松沢呉一のビバノン・ライフ

前川喜平・前文部科学次官を疑う根拠が今のところはない—私は出会い系バーに出入りしてました 3(最終回)-(松沢呉一)-2,927文字-

出会い系バーに来ている客層—私は出会い系バーに出入りしてました 2」の続きです。

 

 

 

なぜリスクのある場を選ぶのか

 

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そんなに面白い話が出てきそうになかったので、出会い系バーでは、謝礼を払ってまでは話を聞いてません。

店長が「ちょっと話をしてあげて」と頼んでくれて、それぞれほんの数分取材として話しただけだったはず。それ以上話すのであれば、外に連れ出して、他の人に聞かれない場所で聞くしかなく、であるなら謝礼を出すのは当然です。

「何のメリットもなく、どこの誰かもわからん相手になんで本当のことを教える必要があるのか」ってことでもあるので、短い時間でどこまで本当のことを話してくれたかわからない。

以下の出会い系バーでの会話はその程度のものであることをお断りします。

出会い系ってリスクが高いじゃないですか。この時点でもすでになにかしら事件が起きていたんじゃなかったかな。起きてなかったとしても、そういうリスクがあることは容易に想像できます。

入会金三十万円の会員制である「接待クラブ」と違って、フラリと来る客がいます。店の人や他の客に見られはしますけど、街娼なみにリスキーです。防犯カメラで出入りしている人たちを撮っていたりすれば別ですけど、そんなことをしたら人が集まらなくなるし、それを証拠に「読売糞新聞」に書かれます。

店に来ている女の客たちに「なんでヘルスで働かないの?」と聞くと、「風俗では働きたくない」と必ずと言っていいくらいに答えます。そんな言い方はしないですが、「私は風俗で働くような女ではありません」「風俗までは堕ちたくない」みたいなニュアンスを感じるのです。

そんな臭いプライドのためにリスキーな方法を選択する意味がよくわからない。

※出会い系バーがあったビルの斜め前にある新宿区役所前の裸婦像

 

 

性風俗店を危険と喧伝する人々が危険なところに女たちを追い込む

 

vivanon_sentence「昼間は仕事があるので、安定して出勤ができない」「仕事が終わったあとだと時間がないので働ける店がない」というのならわかるのですが、そう答えたのはいなかったと思います。

浄化作戦が始まって、風俗嬢たちが風営法違反の幇助で逮捕される例が出てきたため、違法店で働くと前科がつくリスクがありますが、許可店で働けばいい。また、出会い系でも、女の方から露骨に誘いかけた場合は「勧誘」にひっかかることもあり得なくはない。女の方から積極的に誘いかけることはないと思いますけど。

たぶん性風俗店で働こうとして、そういった比較をしたことさえないのでしょう。

あるいはかつてのパンパンたちのように、店に管理されたくない、自由にやりたいというのも理解できますが、そういうわけでもない。

ことによると、兼松左知子のような人たちがばらまく「性風俗店は危険。ひとたび足を踏み入れると、用心棒にレイプされ、シャブを打たれ、ヒモとして金を吸い上げていく」なんて、今の時代には考えにくい話を信じてしまっていて、その結果、よりリスクのある出会い系に来ているのかもしれない。

 

 

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