一般化すると、逃げ場がなくなり、アンダーグラウンドなセックスがどうしても出てきてしまいます。

そこでは悪い人たちが大活躍。身元がばれてはまずい人がセックスしたくてしたくてしょうがない時に、絶好の相手が現れて、「じゃあ、これにサインを」と言われてサインしたら、それをネタに延々と脅される。

サインなしでいい相手が現れたと思ったら、「キャー、強姦だ」と騒ぎ出し、それから延々と脅される。おれおれ詐欺の業者が大挙して美人局業者に転身です。

「美人局なんて、今の時代にあるのか」といぶかる人もいるでしょうが、あるんですよ、これが。「てめえ、オレの女になんてことを。金を出せば許してやらあ」と男が出てくる、絵に描いたような展開です。

「わかった、じゃあ、警察に行こう」と言われるとまずいので、やる側にとってはボッタクリよりもリスクが高いわけですが、投資費用がかからないメリットがあります。部屋があればよく、人員も男と女がいればいい。あるいは女だけでもいい。

積極的合意」がルール化すると、「被害者」が警察に救いを求めることはほとんどなくなりますから、確実に美人局的犯罪が増えるでしょう。

 

 

ボッタクリは性風俗から居酒屋へ

 

vivanon_sentence悪いヤツは悪いことができるチャンスを目ざとく見つけます。悪くないヤツでも悪いことをすることで利益が得られるとなると、つい悪いことをするくらいで。

昔はボッタクリと言えばキャッチバーや性風俗店でした。地域差もありますが、新宿だと2000年くらいまでは竹の子剥ぎの性風俗店が横行。「パンツ脱ぐならあと1万円」という方式です。あるいはプレイ時間が短く、どうしても延長せざるを得ないようになっていたり、サービスコースで人を集め、「そのコースは終わりました」と通常料金をとるプチボッタという方式です。

しかし、今はボッタクリと言えば居酒屋です。注意を喚起するポスターも居酒屋限定になっています。左は新宿中央通り周辺に貼られているものです。

性風俗店は店舗自体の規制が強まったため、客が警察に駆け込むと、店自体が摘発されてしまいます。客引きも性風俗店、風俗店では規制されてしまいましたから、居酒屋でボッタクリをやるのが安全なのです。

その結果、鼻の下を伸ばした観光客や出張族だけじゃなく、広く一般に被害が拡大。

そうなっちゃうんですよね。「積極的合意」のルールも一般化すると、こういう悪い人たちの活躍の場を増やすことは必至です。

 

 

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