松沢呉一のビバノン・ライフ

セックスに向き合わない社会の中で—『夫のちんぽが入らない』における「ちんぽ」の考察 6-(松沢呉一) -2,328文字-

共感できない夫婦—『夫のちんぽが入らない』における「ちんぽ」の考察 5」の続きです。

 

 

セックスに対する真剣さがない

 

vivanon_sentence前回書いたように、「挿入できない」となれば、いくつかの対策がとれるはずです。

そういった知恵のある人が周りにいないのだとしても、ネットがある時代なのですから、「知恵袋」にでも書き込めばいい。ネットで知り合った人とセックスをするんだったら、その時にも相談できたはずです。

よその男とはセックスしているのですから、「夫のちんぽが入らない」というより、「夫のちんぽ(だけ)は入らない」になっちまってます。なんでよその男とセックスだけして終わるかな。

そんなことをしながら、本屋で女性誌やエロ本を見て解決法を探すって、「ふざけてんのか」って感じです。せめて図書館に行って医学書を読むべきでしょう。一般向けの性のQ&Aの本にも出ているものはあるでしょうに。

セックスに対する熱意が足りない。生きることに真剣さが足りない。血まみれになるくらいだったら、なんとかしろよとイライラします。

これは夫も同じです。いかに教育者としてすぐれていようとも、いかに生徒のことに熱心であろうとも、夫婦のことを解決できないで「狂乳パラダイス」に走っていてはいかんでしょう。図書館に行け。一緒に病院に行け。

※練馬区の書店にて。どう売られているのかが気になって、つい店頭を覗いてしまいます。私の場合、自分の本に対しても、このくらい熱心に売り方をチェックすべきかもしれない。

 

 

騙し合う夫婦

 

vivanon_sentence試しに国会図書館の公開データを検索してみたら、挿入不全の例が多数ひっかかります。そりゃ、昔からあるでしょう。

男子の場合はだいたい陰萎、今で言うEDが筆頭に出てきます。女子の場合は膣の閉鎖や狭窄ですが、骨盤の奇形も挙げられており、私が会った処女のヘルス嬢はこれでしょう。

サイズの不一致という例は見つかりませんでしたが、相対的な問題ですから、この場合は狭窄と同じ扱いになり、一世紀前でも今と同じくまずは拡張、それでもダメなら手術をすることになったと思われます。

こんな古いものを調べなくても図書館に行け、病院に行け。二十年間も何をしていたんだ、この夫婦。

ここから不幸が連鎖していった可能性があるだけに、「この夫婦はいったい何をしているのかな」と思わないではいられませんでした。エロの相談も回答もためらいのない人たちばかりの私の周りでは、男女ともにそう感じるのが多いのではなかろうか。

その結果、この夫婦は、互いに隠し事を作ってしまっています。「この人は信頼できる。セックスがなくてもいい」と思い込もうとしても、その信頼できる相手を互いに騙している。

 

 

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