水曜日のカンパネラはアイドルか?—アイドルって面白い 1(松沢呉一) -3,051文字-
アイドルにつながるチャルガ
ヘラクレス太田を観て、「年を越すや否や、ネズミの死体を踏んだだけのことはある」と思ったのですが、今年は他にも私にとっては重要なことが起きています。
アイドルの虜になったことです。まさかの展開ですが、こうなる前史はいくつかありました。
まずはここ何年も聴いてきたチャルガです。
以下は私にとっての昨年のチャルガ・ベスト1。
ガレナ(声が低くハスキーな方。プレスラヴァに次ぐ人気のある歌手)とツベテリーナ・ヤネヴァ(肌も髪も声も色素が薄い方)が組んで、そこにアジス(冒頭に出演しています)が加わっています。
チャルガは単体の曲だけでなく、デュエットの曲が多数リリースされ、歌手の組み合わせを楽しみます。単体では面白味の少ないヴォーカルが組み合わせ次第で活きる。そこにプロデューサーの手腕が発揮されます。
「曲を自分で作って歌っているのが偉い」幻想
今までにも何度か書いてきているように、チャルガはブルガリアのポップスでありつつ、一般のポップスとはまた別のジャンルです。ロックやヒップホップを取り入れつつも、リズム、音階、楽器、こぶしなど、譲らないところは譲らない。
あえて言うと日本の演歌の位置に近くて、多くの場合、作詞家、作曲家は別にいて、歌手は歌のみを担当しているところも演歌と同じ。ほとんどハモらず、声が重なる場合はユニゾンであることも同じ。まだしも演歌のデュエットの方がハモるかも。
今に至るまで、私の中には「曲を自分で作って歌っているのが偉い」みたいな幻想があるのですが、その発想のつまらなさをチャルガから学びました。歌がうまくて、キャラが立っていて、見栄えのいいのが歌手になるのであって、曲が作れるかどうかは別問題です。役者は演技がうまくて、キャラが立っていて、見栄えのいいのがなるのであって、脚本が書けるかどうかは別問題なのと同じ。「曲を自分で作って歌っているのが偉い」幻想とは別のところで楽しむ音楽です。
その分、見た目が大事。見た目も声も好きな男の歌手はガリンです。
ゲイ的に私はガリンが好きです。
水曜日のカンパネラはアイドル・テイスト
続いて昨年のこと。水曜日のカンパネラにハマりまして、よくメルマガにそのことを書いてました。
新潮社の担当編集者の岑さんはアイドル・オタクなのですが、水曜日のカンパネラのファンでもあって、地方のライブにまで足を運んでます。「アイドルから水曜日のカンパネラまでフォローしているとは幅が広いなあ」と思ったのですが、岑さんによると、「水曜日のカンパネラはアイドルに通じるものがあって、ファンにもアイドルオタクがいる」とのこと。
そーかあ、水曜日のカンパネラという名称になっているからわかりにくく、私もまったく気づいていなかったのですが、アイドルの作られ方に近いのです。
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