松沢呉一のビバノン・ライフ

承認欲求と女性向けエロ表現—田中美津インタビューの疑問点 6-(松沢呉一) -3,171文字-

レディコミに見る女の欲望—田中美津インタビューの疑問点 5」の続きです。

 

 

 

恋愛やセックスに入り込む承認欲求

 

vivanon_sentence一昨日出した「彼氏がゲイだとつきあっていた時間が無駄になる?」はまだまだ続きがあって、「承認欲求が恋愛観やセックス観にどう影響するのか」という話になっていきます。でも、確証のない勘の積み重ねだし、だらだら長いので、以降は出すのをやめました(その後、こちらに出しました)。

簡単にこちらでまとめておきます。

「どの程度いるのか」はわからないながら、女子の中には、恋愛やセックスが承認欲求と強く結びついているのがいるらしい。恋愛やセックスにおいては、相手が自分を好きなことが重要。自分の承認欲求を満たしてくれる相手が好きな相手。

対して男はその傾向が薄い。自分がつきあいたいか、セックスしたいかどうかが重要。

承認欲求は仕事など他のところで満たされる人、そもそも承認欲求が薄い人など、いろいろでしょうが、男の多くは、恋愛やセックスに承認欲求があまり混入してこない。混入してくるとしても、「彼女がレズビアンだとつきあっていた時間が無駄になる」といった出方をしない。だから、この感覚が理解できにくいと言えそうです。

とくに私はこれが極端に薄い。相手にとって私が一番でありたいなんて全然思わない。むしろ、一番は面倒が多いので、そこはどなたかに譲りたい。彼氏がいようと、結婚してようと問題なし。会っている瞬間楽しければそれでよし。何事も私は二番手、三番手でいい。主役じゃなくて脇役でいい。大部屋の役者でいいのです。

だから、「彼氏がゲイだとつきあっていた時間が無駄になる」という発想がまったく理解できない。この領域は私には鬼門なのであります。

もちろん、これは数の多寡、程度の違いであって、男子の中にも理解できるのはいるでしょう。また、私の周りではそうだったように、私同様に理解できない女子も多数います。

 

 

男子も口にするようになった「私と仕事とどっちが大事?」

 

vivanon_sentenceほんの一週間ほど前にも、「好きな人がいるから、その結果としてつきあうという状態になる。でも、女子の中には好きな相手がいるわけでもないのに、“彼氏が欲しい”と言っているのがいて、全然理解できない」と語る女子がいました。これとまったく同じことを私も若い頃に言ってました。いないならいないでいいじゃないかと。

しかし、他者に認められていない状態は不安ですから、「誰か私を認めて」と渇望する状態になるのがいるようです。

その彼女は他のことについても考え方は私に近い。だから、同性でも理解できないのです。女子でも「女子的考え方」が理解できないのはいて、男でも「彼女が欲しい」と言っているのはいますが、それより「セックスしたい」と言っているのが多いかと。

私と仕事とどっちが大事?」という定番のフレーズがあります。これは自己承認欲求のわかりやすい「試し行動」でしょう。

これまでは女子特有のセリフだったわけですが、これを口にする男が増えているとの証言があって、以前、聞きまくったことがあります。「仕事に決まっているでしょ」と答えるような女子たちは、多かれ少なかれ、これを言われた経験がありますし、自身、口にしたことがあるという男子もいました。

つまり、男も女もさして変わらず、今までは仕事が忙しく、仕事を優先する男子が多かっただけのことで、女子がそういう生き方を選択すると、男子もこれを言い出すに過ぎないとも言えそうです。

 

 

next_vivanon

(残り 1991文字/全文: 3464文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ