松沢呉一のビバノン・ライフ

寝取られ趣味の夫に強いられることに欲情する女-[ビバノン循環湯 159] (松沢呉一) -4,467文字-

10年以上前に書いてあったのですが、寝かせているうちに公開するタイミングを逸して、数年前にメルマガ「マッツ・ザ・ワールド」の購読者だけが読めるevernoteで初公開したものだったはず。この舞台になったのは池袋の店ですが、当時撮った写真は残っておらず、歌舞伎町で適当に撮った写真を使用しました。

 

欲望を露にしていい場所

 

vivanon_sentence大きな声では言いにくいことだが、風俗嬢の中には取材中に「しなくていいこと」をするのがいる。

裸の写真を撮る時に「おっぱいが柔らかいってよく言われるんですよ。触ってみますか」なんて言ってくるのがいる。この場合は、遠慮なく触らせてもらうことにしている。

「私、クリが大きいんですよ」と言って、皮膚を引っ張りあげて露出させるのもいる。そんな写真を撮っても掲載できないのだが、せっかく出してくれているのに撮らないのは申し訳ないので、撮らせていただくことにしている。

「おっぱいを触ってみますか」「おっぱいを触ってもいいですよ」と言ってくるのは百人に三人くらいいると思うし、雑誌に出せないものを出してくるのは百人に一人くらいいそう。

もっと数は少ないが、「おまんこの締りがいいんですよ。中に指を入れてみてください」と言うのも稀にいる。

もっともっと数は少ないが、「フェラしてあげましょうか」というのも極稀にいる。風俗取材を始めて間もない頃、編集者やカメラマンが席を外したわずかな間に「フェラしてあげましょうか」と言われ、短時間ながらしてもらったことがある。あれはドキドキした。

これは「自分のワザを披露したい」、「親愛の情を伝えたい」、「サービスをすることでよく書いてもらいたい」といった理由が考えられるが、こういった行為に及ぶ風俗嬢の何割かは自分の快楽のためだったりする。

予定調和ではない行為に興奮するタイプが確実にいる。だからと言って、店を出てもそうだとは限らず、自分のエロ心を出してもいいとされている場だから、欲望がそのまま出てきたりするのだろう。もちろん、ルールや限度はあるとして、客はもちろん、働く側も、自分の欲望に忠実になっていい場が性風俗店なのである。

そんなエロ風俗嬢の話。

 

「寝取られ」趣味の夫

 

vivanon_sentence新人風俗嬢の簡単なインタビューをしている時のこと。入って三日目のカンナというコだ。営業年齢は二一歳だが、実年齢は二五歳だと教えてくれた。見た目は実年齢に近い。

「きっかけは?」

「ダンナに勧められました」

「ダンナの会社が潰れた?」

「違います」

「えーと、プレイ?」

「ピンポン」

適当に言ったら当たった。広く露出する分、風俗嬢よりもAV嬢の方が多いかと思うが、自分の妻や恋人が他の男に抱かれるところを見たり、聞いたりするのが好きな男たちによって送り込まれてくるのがいるんである。いわゆる「寝取られ」である。前に会ったAV嬢は、彼氏が現場まで見学に来ると言っていた。

このタイプの男は「珍しい」というほどは少なくない。五十人に一人くらいはいるかもしれない。嫉妬を前向きに転換したような性癖なので、気の持ちようで、あるいはなんらかのきっかけで、こういうタイプになる人はもっともっと多いはず。

「じゃあ、家に帰ってダンナに報告するわけだ」

「そうです、そうです。“今日は何をされたんだ”“何回イッたんだ”“声を出したのか”って根掘り葉掘り聞かれる」

「たくさんイッていた方がいいんだ」

「はい。三回と答えると、“もっとイッたろ”と追及してきて、“ごめんなさい、本当は五回です。体が反応してしまって”と答えるとギンギンになってます。一昨日も昨日も一回もイッてないですけど、一昨日は三回、昨日は五回イッたことになってます」

「AVに出ろって言われない?」

「よく言ってます。レイプものに出ろってメーカーや監督まで指定して(笑)。でも、親や友だちにバレるのはイヤなので、それは断ってます」

「ハプニングバーに来てそうな夫婦だね」

「行きましたよ。カッコいい男の人とするんだったらいいんですけど、ダンナはデブのオタクみたいな男とさせようとするんですよ。そんなダサい男にされても興奮する私を見たい。私はノーマルだから、そこまでダンナにつきあいたくない。その時はしょうがなくしましたけど、“あんな男にされても感じやがって”ってギンギンでした。“もうしたくない”って言ったら、AVに出るか、夜道でレイプされるか、風俗で働くか、どれかひとつを選べと言われて、風俗を選びました」

苛酷な三択。

「だったら、ソープの方がもっといいんじゃないか」

「ダンナもそう言ってましたけど、本番はイヤなので、ここに来ました」

「この話、ムチャクチャ面白いんだけど、雑誌に書けないよ」

「なんでですか」

「客がつかないよ。ダンナのことだって書けないだろ。人妻店じゃないんだから」

「そうか。じゃあ、動機は好奇心て書いておいてください。それも本当だし」

長くて面白い話が三文字になってしまった。

 

撮影中にオナニーを始めた

 

vivanon_sentenceあとはさして面白みのないありきたりの内容を聴いて、写真を撮ることに。

「顔はダメなんだよね」

「はい」

「もうちょっと足を開いてくれるかな。下着が見えるくらいに」

彼女は横座りをしていたのだが、片足をずらす。キャミソールの中が見えた。

「ん?、ノーパンか」

 

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