性別で判断する人たちの限界—「女子」の用法 11-[ビバノン循環湯 235] (松沢呉一) -3,093文字-
「男の職場に女性が進出—「女子」の用法 10」の続きです。
「男」と「女性」の典型例
前回、各新聞で「男・女」「男性・女性」で、どう言葉を使っているのかを確認しました。
以下は朝日新聞の記事で、地の文章ではなくて、発言者の中でアンバランスが見られます。
女性参政権記念の日に国会前で集会
◆おじさんだけで法律作るな
女性が参政権を得て初めて国政選挙で票を投じてから71年となる10日、政治分野の男女平等を求める集会が国会前で開かれた。議会を男女均等にし、多様性のある政治を目指す「パリテ・キャンペーン実行委員会」が主催。約70人が参加した。
実行委代表で上智大法学部の三浦まり教授は、1946年4月の衆院選で女性議員が39人誕生したものの、今も女性の衆院議員は44人にとどまっていることを挙げ、「71年かかって5人増えただけ。今の倍、さらにその倍と女性議員を増やして、男女均等の国会にしたい」と話した。
参加者は、安全保障関連法に反対する活動を展開し、昨年夏に解散した学生団体「SEALDs(シールズ)」の元メンバーで日本女子大大学院の是恒香琳(これつね・かりん)さん(25)らに合わせ、「おじさんだらけの議会はいらない」「政治も仕事も50(フィフティー):50(フィフティー)」「おじさんだけで法律つくるな」などとコールした後、女性の政治参画の重要性を訴えながら国会周辺を行進した。
続いて、港区立男女平等参画センターでシンポジウム「世界がパリテ(男女均等)になったなら」が開かれ、約150人が参加した。衆院議員の野田聖子(自民)、山尾志桜里(民進)、池内沙織(共産)の各氏がスピーチ。野田氏は「政治は『男の仕事』じゃない。様々な個性が寄り集まって国民の声を代弁する仕事。そのためにも女性にどんどん出てきてほしいし、自分が出ないなら出る女性の良きパートナーとなってほしい」と訴えた。
(三島あずさ)
婦人参政権から女性参政権へ
まず先に簡単な方を片付けておきますが、この記事で気になるのは、「女性参政権」という言葉です。今現在の言葉として使用するのはいいとしても、歴史を踏まえた表現ですから、ここは「婦人参政権」と言うべきところではないでしょうか。
婦選運動を担った人々から、積極的に戦争協力する人々が出てきてしまった負の側面もあるわけですし、結局のところ、これを実現したのは敗戦であり、GHQであったにしても、婦人参政権を求めたことは正しく、その運動をなしがしろにしているように思います。
私は「婦人」という言葉、正確には狭義の「婦人」が指し示す層に、いい印象はないのですけど(「山の手婦人」に代表される「婦人」です)、それでも「婦人参政権」には肯定的思いがあって、あっさり捨てていいのかなあ。
それもこれも、よくよく言葉を調べることもなく、「婦人」という言葉は差別的だと言い出したアホな人たちのせいですが(たぶん)、公的に「女性参政権」という用語が使用され、内閣府も「女性参政権行使70年」という言葉を使用していますから、この流れはどうしようもないのでしょう。
その結果、いい意味合いを見いだしてこの言葉を今も使用し続けている伊勢丹、三越などの歴史ある百貨店や公的に使用され続けている婦人科、産婦人科という言葉までがなにやら古くさくてだっさい印象となってきています。
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