松沢呉一のビバノン・ライフ

世界を震撼させる能力者の登場—「乳と陰毛」調査 2-[ビバノン循環湯 157] (松沢呉一) -3,234文字-

顔で乳や陰毛を見抜けるか?—「乳と陰毛」調査 1」の続きです。

 

 

 

驚異の審乳眼を持つ男

 

vivanon_sentence有意かもしれない数字が出て俄然やる気を起こし、さらにこのテストを続けてみた。

URECCO(ミリオン出版)の五人の編集者は、平均四.四点という高得点をマーク。これはやはり意味があるのではないか。皆が揃って高い得点であれば、肉付きなどで関連づけているだけの可能性があるが、集団によって差が出るということは、誰でも簡単に見抜ける要因によって得点が高くなっているのではないことを示唆する。

中でも私が期待していた鶴木という編集者がいる。この男、ものすごく女の体にうるさい。うるさいだけでなく、観察力が鋭い。とりわけ乳に関する感覚は尋常じゃない。

彼の能力をよく物語るエピソードがあるので、URECCOの連載に以前書いた原稿を転載しよう。

 

私は今までURECCO編集部の実力を軽んじていた。こいつら、毎月何人ものモデルさんと会いながら、それどころか裸まで見ながら、モデルさんと一発やったことがない。雑誌の質もモデルの質も違うからやむを得ないところがあるにしても、最近よく仕事をしている三和出版の第一編集局なんて、モデルさんとハメたことのない編集者が一人もいないと言っていいくらいだ。ハメたことがないのは女性編集者だけじゃないか。

マニア雑誌の場合はハメ撮りの仕事があるからだし、モデルさんの質が違い、事務所の管理も違うため、URECCOに出ているモデルさんとなると、電話番号を聞くことも容易ではないのだが、ホントにURECCO編集部は情けないヤツらの集団である。

URECCO 10月号 ところが、先日、私はURECCO編集部の底力をイヤというほど見せつけれられた。

編集部の鶴木と風俗店の取材に行った時のことだ。決して大きくはないが、抜群にきれいな乳をしている女の子がいた。普段なら、「いやー、きれいだな。こんなきれいなおっぱいの子を見たのは生まれて初めて。ホントに僕はこの仕事をやっていてよかったですよ」なんて、「よくもまあお前はそこまで言うな」と思わないではいられないオベンチャラを連発する鶴木が、この時ばかりは乳について触れず、オベンチャラに精彩がない。

おかしいとは思ったが、目の前の美乳に幻惑されて、「いやー、きれいだな。こんなきれいなおっぱい見たのは生まれて初めて。ホントにこの仕事をやっていてよかったですよ」なんて私は褒めていた。

取材を終えて店を出たら、鶴木はタバコに火をつけ、大きく吸い込んだ煙を中空にプッハーと吐き出してから、陰のある表情で私に言った。

「松沢さん、あれは入れ乳ですよ」

なんと、あの美乳は整形だというのである。私もカメラマンもまるで気づいていなかった。

「つつつ、鶴木、ちょっとまて。オレだってずいぶん入れ乳を見ているが、あの乳が入れ乳とは思えなかったんだが」

「甘いですね、松沢さん。寝たポーズでも、全然崩れていなかったじゃないですか」

確かにどんなポーズをしても崩れなかったのだが、それにしては小さく、あのくらいの大きさだと、天然でも、堅くて乳が崩れないことがあるものだ。

「もともとは本当に胸がなかったんでしょうね」と鶴木。

あまり大きくして「整形でーす」と自己主張してしまう不自然な乳にするくらいなら、適度な大きさで留めて、バレないようにする賢い子だっているだろう。仮に彼女が整形なのだとすると、事実私はまんまと騙されたってことになり、彼女があの程度の大きさで留めたのは正解だったことになる。

「整形じゃなくて、あれほどきれいなおっぱいの子なんてまずいませんよ」

URECCO (ウレッコ)1998年3月号 (優香)そういうもんか。そう言われてみると、彼女は乳を褒められてもさほど嬉しそうじゃなく、撮影の合間にタオルで胸を隠していた。今時、こんなおしとやかで恥ずかしがりの風俗嬢がいるのかと感心していたのに……。

「それに、乳首が立っていたでしょ。整形すると皮が張って、いつも乳首が立っているんです」

そうだったのか、てっきり私の褒め言葉によって体が疼いて辛抱たまらなくなっているのだとばかり思っていた。

実は私も、顔はいじっているかもしれないと疑っていた。きれいな顔をしているんだが、アゴと目が怪しい。顔の整形には寛大な私だから、それはいいとして、首筋の皺の具合から、彼女は年齢をごまかしていたようで、一瞬出たなまりからすると、神奈川出身というのも恐らくウソだ。しかし、何より乳までウソだったとは、微塵たりとも疑っていなかっただけにショックだ。

鶴木は「ほぼ十割の確率で入れ乳」と断言する。成蹊大学秩父校舎エロ学部入れ乳学科を主席で卒業し、入れ乳判定家の国際A級ライセンスを持っている鶴木の言うことだから、きっとそうなのだろう。

 

 

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