「女子力」は「娘力」—「女子」の用法 14-[ビバノン循環湯 238] (松沢呉一) -2,745文字-
「「女子」の使いやすさ・使いにくさ—「女子」の用法 13」の続きです。
特性を持つグルーブを指し示すことに向いている「女子」
「男子」「女子」を中高年の個人に使用する例は古くからあります。ただし、多くの場合はその前に言葉がつきます。「変成男子」「変成女子」のように、年齢を問わず、ある状態、ある特性を広く指し示す言葉を個人に使う。「彼は変成男子だ」といった具合。
なお、「変成男子」はもともと仏教用語で、読みは「へんじょうなんし」。これが近代になってトランスジェンダーの意味で使用されている例があって、これの対で「変成女子」が出てきて、この場合の読みは「へんせいだんし」「へんせいじょし」だと思います。
いったん広くくくったグループの名称を個人に落とし込む場合、言葉はそのままになる。今でも「未婚・既婚」について調査するとしたら、「未婚女子」「既婚男子」「未婚男子」「既婚男子」でグルーピングをし、個別例を取り上げる時にもこの言葉を使う。「松沢は五十代の未婚男子である」となりましょう。
あるいは前回出した町内のイベントの例でも同じ。男女の席を「男子席」「女子席」とに分けます。「男子はこちら」「女子はこちら」と案内する。おじいちゃん、おばあちゃんの個人に対しても、そう言っていい。
これらはあくまで若い世代を含めての広い世代を分類するという過程があってのことであり、「松沢は五十代の未婚男子である」と言う場合は、「十代、二十代の未婚者」等の存在がその背景にあることが前提になっています。その背景なしに、「松沢は五十代の未婚男子である」とは言いにくいし、通常言わない。
したがって、「こじらせ女子」のような言葉も、ただの「こじらせた女子」ではなく、広くある特性を持つ人々をグルーピングするもののひとつとして言葉が認識されてからなら、年齢を問わず個人に使用しやすくなりますが、そういった前置、了解なしで「女子」は使いにくい。
ある集団の中で、男を草食、肉食と分類したあとで、中高年の個別例に対しても「草食男子」と言うことはあるとして、その前提抜きで、中高年を「あの人は草食男子だよね」とはあまり言わない。中高年が「私は草食男子である」と自称することはギャグ以外ではないでしょう。
「草食男子」という言葉はもともと「若い世代はセックスをガツガツやりたがるのが当たり前」という思い込みを踏まえた言葉なので、精力減退やEDになるのが当然と思われている中高年は最初っから対象になりにくいという事情があり、適切な例ではないですが。
女子力・男子力
たとえば「女子力」「男子力」という言葉。検索してみるとわかりますが、多くの場合、「モテる魅力」という意味合いで使われています。
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