松沢呉一のビバノン・ライフ

「娘」は個人、「女子」は集団に向く言葉—「女子」の用法 2-[ビバノン循環湯 225] (松沢呉一) -3,246文字-

「娘」と「女子」の関係—「女子」の用法 1」の続きです。

 

 

 

「娘」は結婚適齢期にある

 

vivanon_sentence鬼も十八番茶も出花」は「娘十八番茶も出花」というヴァージョンもありますが、ここでは十八歳が娘のピーク。いつでも嫁に行ける世代ってことです。

ダークダックスが「山男」で、「娘さんよく聞けよ」と説教している時の相手も結婚適齢期にあります。山男に惚れて結婚すると若後家になるぞと。登山での死亡率が高いことを警告した内容です。改めて考えてみると、すごい歌だな。

「小娘」となると、まだ結婚適齢期には達していない世代。十代半ば以下ってところでしょう。転じて、若いことをとらえて軽視する言葉。「若ければ若いほどいい」わけではなくて、結婚するにもそれ相応の年齢というのがあるってことです。

今そのまま通じるわけではないとしても、もともとは親の管理下にあるのが娘。よって結婚すると、娘感が失せますが、結婚しているかどうかわからなくても、これから結婚するのだろうと思われる年齢を指す言葉です。

今は結婚で区切る発想が薄れていて、薄れているから、よく知らない存在に「娘さん」なんて言葉を使うことも減っているのではないかとも想像します。

私は古くさいニュアンスが好きなので、わざと「娘さん」と言うことがありますが、今は「娘」と書いて「こ」と読ませることが増えていて、ロックであろうと歌謡曲であろうと、「あの娘(こ)に〜」という歌詞が多い。「男の娘」もそうです。

ここ二十年、三十年という単位で「むすめ」とは言わなくなってきていますが、「娘」という漢字を使うことで、年齢を絞り込むってことです。子どもを意味する「子」ではなく、十代後半から二十代にかけてだぞと。

※図版上はタイガースのベスト盤です。

 

 

「娘」と「青年」

 

vivanon_sentence今も使う「むすめ」は親子の関係に基づいた「娘」であり、「若い女」を意味する「娘」を使うとしたら、狭く使う場合は二十歳前後まで。結婚していないと区切りがないので、三十代に入っていても独身であれば「娘」イメージが残りますが、範囲を広くとるとしても、通常は二十代までが「娘」かと思います。

特定個人に対して使用する場合は男のみを指し、集団であれば男女ともに指すこともある「青年」という言葉の範囲ときれいに重なりはしないまでも、範囲は近そうです。

高年齢化が進む団体の「青年部」は中年ばっかりという話も聞きます。「青年団」もまた未婚が条件になっていることがあって、四十代の未婚が所属し続けていることがあったりしますが、一般に「青年」は十代後半から二十代でしょう。「いいとも青年隊」の年齢。また古いな。

青年海外協力隊は男女の別のない「青年」であり、二十代から三十代。一般の用法よりちょっと上が広いかも。

 

 

「女子」と「娘」は指し示す範囲が違う

 

vivanon_sentence」と「女子」は似ていながらも使われ方が違います。

 

 

 

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