松沢呉一のビバノン・ライフ

オリコン上位曲のラブソング率—ビョークが主張する音楽業界のセクシズムは存在するのか? 7-(松沢呉一) -2,597文字-

西野カナvs.星野源—ビョークが主張する音楽業界のセクシズムは存在するのか? 6」の続きです。

 

 

 

オリコン上位曲のラブソング率を調べる

 

vivanon_sentence前回の4人のミュージシャンだけでは全体像がわかりにくいので、続いて、オリコンの上位50位に入っている曲の歌詞を同じ基準で調べてみました。1月23日付けCDシングル週間ランキングです。

上位100位を調べようと思ったのですが、51位以下は有料でした。下位に行くと歌詞が公開されていない率が高まって無駄骨が増えるでしょうから、ちょうどよかった。

50位のうち、作詞家や歌詞がオリコンのサイト内では調べられないのが17タイトルありました。他の歌詞サイトでも同じです。チャートに入っているのですから、必ずしも人気がないってことではなくて、新譜の場合、公開が間に合ってないのだろうと思われます。これは対象外としました。

残りの33タイトルは、歌詞も作詞家名もわかります。

歌っている人自身が書いた歌詞なのか否かまでをカウントしたのですが、アーティスト名がバンドになっていて、作詞家名が個人の場合、バンドメンバーなのか、そうじゃないのかを調べなければならず、今回はここでけっこう時間を食いました。

その際に、作詞家名をミョージシャンの名前とは違う名前にしていることがあるので、それも調べ、性別も調べましたが、1曲だけわからないものがありました。

31位の「微熱†ロマネスク†」って曲。作詞家が「LOVEおか」。これでは性別も推測できず、検索しても正体不明です。この曲はパチスロメーカーのキャラクターが歌っているという体になっている企画ものなので、これも対象外にしました。

33位のGoose house「傷だらけの等身大」は、作詞がGoose house。Goose houseは女4人、男3人の男女混成ユニットで、全員歌ってます。男女別に配分すると、小数点が出てきて面倒なので、これも外しました。

全編英語の曲も外しました。21位のHi-STANDARD「Vintage & New,Gift Shits」です。外したのは、解読が面倒だからですが、ほとんどの人は何を歌っているのかを吟味して聴いているわけではないでしょうから、カウントする意味がないし、カバー集なので、他とは異質ってことで。

残り30タイトルを今回の対象とします。

 

 

静かに見える瀬戸内海にも潮の荒い場所がある

 

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最近カラオケをしなくなっているので、曲をまったく知らないし、誰かもよく知らない人たちが多いのですが、ちょっと面白かったのは演歌でした。

この曲。

 

 

 

心に秘めた女の情念を海にかけています。「船折瀬戸」は、波穏やかな瀬戸内海の中で、船が折れるほどの潮流がある場所らしい。情景にできにくい心理を船折瀬戸に重ねて、イメージを広げる。

ラブソングでも、こういう虚構性の高いひねりは面白い。そんな大層なものでもないですが、社会科の勉強になりました。

この作詞家は「岸かいせい」というふざけた名前です。これでは性別がわからないので、調べたら、日本作詩家協会のサイトに出ていて、男でした。この曲で日本作詩家大賞最優秀新人賞を受賞しています。

歌詞を評価してナンバーワンを決める趣旨ではないので、話を進めます。

 

 

ラブソング率は7割台

 

vivanon_sentence30曲のうち、歌い手自身が詞を書いているのは8曲でした。アイドルや演歌が多いので、妥当なところでしょうけど、アイドルものでも自身が作詞作曲を担当しているケースがあります。7位の舞祭組(ぶさいく)「道しるべ」がそれ。曲を聴きましたが、うーん。

前回と同じ要領でラブソングか否かを確認し、これらの曲に○△×をつけました。

 

 

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