松沢呉一のビバノン・ライフ

AV業界改革推進有識者委員会の提言—やっとこれで議論が始まりそう-(松沢呉一) -4,917文字-

籠池泰典とろくでなし子をつなぐ線

 

vivanon_sentence

以下は、3月23日、籠池泰典・森友学園理事長(当時)の証人喚問のあと、外国特派員協会での記者会見の様子です(中継のSS)。

 

 

 

続いてこれ、BuzzFeedのろくでなし子高裁判決の記事より判決のあとの記者会見の様子。

 

最近、この弁護士の名前と顔を見ない日はないってくらいに八面六臂の活躍。

 

 

「AV業界改革推進有識者委員会」発足

 

vivanon_sentenceそして、昨日はこれ。

 

 

 

AV業界改革推進有識者委員会」の説明会(記者会見)が新宿のホテルで開かれ、私も行ってきました。

 

 

AV業界改革推進有識者委員会の提言8項目

 

vivanon_sentenceこの委員会は、本年4月1日に発足したものです。

AV業界改革推進有識者委員会は、IPPAAVANと連携しつつ、業界に提言をしていく第三者機関であり、放送におけるBPOの役割をAVにおいて果たすと説明されていました。

8項目の提言は以下。

 

 

 

AV業界改革推進有識者委員会

委員会からの提言

私たち、AV業界改革推進有識者委員会(以下、本委員会)は、2016年3月に発表された特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ(以下、HRN)の報告書、それに端を発した適正AV業界(以下、業界)に対するさまざまなご指摘および本年3月の内閣府男女共同参画会議からの報告書を受け、これを適正AV業界に課せられた健全化維持に向けた刷新の機会と捉え、刷新策の履行を促すために発足した第三者機関としての改革推進有識者委員会として、適正AV業界の各団体および各団体の加盟者に向け、以下のことを提言する。

1.この業界に属する各団体、各団体の加盟社、グループおよび個人(以下、団体等)は、適正AV制作の人材募集から販売までの各工程において、人権、特に出演者等の自己決定権には特段の配慮をし、あらゆる業務を進めなければならない。

2.団体等は、映像文化の一翼を担うものの誇りと矜持を持ち、優れた映像創作を目標に、業界の刷新および日常の業務に取り組まなければならない。

3.団体等は、これまでの業界の旧態依然とした慣行について、抜本からの見直しを図り、根源的な改革を断行しなければならない。

4.本委員会が制定する「適正AV業界の倫理及び手続に関する基本規則」に基づき、団体等は真摯に業界の健全化を目指さなければならない。

5.団体等は、各種法令を守ることはもちろんのこと、法規制より高邁な倫理観をもって業務に取り組まなければならない。

6.団体等は、制作に関わる各工程において、健康およびメンタルを含めた安全面に特別の留意をして、万全な安全対策を施さなければならない。

7.団体等は、それぞれが「コンプライアンスプログラム」を策定する。団体等と本委員会は連携および分担をして、その実施と点検、見直しを不断に行わなければならない。

8.団体等は、その制作する作品が成人指定商品であることを十分に認識し、見たくない人に配慮した徹底したゾーニングの策を講じなければならない。また、LGBTをはじめとした多様な性の在り方に対して、必要な情報を提供するなど、社会的な責任を果たさなければならない。

平成29年4月1日

代表委員 志田 陽子
委員 河合幹雄
委員 山口貴士
委員 歌門彩

 

 

※左から、河合幹雄委員(桐蔭横浜大学教授/副学長/法社会学)、志田陽子代表委員(武蔵野美術大学教授/法学)、山口貴士委員(リンク総合法律事務所/弁護士・カリフォルニア州弁護士)、歌門彩(ヤエス第一法律事務所/弁護士)

 

やっと定義された「AV」

 

vivanon_sentenceこの提言のあと、22条に及ぶ「業界が守るべき規則」が続きます。

ざっと読んだ印象、ざっと聴いた印象でも、今までのAVに関する議論を進展させる内容になっています。あるいはやっと議論ができる環境が出てきたと感じます。

特筆しておくべきは「AV」「AV業界」の範囲を明示した点です。

「適正AV」という用語を使用していて、以下のように定義されています。

 

・適正AV

成人向け映像(アダルトビデオ)の総称としては「AV」が一般には認知されているが、ここで敷衍する適正AVとは、IPPAに加盟しているメーカーが制作し、正規の審査団体の厳格な審査を経て認証され製品化された映像のみをいう。無審査映像、海外から配信される無修正映像、著作権侵害の海賊盤および児童ポルノは、適正AVの範疇には入らない。国内の法規制に則り、確かな契約を取り交わして作られ、著作権の所在が明確であり、指定の審査団体において審査され、業界のルールに従い且つゾーニングされて販売またはレンタルされ、映像の出演、制作および販売・レンタルの責任の所在が明確なものだけを合法な適正AVと称する。なお、将来的には適正AV=AVとして社会認知されることを目指す。

 

あー、すっきりした。この一点だけでも議論がクリアになります。

 

「どこの話か」もわからないまま進んできた取り組み

 

vivanon_sentenceこの団体の位置づけと目的からして、範囲を限定するのは当然であり、さもないと何を提言しても空振りになります。範囲を限定することによって、この範囲内での指導や罰則も可能になりましょう(「罰則」は団体からの除名等、業界内ルールとしての罰則です)。

 

next_vivanon

(残り 2919文字/全文: 5170文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ