松沢呉一のビバノン・ライフ

身近で手を出すとロクなことにはならない—風俗店が男女関係に厳しい理由-[ビバノン循環湯 193] (松沢呉一) -3,650文字-

十年以上前に「ドクターピカソ」の連載に書いたもの。後半出てくる店は今も営業しています。

多くの風俗店では、従業員と女のコの関係には厳しいものですが、それでもこのようにくっつくのが出てきてしまいます。一般の企業では、明文化されたルールはないにしても、同じ部署内で惚れた腫れたをやっていると何かと支障が生ずるため、異動させられることが多いし、私の知っている例では海外に飛ばされたのもいます。それでもくっつくのは出てくる。

まして、そういった処分さえない場では、必ずと言っていいほど、下半身の揉め事を起こすのが出てきます。男だけの問題ではなくて、女もまた身近なところで欲望を満たすのが多いのです。問題を起こさなければいいし、問題を起こしても、自分の責任として処理すればいいのですが、周りを巻き込むのがいて、うんざりします。

なお、私の好きなタイプのヤリマンであるクレバー・ヤリマン、略してクレマンは「身近なところではセックスをしない」というルールを自分に課しているのが多く、さすが賢い。この辺の話もそのうち循環する予定。

 

 

 

風俗店は厳しい

 

vivanon_sentence仲良くしていた店の店長が突然いなくなった。この店の女のコに会った際に事情を聞いたら、クビになったそうである。 仕事より女を優先することが問題になってのクビだとのこと。

この人物は、過去に複数の店の女のコとつき合っていて、この話を教えてくれたコもつき合っていたことがある。乱れまくりだ。

それでも黙認する店はあるだろうが、女関係で仕事がルーズになり、店長なのに無断欠勤するそうな。これでは他の従業員や女のコにしめしがつかない。「遅刻するな、無断欠勤するな」というなら、自ら手本にならなければいけないだろう。

規律をしっかりしておかないと、どうしてもこういう男や女が出てくるため、たいていの風俗店では、店内での肉体関係や恋愛関係は御法度になっていて、とくにソープランドやピンサロは厳しくて、店外でたまたま会っても会話さえ交わしてはならない店も多い。ルーズにしているとロクなことがなく、厳しいルールにしている店こそが今も残っていると言えよう。

男側が迫るだけではなく、女側からアプローチすることもよくある。そうすることによって、客を回してもらえると計算する。下っ端のボーイでは意味がないが、客を采配する立場であれば、えこひいきすることは可能。しかし、これをやると他の女のコの不満が溜まり、店を辞めるのも出てくる。いいことは何もない。

今は何をしているか知らないが、雑誌にもよく出ていた人気ヘルス嬢は寂しがりやで、身近な男とすぐにつき合ってしまう。このヘルスでも、客とつき合っていたし、その前に勤めていたキャバクラでは従業員とつき合っていた。

ところが、この従業員のことが邪魔になってきた。そこで彼女は、つき合っていることは内緒にしたまま、社長に「あの男がしつこく迫ってくる」とチクった。彼女の計算通り、男はクビになった。

「彼女とつき合っている」と言うと、いよいよ罰金などの制裁があるため、男としても黙ってクビになるしかなく、仮に、そう言ったところで、人気のある女のコは大事だから、店としては彼女をクビにしたりはしまい。

これは本人から聞いた話。女って恐いっす。

※写真は大宮の風俗街で撮ったもので、本文には一切関係ありません。以下同

 

 

恐い思い出

 

vivanon_sentenceさらに恐い話。現在は人気風俗店の店長をやっているAさんから聞いた話だ。Aさんがまだ下っ端の従業員だった頃、男好きのするタイプの女のコがいたそうな。

「僕は好きじゃなかったですけどね。ちょっと危なそうな女で。僕は遠ざけるようにしていたんですけど、そういう女が好きなのがいるんですよ」

いるいる。そういう女と、そういうのが好きな男。手首に傷跡がたくさんあって、手を出したら大変なことになりそうな女だ。私もこういうタイプは敬遠してしまうんだが、「自分が守ってやらなければ」と思う男は案外多いものだ。女の方もかまって欲しがっているのだから、かまわれたがりとかまいたがりがくっつくのは当然である。

「興味もなかったので、手首に傷があったかどうかまでは見なかったですけど、まさにそういうタイプです」

この店でも恋愛関係、セックス関係は御法度なのだが、この店のマネージャーは積極的に彼女に迫っていた(この場合のマネージャーは副店長みたいな役割)。しかし、端から見る限り、そのマネージャーは相手にされていなかったようであった。

「よせばいいのにと思っていたんですけど、部下が口を出すわけにもいかない」

下半身だけでなく、上下関係も厳しい世界だ。

 

 

寮で見たものは…

 

vivanon_sentenceある日、Aさんが店にいると、店長から「すぐ寮に来てくれ」との電話があった。Aさんは電話から聞こえてくる店長の声から、ただごとではないと察知して、寮に急行した。

女のコたちの寮は独立したワンルームなのだが、男子従業員用に3LDKの広いマンションを借りていて、ここで従業員が共同生活をしていた。よくある話である。

マネージャーはこの寮に住んでいた。店長は結婚していたのだが、自宅が離れていたので、しばしばこの寮に寝泊まりしていた。

店から徒歩数分のところにあるその寮にAさんは到着、ドアを開けて言葉を失った。

 

 

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