デマは金にならない。まして検証は金にならない—BuzzFeedの姿勢を支持する 5(最終回)-(松沢呉一) -2,820文字-
「デマ検証チーム構想—BuzzFeedの姿勢を支持する 4」の続きです。
デマの検証は手間も時間もかかる
デマをスムーズに鎮火し、拡大を防ぐためには、すぐさま対応する必要があります。前回書いたように、ひとたびデマに加担した人間は、今度は自分を守る欲望を発揮しやすいので、その前に手を打つ。
そこで、チームを作って、おかしな情報があったら、24時間体制で裏とりをやり、その結果を公開することで、いち早く「こんな記事にも関心のある私」をアピールできる情報から、「デマに飛びつくアホな私」をアピールすることになる情報に変質させる。
ネットでもムラ社会ができあがってますから、周りの人たちは「それはおかしい」という指摘をためらうことがあるので、第三者がそれをやる。その集団自体がその指摘を認めなければ孤立するだけ。
運良く、私を含めて暇こいているライターはいっぱいいますから、ここで職業柄、培ってきた調査能力、取材力を発揮すればいい。職業的習性として身についている「疑う」「調べる」「考える」という能力を最大限発揮するには、仕事として取り組めばいいのです。
しかし、問題はその対価をどこからどう得るかです。
BuzzFeedの「韓国デマサイトの目的は広告収入」にもあったように、デマは簡単に発生させられる。ひとつの記事に20分から30分しかからない。Twitterのデマなら1分もかからない。
対して、その検証は手間も時間もかかる。ものによっては数時間、時に数日かかります。問い合わせをしなければならないこともあるし、文書に目を通さなければならないこともある。場合によっては現地に行かなければならないこともある。これを無償でやり続けていたら餓死します。
一本当たりナンボの契約ライターを多数抱える方式を考えていて、ライターは意義を感じて、安くてもやるのはいるでしょう。時間のある時にやるライターを数多く揃えることでカバーすることは可能だとして、最低限、複数の編集者が食っていけるようにしなければならないし、経費もかかります。
金をどこから生み出すか
しかも、検証の記事は拡散されにくい。デマは10万人が見るのに対して、それを否定する記事は数分の一、場合によっては数十分の一しか読まれない。デマに飛びつく人は「そうあって欲しい」「そうであったら都合がいい」という欲望をもっているわけで、それを否定する情報は欲しくない。なおかつ、それデマであるとなれば、シェアした自分が恥をかくので、無視をして、訂正も削除もしない。
よって検証はPVを稼げない。当然、金は得にくい。
これをどう克服するか。その仕組みを考えるしかない。
それも考えていたのですが、私にはよくあるように、壮大なことを考えすぎて、金を生み出す仕組みは実現しそうにないことがわかり、この構想はあえなく潰えました。
正確には、検証チームを実現するために、金を動かす仕組みを考えていたのではなく、ある壮大な仕組みを考えつきまして、検証チームをここに組み込んだらどうかと考えてました。その本体がコケたのです。私が考えていたことを実現しようとすると、億単位の金がかかる上に、シミュレーションをしてみたら、うまくいかないことが発覚。
その後、「ビバノンライフ」をスタートして、これがうまくいったら、「タグマ!」を利用して、訂正情報を知りたい人たちが金を出すことで検証チームを作ることも考えたのですが、「ビバノンライフ」も購読者がなかなか増えずに四苦八苦しているものですから、それを実現するまでにはあと半世紀くらいかかりそう。
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