なぜパクリを避けた方がいいのか—社会運動における権利侵害を考える 2-(松沢呉一) -2,943文字-
「イラストの盗用・映画の無断上映の実例—社会運動における権利侵害を考える 1」の続きです。
場合によっては逮捕されかねないことを自らやることの愚
映画に対する敬意や愛情がない人たち、つまりは、自分らの主義主張のために映画を利用したいだけの人たちは権利に無頓着になりやすい。
しかし、本当は主義主張がある人たちの方が権利侵害をやってはいけない。その先があるからです。その先にある目標を忘れて、目先の動員や収支だけで頭がいっぱいになっているから他者の権利に無頓着になる。
一昨年、ゴジラをチラシに使用して(プリントしてないデザインの段階だったかな)、東宝からクレームがついた団体がありましたよね。東宝がいちいちそんなことをチェックしているとも思えないので、誰かがチクったんじゃなかろうか。内心、「この程度はほっといてもいい」と東宝が思っていたとしても、チクられたら放置はできない。
それ自体が話題になったので、結果、動員が増えてよかったと「炎上動員」を喜んだかもしれないけれど、その分、信用を失っていることを考えた方がいいと思います。
無料では無理だとしても、正規に許諾を求めていれば適切な使用料で使えたかもしれないわけですが、今後そうしたくても難しくなったのではなかろうか。
たとえばある団体が政権を揺るがすくらいの力を持ったとしましょうよ。それを潰したい勢力は、著作権者に連絡をして、「弁護士を用意するし、訴訟費用はこっちで負担するので、訴えましょう」と働きかけるかもね。そういうリスクがあり得ることくらい想定した方がいい。
告訴されれば逮捕され、名前までが報じられることだってあり得ます。社会運動とは無関係ですが、映画の無断上映で逮捕されている例もいくつかあります。こういうことをネットで検索をしてから上映をやるべし。
逮捕されて「不当逮捕だ」と言ったところで、同情はされないでしょう。ただただ「バカだなあ」と思われて、信用を失うだけ。
社会運動こそ、自分らを守るために、また、その先の目的のために、世間一般よりも、他者の権利については敏感であるべきだろうと考えます。ずっと私はこれを言い続けているのですが、通じないことが多いので、虚しいのよね。
注意をしても受け入れない人々
以下の話もたしか一昨年のことです。
あるグループが、Twitterのアイコンに、企業のロゴをアレンジしたマークを使用したことに対して、「やめた方がいい」と進言した人物がいます。私はそれを見てないですし、結果どうしたのかも知らないですが、相手は全然理解をしなかったらしい。
私はSNSのアイコンでも、著作権が生きている写真や絵を無断で使ったするような真似は決してやらないけれど、SNSのアイコンで留まるのであればパクリでもまあいいかとは思いますよ。そこまではさすがにパクられた方も文句をつけてこないでしょうし、ロゴの盗用は著作権や肖像権じゃなくて商標権、意匠権の侵害ですから、商品化しない限りは問題になりにくい。
一般にはそうなのですが、昨今の社会運動では、活動費捻出のために、よくグッズを作るじゃないですか。バッチだったり、ステッカーだったり、Tシャツだったり、タオルだったり。企業のロゴは多くの場合、登録していましょうから、登録された号で販売物を作ると商標権、意匠権の侵害になって、Twitterのアイコンとはフェイズが違ってきます。
中学生、高校生の気分でアイコンを決定するんだったら、いっちょまえにグッズなんて作るんじゃねえよって話。大人になってからやれ。
Twitterでそのロゴが認知されたら、他の場面でも使いたいでしょう。自分たちを象徴するマークですから、それをグッズにするのも自然な流れです。結果、アウトになる。
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