ヘラクレス太田から始まった2017年-アイドルって面白い 0(松沢呉一) -2,111文字-
新年早々の衝撃
時間が経ってしまいましたが、昨年の大晦日の深夜、正確には元旦の午前1時から、ロフトプラスワンで毎年好例の「下1グランプリ」の大晦日イベントがありました。
ちょっと遅刻気味だったので、慌ててロフトプラスワンに向かっていたら、歌舞伎町の暗がりで、グニュとイヤな感触のものを踏んでしまいまして、見たら車に轢かれて内臓を飛び散らせたネズミでした。
こんなこと、なかなかないですから、「お年玉をもらっちまったぜ。新年早々ついているな。今年はいい年になりそうだ」とロフトプラスワンへ。
ロフトプラスワンでは、眠気がすっ飛ぶ衝撃を受けました。アヤマンJAPANユースのメンバーで、ロフトプラスワンのバイトでもあるヘラクレス太田のステージに圧倒されました。「芸」という点では比較できないとしても、お下劣領域の破壊力は、八幡カオルに匹敵します。
筋骨隆々ってわけでもないのに、ヘラクレスという名前なのもワケがわからないし、その行動も予測不可能。乳房と股間は隠していますが、ほとんど全裸に近い格好で、自分の整形史をネタにするばかりか、そのうち胸当てがずれて乳首まで露出。そんなことは少しも気にせず、他にもいろんなもんを出してました。ロフトプラスワンは自分のバイト先ですよ。
ヘラクレス太田は世界とつながる
ヘラクレス太田は、ヘラクレスと名乗る意味があるかもしれない。誰もがなしえない苦難の道を選択しています。
ウクライナのフェミニストグループFEMENの活動やFREE THE NIPPLEの活動で知られるように、乳首の解放、乳首の平等を求める動きが世界的に活発になっています。男の乳首は人前で出せるのに、どうして女が乳首を出すと捕まるのか。どうしてFacebookで男の乳首は出していいのに、女の乳首は削除されるのか。もっともですね。
乳首を露出してよくなれば、お母さん方は授乳もしやすくなります。一昨年だったか、昼間、あまり人のいない交差点で信号待ちをしていたら、隣に子どもにおっぱいをあげているオシャレな格好をしたお母さんがいました。放置して泣き出されるとバッシングされる昨今ですから、スキあらばおっぱいを与えるとよい。
もちろん、これに反対する勢力もいます。キリスト教原理主義者を筆頭とした道徳主義者です。
キリスト教はそこまで強くないですが、日本のフェミニストにとって実践するのはあまりに難しい課題です。制度の中での利益獲得がフェミニズムだと思っているフェミニストたち、思ってなくても実際その範囲でしか動けないフェミニストたちは、そこからはみ出すことはできないんじゃなかろうか。
「女は子育ての機械であり、その大事な大事な器官は社会の所有物である。募金のために触らせるなんてとんでもない」と考えるフェミニストまでいる国ですからね。
そういった海外の動きとはなんの関係もなく、日本のフェミニズムともなんの関係もなく、自分がやりたいようにやることで、結果、日本の壁を颯爽と飛び越えて世界に連帯するヘラクレス太田に感動し、ステージで「今一番尊敬しているのはヘラクレス太田だ」と私は発言しました。
※図版は英ブライトンビーチでのFREE THE NIPPLEの行動を記録した動画から。国によっては、あるいは地域によっては逮捕されるため、乳首だけは隠しています。こうなると、ヘラクレス太田の格好と変わらん。プラカードを掲げているのも一緒。それをヘラクレスは一人でやっている分、もっと偉い。ヘラクレス太田はしばしば乳首を出していたし。
(残り 695文字/全文: 2183文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ