松沢呉一のビバノン・ライフ

増加し続けるセックスワーク関連団体の事情—おそらく現在500団体以上-(松沢呉一) -2,893文字-

 

 増加し続ける赤い傘

 

vivanon_sentenceCOYOTEやThe Red Treadは今どうなっているんだろうと調べたついでに、さまざまなセックスワーカーの団体、支援団体のサイトを見て回っていまして、気づいたことを備忘録としてまとめておきます。以下、とくにそんなに面白いことは書いてないです。

世界に広がる赤い傘に書いたThe Sex Worker Freedom Festivalを主催したNSWP(Global Network of Sex Work Projects)が世界最大のセックスワーク関連団体のネットワークだと思います。

 

 

 

 

傘をクリックすると団体の案内に飛べて、サイトのある団体はそこからさらに飛べます(上はSSなので、NSWPのサイトに行ってください)。

地域によっては、詳細が書かれていない団体、サイトのない団体も多くて、その実情は不明。このネットワークに参加するには所定のアンケートに回答しなければならないはずなのですが、詳細を公開しにくい地域もありますしね。

サイトが消えていてすでに活動していないのではないかと思われる団体も入っていますが、ここに参加している団体は軽く200を超えます

日本の赤い傘はSWASHで、その周りが広く空いています。韓国も台湾も傘がなく、中国は南部しかなく、相当数の団体が抜けていますから、これでもなお一部です。他の地域でもよく知られる団体が入っていなかったりするので、実際には少なくともこの2倍以上存在することは間違いなく、ことによると、すでに千団体に達しているかもしれない。

いつ設立されたのかの記載のない団体が多いのですが、急増する最初のタイミングは1990年代、続いて2000年代に入ってからです。

 

 

団体増加の理由

 

vivanon_sentenceNSWPは1990年代初頭に、国際エイズ会議を契機にして誕生したネットワークで、そのため、「主たる活動はHIV対策。その中にセックスワーク部門があったり、セックスワーカーの調査、啓発のためにネットワークづくりをしていたり」といった団体も含まれています。

HIV対策における個別施策層として、MSM (男性間で性行為を行う者)、セックスワーカーとその客があります。これ以外の感染者は、拡散しているので把握しにくく、対策は「広く一般に向けて」ということになります。

NSWPに参加している団体は、セックスワークの非犯罪化を求めていることが条件になっているのですが、HIV対策にとっても、セックスワークの非犯罪化が望ましいのです。

以前、中国のゲイ団体、レズビアン団体を見学して回ったのですが、ゲイ団体についてはなにかしらHIV関連基金や行政の支援を受けていました。その後、援助を打ち切られているという話も聞いていますが。

また、セックスワーカーのネットワーク作りも日本の保健所に当たる役所が進めていましたし、直接、HIVが契機になったわけではない団体もすでに存在していましたから、中国でも、今はさらに数が増えているのではなかろうか。

NSWPに雲南省の雲南平行という団体が参加していて、ここもおそらくHIVが契機になっているのだろうと推測しています。麻薬によるHIV感染が問題になっていた地域です。外部からの働きかけがあったわけではなくても、そういうテーマが目前にあると組織ができやすい。

その経緯と関わっているのか、LGBTのセックスワーカー専門団体もチラホラ見られます。あんまり更新されていないですが、上の写真はニューヨークの男性セックスワーカー団体HOOKのサイトより。hookは売春するという意味の俗語。hookerは売春婦。

 

 

インターネットの登場

 

vivanon_sentence2000年代に入ってからの増加はインターネットの影響でしょう。

 

 

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