デマ検証チーム構想—BuzzFeedの姿勢を支持する 4-(松沢呉一) -2,735文字-
「リテラシーが機能しない環境を避ける—BuzzFeedの姿勢を支持する 3」の続きです。
きっかけは震災
このシリーズの1回目、2回目に書いたように、「メディアリテラシーを高めよう」という呼びかけをいくらやっても無駄。また、3回目に書いたように、「メディアリテラシーが機能しなくなる環境を避けよう」という呼びかけをいくらやっても無駄。
少しは効果があるかもしれないけれど、デマを抑制するようなものにはならない。そういった掛け声は十年以上前からなされていても効果がなかったことをもう認めた方がいい。つうか、周りの人たちの行動、あるいは自分自身の行動を見ればわかるはず。
何年も前に私は結論づけて。そう公言してました。デマ対策として個人に期待しても無駄だと。
リテラシーを身につけること自体には意義がありますし、長期にわたった時には効果があるかもしれないですから、今も「記事を読まずにシェアしたり、『いいね!』をつけるのはやめよう」「シェアする前に5分でいいから考えよう」とは言いますし、おかしなものをシェアしていたら注意もしますけど、今現在のデマ対策にならないことは現実を見れば歴然としています。
いくら言っても繰り返す人には個別の効果もないですしね。放置すべきではないと思いつつ、言うだけ無駄とサジを投げるしかない。
そこで、数年前、デマに対抗するため、検証をやるチームを作れないかと考えました。
東北大震災の年だったと思います。あの時に流れたデマはあまりにひどくて、それこそ関東大震災の朝鮮人虐殺を招いたデマと同様のデマが再現されてしまったことに愕然としました。
災害時はもっともリテラシーが機能しなくなるのは事実として、歴史から何も学べなかった人たちの群れを見て呆れ、怖くもなりました。なんとかせねば。
多くの人は学習ができない。リテラシーも身につかない。身についても機能しない。機能しないことの対策をとる知恵はない。その現実から始めるしかないのです。
検証に伴う困難
怪しい情報が流れてきて、その真偽を確認するために問い合わせをしたことが何度かありますが、何千人、何万人も見ているはずなのに、そこまでやるのはほんの一部です。おかしいと気づいた人もそこまではやらない。あとになって、「私もおかしいと思っていたんですよ」と言うのがボロボロ出てくるだけ。おかしいと思ったら、放置するな。
裏とりまでやる人がもっといれば早いうちに拡散を食い止められますが、現におらず、そこまでやるタイプの人たちも仕事があったり、学業があったり、寝ていたりするわけですから、毎回はできない。私もそうです。結果、初動が遅れます。
また、バラバラの個人が裏とりをするのは効率が悪い。複数の人が同じソースに当たったり、「どうせ誰かが調べているだろう」と皆が放置してしまったり。
動くのが遅れれば遅れるほど手間が増える。当たり前のことで、百人しか見てない段階で鎮火すれば、百人の誤解を解けばいい。百倍の人が見たあとでは、一万人の人の誤解を解かなければならない。これは困難です。半分の人に情報が届いても、残りはそのデマを拡散し続けることにもなるし、信じ続ける人も出てきてしまいます。
さらに面倒なことに、ひとたび間違った判断をした人は、今度は自分を守りたい欲望にとらわれますから、間違っていることを認めないという現象が起きます。
もし冷静な判断力が働いていれば、「これはおかしい」とスムーズに気づけたはずの人が、あるいは「こういうデマがあるよ」と最初から言われれば素直に受け入れたはずの人が、自分を守ろうとするために、説明をしても受け入れるまでに時間がかかったりするのがまた厄介です。
※下に出てくる米袋デマで叩かれたマルタカの商品。反原発派の中にもデマに飛びつくのは当然います。どこにでもいるってことです。
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