松沢呉一のビバノン・ライフ

ある女子大生の告白—知られざる「接待クラブ」 1-[ビバノン循環湯 266] (松沢呉一)-2,950文字-

ホントに安倍政権にはむかつくので、ここまで黙ってきた私も、官邸にとって不都合な事実をいよいよ暴露しかねないじゃないですか。そうすると、官邸の機関紙「読売新聞」に「松沢は出会い系バー通い」と報じられるかもしれないので先手を打っておくと、たしかに私は出会い系バーに一時出入りしてましたよ。それがどうかしたか。

十年以上前のこと、東京で浄化作戦が始まった頃、違法ヘルスに見切りをつけた店長が出会い系バーを歌舞伎町で始めまして、取材に協力してもらったり、暇な時に「遊びに来てよ」というのでダベリに行ってました。しかし、全然流行ってなくて、数ヶ月で潰れました。そこで取材した原稿を循環しようと思ったのですが、行方不明です。

他にもその辺のことを書いたものがなんかあったはずと探したら、「接待クラブ」に出入りしていた女子大生(当時)に取材した原稿が出てきました。2001年に「アクションカメラ」の連載に書いたものです。築地に短期間実在したGHQ将校向けの接待クラブ「大安クラブ」については以前まとめていますが、それとは無関係。「接待クラブ」はどこも取材NGで、料金が高過ぎて潜入取材もできないため、あまり知られてないですが、たぶん今もどっかしらで営業しているのではなかろうか。「接待クラブ」という名称は、ここに出てきた女子大生に聞いただけで、他の呼称になっているかもしれない。

「接待クラブ」は、男女ともに客として来ている「出会い系バー」とは業態が違うし、客の財力も違うのですが、共通している点があります。セックスに言い訳がくっついてきて、男女ともに「これは風俗ではない」「恋愛の延長」ということになっている人たちが多くて、私とはソリが合わないので、すぐに潰れた歌舞伎町の出会い系バーでも遊んだことはありません。以降、その手のところには行ったことがありませんし、「接待クラブ」は高過ぎて、手が届きません。官邸機関紙「読売新聞」はせめて正しく報じるように。

 

 

 

知られざる「接待クラブ」

 

vivanon_sentence二年前に知り合った女子大生がいる。ここでは美紀という名前にしておく。

久々に美紀から連絡があった。この不景気な時代に就職が内定したというので、お祝いにメシを食い、カラオケに行った。

ビールを飲んでほろ酔いになった彼女はこんなことを言い出した。

「松沢さんは口が軽いんだっけ?」

「チンコは柔らかいけど、口は硬いよ」

「おっさん。あのさ、私さ、この一年くらい接待クラブに出入りしていたんだよ」

「なんだよ、それ」

「風俗ライターが、そんなことも知らないのはかーなりマズいんじゃない?」

私はカラオケをやめて、しばらく彼女の話に聞き入った。

「ふーん、面白いな。この話って、誰にも言わないけど、原稿にしてもいい?」

「どこの誰かわからないようにしてくれれば書いてもいいよ。もう私は二度と行かないから」

私はノートを取り出してメモを始めた。

Henri de Toulouse-Lautrec「Divan Japonais」

 

 

高級連れ出しスナック

 

vivanon_sentenceでは、彼女に聞いた「接待クラブ」の全貌をここにご紹介しよう。

彼女によると、風俗求人誌に堂々と求人が出ているそうだ。私は風俗求人誌を時々チェックしているのだが、水商売ジャンルはチェックが甘い。

「ちょうどその頃、バイトをしてなくて、なんかないかなと思って求人誌を見ていたら、接待クラブというのがあって、これってなんだろうと思って面接に行ったんだよ。あとでお客さんに聞いたら、赤坂や歌舞伎町にもあるらしいけど、私が行った店は六本木交差点からちょっと離れたところの飲み屋ビルの中にあって、なんということもない普通のクラブ。ボックスシートがあって、カウンターがあって。でも、営業時間が七時から二時間だけなんだよ。時給二千円はいいんだけど、一日で四千円にしかならない。話が違うじゃんと思った」

—一日二時間しか営業しない飲み屋なんてあるのか。しかも、七時からって早過ぎだろ。

「それにはちゃんと事情があるんだよ。その二時間で客は気に入った子を店外に連れ出して、あとの料金はお客さんから直接もらうんだよ」

交渉次第でどこまでもってわけだ。わかりやすく言えば、「連れ出し売春スナック」の高級版である。

「男の人の入会金は三十万円で、紹介がないと会員になれない。飲み代は高くないけど、連れ出し料は五万円もするんだよ」

—えっ、連れ出すだけで五万円は高いな。

「この五万円は全額店のもので、それから別の店に飲みに行ったり、食事に行ったりして、最後にホテルに行くのがパターン」

 

 

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