ちんすこうとちんかす—恥ずかしい言葉-[ビバノン循環湯 263] (松沢呉一) -2,741文字-
丸川珠代が公式の場で感情的にオナニーをしてきたことを告白したことに感銘を受けました。
丸川氏は、都、国、大会組織委、競技会場がある都以外の自治体による協議会を31日に開き、費用分担を正式決定すると発表。「長い間、感情的にしこってきた部分もある。ようやくここまできたなという思いだ。感情的にならずに、しっかり乗り越えて協力していきたい」と述べ、自治体が小池氏への不満を募らせていたことを再び持ち出した。
ストレスが溜まって怒りを込めてオナニーをする日々だったのでしょう。
エロワードに敏感な私ですから、「シコる」の歴史についても調査済みです。「シコる」は「シコシコ」が動詞化したもので、それまでにも使用されていた地域はあったようですが、全国に広がったのは吉田聡による暴走族漫画「湘南爆走族」と見られます。1982年から「少年キング」で連載開始。この頃、小学生、中学生、高校生だった世代以降に広く「シコる」は使用されるようになります。よって、私は馴染みが薄い言葉ですが、丸川珠代は「シコる世代」です。
こういう場合は突っ込みを入れてあげた方が本人も楽です。という趣旨の原稿を今から二十年ほど前に書いているので、「丸川珠代、感情的にシコッてきた発言」を記念して、循環しておきます。「URECCO」の連載に書いたものです。
原文には実名が書かれていたのですが、長らくつきあいがなくて、今どこでどうしているのかわからんので、著名人以外はイニシャルにしておきました。オランダつながりでもあるので、前回に続いてメトロポリタン美術館の所蔵品からアムステルダムの絵を拾ってみました。
ちんすこうとちんかす
何の番組だったか覚えていないが、テレビで、沖縄の局の女性アナウンサーがこんな話を紹介していた。
「沖縄に“ちんすこう”というお菓子があるんです」
ゴキブリの卵みたいな楕円形をした素朴なクッキーで、最もよく知られる沖縄の銘菓である。
「本土から来た人がこれを間違えて、“帰りにチンカスを買っていかなきゃ”って言ってました」
こりゃ恥ずかしいが、「ちんすこう」って名前自体、最初から「チンカス」「チンコ吸う」と間違えられてもしょうがなく、こんな名前のお菓子自体恥ずかしい気がしないではない。そう言われてみると、チンコみたいな形だと思えなくもない。そうでもないか。
また、わざわざ「チンカス」なんてテレビで言ったアナウンサーも十分恥ずかしくないか。それでも、この時は会場がそれなりには沸いたからいい。もし会場がシーンとしてしまったら、このアナウンサーの恥ずかしさは、自分自身が間違えて「チンカス」と言ったのと同じくらいに高まったに違いない。
ホンジャマカ恵の「どくじた」
このように、言葉を言い間違えた際、回りが笑い飛ばしてくれるならいいが、誰も指摘できずに、空気がぎこちなくなる時が一番辛い。本人も周りも辛い。
これまたテレビで、ホンジャマカの恵が司会者の発言にこう突っ込んだ。
「最近、ドクジタですね」
もちろん毒舌のことだが、回りが一瞬凍りつき、指摘して笑い飛ばすタイミングを誰もが逸してしまった。
私も最初恵は冗談でこれを言ったのかとも思ったが、その後、言った本人も空気を察知して「オレは間違ったこと何か言ったかな」といった様子で落ち着きをなくしていたところからすると、本当に間違えたらしい。見ているこっちまでがいたたまれなくなるような瞬間であった。
ああいう場合はしっかり誰かが指摘して、笑ってやった方が本人も気が楽だし、わざと言ったのだとしたら、誰かが突っ込まないと「わざとですよ」と言い訳をするタイミングもなくなる。
オランダに恐怖の大王が降って来る
「SPA!」で一緒に仕事をしているカメラマンのT君は、よく言い間違え、私は心から笑ってやるようにしている。
どこかの雑誌が今度オランダの取材をするとの話をしていた時のことだ。
「いいよね、飾り窓はあるし、マリファナOKだし」
私がそう言ったら、T君も同意した。
「いいですよね、ノストラダムスは」
おいおい、誰が1999年7の月に恐怖の大王が降ってくる話をした。それを言うなら、アムステルダム。世界が滅びるのを「いいですよね」なんて言っているのはおまえだけだ。
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