松沢呉一のビバノン・ライフ

アライは同盟者であり、支援者ではない—アライとサポーター 1(松沢呉一) -2,885文字-

 

アライ(ally)とは?

 

vivanon_sentence一昨日、東京レインボープライド(TRP)の季刊誌「BEYOND」のインタビューを受けました。「アライ」としてのインタビューです。

冒頭で私はアライはサポーターではないことを確認しました。「セクハラ」もそうですが、私はまず言葉の意味を確定させないと胃が痛くなるのです。

続けて「アライはサポーターではないにもかかわらず、なぜ同じものとして扱われてしまうのか」も説明しました。ここが大事。

これは「オカマ論争」からずーっと続くテーマが根底に流れていまして、あれから十数年経ってもなお広くは考えが共有されておらず、頭でわかったような気になっていても、今なお血肉になっていない人たちも多いのだと想像します。

インタビュアはTRPの山縣真矢代表。山縣さんは「その話はいろんな人を集めてレクチャーをした方がいい」と言ってました。山縣さんも、当然、「アライはサポーターではない」とわかっているのですが、それが理解されにくい背景を把握している人は少ないため、改めて説明をした方がいいということかと思います。

BEYOND」のインタビューでも、この部分はそんなに詳しく掲載されないでしょう。すべてカットかも。

ルノアールの会議室に会費500円をとって10人くらい集めてレクチャーするのもいいのですが、ルノワールの会議室を予約して人を集めるのは面倒だし、私の話を聞きたがる人はそうはいないので、ここでまとめておきます。今まであちこちに書いてきたことの繰り返しでしかないんですけどね。

※「BEYOND」はTRP2016のテーマ「Beyond the Rainbow〜LGBTブームを超えて〜」に合わせて創刊されたもの。創刊号はまだ残っているので、希望者はTRPにお問い合わせください。無料です。

 

 

アライは「同盟者」である

 

vivanon_sentenceここ数年、アライという言葉を耳にすることが多くなっていますが、一度英和辞典や和英辞典というものを調べてみた方がいいと思います。

 

 

 

 

「支援者」なんて意味はどこにも書かれてないですね。名詞では「同盟国:同盟者,盟友,味方」とあります。

それでも、アライを「支援する同盟者」「支援をする味方」ということでとらえていいのかもしれないですが、サポーターという言葉が日本でも広く定着しているのだから、わざわざアライを同じ意味の言葉として使用する必然性はどこにもない。アライを使いたいんだったら、本来の意味で使いましょう。

 

 

同盟国を支援国とは呼ばない

 

vivanon_sentence支援者/サポーター」であってはいけないと言いたいのではなく、両者は別だとちゃんと認識した方がいいってことです。

日本とフィリピンが同盟を結んで、日本が「フィリピンは日本が支援する国」としても、フィリピンが「日本はフィリピンを支援する国」としても、「同盟」とはズレます。正しく「両国は同盟国である」とすればいいだけなのです。

同盟は、一方が支援される国、一方が支援する国という不均衡な関係を示すのではなくて、両者はそれぞれに自立した立場から同じ目的のもとで連帯、連携する関係を示すものです。その背景には不均衡な経済力などなどが存在しているのだとしても。

アライに近い言葉として「アライアンス」がありますが、これは「提携」。不均衡な同盟や提携もあるでしょうけど、両者にメリットがあるのが同盟や提携

対して、「支援する人」「支援される人」という関係は不均衡であることを前提にしています。「救済」という関係も同じ。「救済する人」「救済される人」という関係は不均衡であり、一方が一方的にもう一方に働きかける関係です。

ヘテロとLGBTの関係は不均衡ですから、支援や救済という関係が成立しやすいのはもちろんのことながら、アライはそれらとはまた違う関係性を示す言葉です。

※TRP2016より。以下同

 

 

主体性の違い

 

vivanon_sentence支援者/サポーター」と「同盟者/アライ」の違いは、いろんな側面から説明できますが、「主体がどこにあるのか」で言えば、「当事者と支援者」の関係における決定主体は当事者です。支援者は従。

金や労力を提供することにおいては主体だとしても、支援者は「当事者のため」に行動をする。しかし、「当事者と同盟者」の関係における主体は両者です。

 

 

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