フェミニズムが敵なのではない。バカなフェミニストが敵である—共感できるフェミニスト・共感できないフェミニスト 1-(松沢呉一) -2,283文字-
レズビアンを嫌うフェミニスト
知人の奥さんが、ダンナが持っていた『闇の女たち』を読んで共感し、「松沢を見直した」と言っていたそうです。今まで私をなんだと思っていたのかな。
大きな書店では、購入者の性別や世代(もちろん、いずれもアバウト)もレジで打ち込んでいて、版元はそのデータも見られるのですが、書店によっては女性の購入者の方が多いそうで、これは当初から私が狙っていたことです。『闇の女たち』は制度からはみ出した女の生き方を肯定した本なのであります。
そういう意味ではフェミニズムの文脈に位置づけられる本かもしれないですが、この国のフェミニストの大半は理解できず、あの内容を否定したがるでしょう。
ちょっと前に聞いた話で愕然としたことがあります。バイの女性によると、「レズビアンを嫌うフェミニストが多い」とのこと。この場にいたゲイの何人かも同意してました。そうなのか…。
あり得る話ではあっても、そこまでバカだとは思ってませんでした。バカなフェミニストがいっぱいいるとは思ってましたが、それを表に出すほどのバカがいるとは。
私がここまで「ビバノンライフ」に書いてきたことを読んでいる人たちは納得しやすいかと思いますが、そういったフェミニストは自分らが留まっている制度からはみ出す人たちを否定したいのだと思います。
つまりは、制度内改革を目的とし、制度を守護したがる人たちまでがこの国ではフェミニストと名乗っているのです。私が「家父長制フェミニスト」と呼んでいる層です。
だから、制度からはみ出した女たちに対しては抑圧者になる。
「そのおかしさにも気づけない人たちがなんでフェミニストか」って話なのですが、制度内であれ、女の権利拡大を目指しているのですから、フェミニストではないとは言えないでしょう。新宿区の戸山公園にある箱根山も山なら高尾山も山。富士山も山ならチョモランマも山。山もいろいろ、フェミニズムもいろいろ。
日本は韓国よりも道徳派フェミニストが強いらしい
そういう層と重なるのでしょうけど、ヒューマンライツ・ナウのような道徳団体の主張を支持する「フェミニスト」たちがいるため、表現規制に反対する人たちの中にはフェミニズム総体を否定しようとするのがどうしても出てきます。
日本のフェミニストの多くは「バカフェミ」「糞フェミ」「腐れフェミ」と罵倒されても仕方がないと思いますよ。実際、バカだし、糞だし、腐っていますから。しかし、こういう「道徳派フェミニスト」「家父長制フェミニスト」だけを見ていると間違えます。箱根山を見て山のすべてだと思ってはいけない。箱根山にはなんの罪もなく、ただの例ですよ。
どこの国でも道徳派フェミニスト、セックスフォビアのフェミニストの層は存在するのですが、その力関係が地域によって違っていて、セックスワーク否定の道徳派フェミニスト、性的保守フェミニストが東アジアは相対的に強い。
韓国でもやはりその層は強くて、台北で会った韓国のセックスワーカー支援団体GIANT GIRLSの人たちも、そのことを強調していました。
日本に帰ってきて、「韓国のフェミニストはひどいみたいね」と日本にいる韓国人女性に言ったら、「たしかに韓国のフェミニストはひどい。でも、日本の方がもっとひどい」 と言っていました。あら。
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